『ONE PIECE』の最強剣士・鷹の目のミホーク。ゾロを圧倒したが、いったいどれほど強いのか?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
最終章をひた走る『ONE PIECE』。
数えきれないほど多くの強者キャラが登場してきたが、初期に登場し、いまも圧倒的な強さを誇る人物といえば、「鷹の目の男」ジュラキュール・ミホークしかいない。
その初登場は、第50話(コミックス6巻)だから、連載開始から1年後くらいだ。
当時から「世界最強の剣士」と謳われていたが、四半世紀以上の連載を経た現在もそれは変わらず、懸賞金の額はバギーを上回る35億9千万ベリー!
ミホークがどれほど強いのか、ここでは初登場時のエピソードを再確認してみたい。
◆古風な口調が魅力的!
物語の序盤、ミホークを探し求めていたのは、世界一の剣豪を目指すロロノア・ゾロだった。
彼は、海上レストラン・バラティエの近海で、海賊船50隻を沈めたというミホークに出会う。
ゾロが「勝負しようぜ」と持ちかけると、ミホークは「哀れなり 弱き者よ」と冷めた目で答えた。
そして「このおれに刃をつき立てる勇気は おのれの心力か…はたまた無知なるゆえか」と、古めかしい口調で続ける。
ミホークのこの話し方は、とても印象深かった。
彼は、ゾロと勝負をしながらも
「何を背負う 強さの果てに何を望む 弱き者よ……」
「井の中の吠えし蛙よ 世の広さを知るがいい」
「このまま心臓を貫かれたいか なぜ退かん」
「覚えておく 久しく見ぬ“強き者”よ」
「生き急ぐな……!! 若き力よ…!!!」
「己を知り 世界を知り!! 強くなれロロノア!!!」
「おれは 先 幾年月でも この最強の座にて 貴様を待つ!!」
と、常に重々しい口調で語り続けた。
いかにも「世界最強の剣士」という雰囲気を身にまとっていた。
そして、いま示したセリフの変化にも表れているように、ミホークは剣を交えるうちにゾロを認めていく。
「弱き者」が「強き者」に変わり、最後はもう激励しまくりだ。
表情は変わらないのに、言葉だけがどんどん変わっていく……!
とはいえ、戦いの勝敗は明らかだった。
ゾロは手も足も出ず、全身に傷を受け、あえて生かしてもらった、という状態。
完敗である。
ゾロは三刀流の使い手で、日々鍛錬も怠らない。
それがなす術もなく敗れるとは、ミホークはどれほど強いのだろうか?
◆ミホークはどれほど強い?
ゾロとの勝負で、ミホークは初っ端から格の違いを見せつけた。
ゾロが三刀流で構えるのに対し、ミホークは刃渡り20cmほどのナイフを出して「あいにくこれ以下の刃物は持ちあわせていないのだ」。
もっと小さなナイフでも勝てる、という意味である。
ゾロは「人をバカにすんのも たいがいにしろ…!!」と突進して「鬼斬り」を出す!
ところがミホークは、ゾロの3本の刀の交点を、ナイフの先端でガキッと止めた!
するともう、ゾロはまったく動けない……!
その後もゾロは果敢に斬りつけるが、ミホークはそのすべてを簡単に受け止め、ゾロを弾き飛ばし、やがてナイフで胸を刺した。
あとは一方的な展開となる。
この勝負、最初の一瞬で決まったといえるだろう。
――ミホークは、迫りくる3本の刀をナイフ1本で受け止めた。
これはもう、モノスゴイ行為である。
ゾロの舎弟のヨサクとジョニーは、「鬼斬り」について「出せば100% 敵が吹き飛ぶ大技なのに!!」と驚いていたが、確かにそういうワザである。
『ONE PIECE』の人々はみんな体が大きいので、ここでは「鬼斬りは、体重120kgの相手を10m吹っ飛ばすワザ」と考えて計算してみよう。
地球上で物体を10m飛ばすには、最低でも秒速9.9m=時速35.7kmの速度を与える必要がある。
ゾロの刀の重さが1本1kgだとすれば、三刀流の3本の合計重量は、相手の体重の40分1だ。
するとゾロの刀には、相手を飛ばす速度の41倍が必要になる。
そのスピードとは、秒速406m=マッハ1.2!
それほどの攻撃を、ミホークはナイフ1本で受け止めたのだ。
おそらく、自ら突進したりせず、ナイフを構えたまま静かに受け止めたのだろう。
画面を見ると、ナイフは微動だにしなかったようにも感じられるが、それだと無限大の力が発揮されたことになってしまうから、ここでは「鬼斬りを受けたときに、ナイフはミホークから見て1cmほど手前に動いて止まった」と仮定する。
そういう条件で計算してみると、ミホークが出した力は、なんと2500tだ。
とはいえ、少々わかりづらいと思うので、別の喩えをすると、ミホークは「時速80kmで走る1tの乗用車」をナイフでピタッと止めたのと同じ……!
恐るべきヒトである。
ただし、このときのゾロもすごい。
時速80kmで走っている車が一瞬で止められたら、乗っている人は前方につんのめり、フロントガラスを割って飛び出すだろう。
いきなり刀がガキッと受け止められて静止したゾロにも、かなりの衝撃があったはずで、腕に力を込めなければ、体が前方に吹っ飛んでいたに違いない。
飛ばなかったということは、ゾロも2500tの力を出したと思われる。
ミホークが認めたのも当然だ。
ミホークが現在も世界一の剣士であることは確かだろう。
しかし、ゾロもこのときの敗北以来、想像を絶する研鑽を積み、実力を高めてきた。
2人が再び相まみえることがあるのだろうか?
ぜひとも再戦してほしい!
『ONE PIECE』最終章の大きな楽しみの一つである。