Yahoo!ニュース

サガン鳥栖が面白い!鎌田、林、福井に続く、鳥栖から世界に飛躍するヤングタレント5

河治良幸スポーツジャーナリスト

今年最も熱いJリーグのクラブのどこかと聞かれたら、真っ先に浮かぶのがサガン鳥栖だ。

過去数年は大口スポンサーの撤退になど伴い、債務超過の影響で、多くの主力が入れ替わってきた。しかし、今シーズンに向けては川井健太監督が2年目を迎えて、岩崎悠人など主力として期待できる戦力に、日本一に輝いたアカデミーからの昇格4選手を含む気鋭のタレントが加わった。

これまでも鳥栖で成長を遂げたタレントは多く、これまでカタールW杯にも出場した鎌田大地(フランクフルト)を筆頭に、林大地(シント=トロイデン)、アカデミー育ちの二田理央(ザンクト・ペルテン)、福井太智(バイエルン・ミュンヘン)といった選手が欧州を舞台に活躍している。

「チームで勝つことはもちろん、日の丸を付ける選手が育つことを前提に指導している」と語る川井監督のもと、その流れは加速していくかもしれない。筆者は沖縄キャンプでサガン鳥栖を取材してきたが、今シーズンのJリーグでの躍進はもちろん、ここから欧州の強豪クラブやA代表に名乗りをあげる選手が出てくる期待は非常に高い。

その中から選りすぐりのヤングタレント5人を紹介する。

横山歩夢(19) ファンタジーも兼ね備えたスピードスター

松本山雅から加入した19歳のFWだが、日本全体を見回しても指折りのタレントであることは間違いない。当時の名波浩監督(日本代表コーチに就任)にゆくゆく日本を背負うアタッカーとして前線で起用されて、J3で11得点。今年のU−20W杯を目指す”03ジャパン”のエース候補としても期待される。

「個人では二桁を目標にして、しっかりリーグ戦に絡んで勝利に貢献したい」と横山。鳥栖では左ウイングが主戦場になりそうだが、持ち前のスピードは鳥栖でも圧倒的で、中盤の堀米勇輝や反対サイドで一緒に出た長沼洋一も「歩夢は速すぎる(笑)」と舌を巻くほど。しかも、縦に仕掛けるだけでなく周りの味方を使ったワンツーやスルーパスも出せる。かなり衝撃を与える存在になりそうだ。

坂本稀吏也(19) 横山と対人磨くハイスケールなレフトバック

キャンプ中に筆者が最も驚かされた一人だ。J2のモンテディオ山形から期限付き移籍という形で加入したが、昨シーズンのリーグ戦出場は1試合。元々どこでもやれるという触れ込みで、言い換えればスペシャルを発揮しきれていなかった部分もあるかもしれない。川井健太監督は4バックと3バックを自在に操る鳥栖のシステムで、柏レイソルに移籍したジエゴのやっていたレフトバックのポジションに適性を見出しているようだ。

本人はまだ守備のデュエルに課題があるというが、スケールが大きく、中央からの攻め上がりも迫力がある。塩谷司の左版のような魅力があるが、左利きながら右側に回っても十分にやれそうだ。チーム練習後には横山と1対1を繰り返しており、守備面に磨きがかかれば大ブレイクもありそうだ。

竹内諒太郎(18) エースを封じる和製グバルディオル

サガン鳥栖のハイプレスをさらに押し上げる存在になりそうだ。狙った獲物は決して逃さないというマーキングが最大の強みで、チーム全体が前に行く分も「自分が後ろにいれば大丈夫という存在になりたい」と語る。左利きでビルドアップにも非凡な能力を見せるが、それも対人の強さが前提にあってのものだ。

25日に行われた千葉とのトレイニングマッチにはU−20代表の冨樫剛一監督も来ていたが、チャレンジングなハイラインの背後で相手FWを封じる竹内のパフォーマンスは格好のアピールになったかもしれない。カタールW杯では同じ左利きセンターバックのグバルディオルの勇姿が目に焼きついたようだ。「鳥栖で活躍して世界に出る」とモットーに、厳しい競争に挑んでいく。

樺山諒乃介(20) 縦横に切り裂く緩急自在のドリブラー

”カバちゃん”の愛称で親しまれる明るいキャラクターだが、プレーは鋭敏だ。緩急自在のドリブルで相手陣内を切り裂いて、ラストパスたシュートに持ち込む。横浜F・マリノスではルーキーイヤーで開幕スタメン起用されたが、そこから徐々に出場機会を失う中で、モンテディオ山形に移籍。伸び伸びと武器を発揮していたが、復帰したマリノスで主力の壁を敗れず、二度目の山形移籍を経験した。

プロの選手としてやるべきタスクは本人も自覚するが、やはりスペシャリティを発揮しないことには世界に出ていけない。そうしたジレンマの中で、鳥栖という新たな環境を見出した。左ウイングが主戦場であるため、横山とはポジションを争う構図にもなるが「ライバルという意識はない」と樺山。二人で違った武器を出し合いながら、一緒に世界の舞台へと上り詰めたい気持ちが強いようだ。

アカデミー育ちの坂井駿也も「なんでも話せる存在」として慕うなど、早くも鳥栖に溶け込んでいる樺山は「マリノスには厳しさを、山形には自分の良さを学ばせてもらいました」と語る。大目標は世界で活躍する選手だが、パリ五輪というターゲットもある。まずは鳥栖で成長した姿を古巣のサポーターに示し、飛躍の転機にできるか。

坂井駿也(18) 戦術眼に優れるボールハンター

鳥栖のアカデミー組でも特にキャプテンシーが高い選手で、松岡大紀(清水エスパルス)の系譜を引き継ぐ存在。ボールを奪うことにこだわりが強く、奪ってからの正確なパスでもチームに流れを呼び込む。スペシャリティを発揮するにはもう少しフィジカル面の強化が必要かもしれない。しかし、本人は読みの早さを売りにしており、今の時点でも十分にカバーしていけると自負しているようだ。

サイドバックにも適応できるので、マルチな活躍も期待できるが、鳥栖のサッカーは非常に流動的なので、どこで出ても多くの局面に絡みながら直接的にも間接的にも、良い効果をもたらしそう。目標は遠藤航で、3年半後の北中米W杯も「十分に届くと思う」と自信をのぞかせている。

写真・筆者撮影

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事