新型コロナ“戦時下”のパリから ー外出制限7週目のレポートー
外出制限が始まってから毎週お届けしているこのレポート。タイトルの“戦時下”は、3月の演説でマクロン大統領が連呼した言葉で、当初は現実味があったが、週を追うごとに風化してきた感がある。
新型コロナは戦う相手ではなく、共存していかなければならないという認識がもはや世界通念になってきた。感染をゼロにすることはできないが、制限解除という現状からの出口を意識しなくてはならない。フランスではそれが5月11日。
外出制限7週目は、その具体策を示す首相演説から始まった。
4月28日(火曜)外出制限43日目
【この日までに確認された累計感染者数126835(直近24時間での増加数1065)/累計死者数23660(病院での直近24時間での死者数328)】
数字はフランス公衆衛生局の発表によるもの。
以降、【感○(○)/死○(○)】で表す。
15時から国会で、エドゥワール・フィリップ首相演説。外出制限解除が予定されている5月11日からの方針を具体的に提示し、議員の投票によって可決された。(賛成368/反対100/棄権103)
それによると、5月11日からは次のような段階に入る。
○学校/保育園、小学校は再開可能。中学校は18日の週から再開可能(県による)。1教室に最大15人まで。中学生以上と教師はマスク着用。高校の再開については、5月終わりに判断。大学は9月の新年度まで再開しない見込み。
○商業施設の再開。ただしカフェ、レストラン、4万m2以上のショッピングセンターは例外で、それらは少なくとも5月末まで閉鎖。マルシェは自治体の判断による。
○外出制限の解除。ただし、自宅から100km圏内まで。それ以上は、特別な事情(家族、仕事)のある場合のみに限られ、申請書、証明書の提示が必要。
○公共交通機関/パリのメトロやバスなどは70%が運行予定。TGVも含め、中長距離列車については運行本数減を継続し、事前予約制。タクシーも含め、交通機関利用時はマスク着用を義務化。社会的距離を保つような措置が取られる予定。
○仕事/テレワーク継続の推奨。それが不可能な場合は、時差出勤、ローテーションなどの措置をとること。
○公園などは再開される予定だが、10人以上のグループでの利用は不可。
○図書館や地方の小さな美術館などは再開可能。大型の美術館、博物館、劇場、映画館、見本市会場などは閉鎖継続。
○宗教施設は再開できるが、宗教行事は行わないこと。葬儀の場合、列席者は20人まで。墓地も再開。
○団体競技や接触を伴うスポーツは禁止継続。海岸も閉鎖継続。
ただし、新しい感染者の数と医療設備が飽和状態かどうかという基準から、県ごとに「緑」と「赤」に色分けされ、5月11日前の時点で「赤」となった県では、中学校、公園などの閉鎖継続予定。
4月29日(水曜)外出制限44日目
【感128442(1607)/死24087(251)】
「川崎病」と思われる症状の子供が病院に運ばれるようになったというニュース。フランスではパリ、アミアンなどで症例が報告されているが、イタリア、イギリスにも同様の例がある。
医療従事者の防護服の値段が10倍になっているというニュース。2019年には1枚0.4ユーロだったものが、 2020年3月には4ユーロ。中国から船でなく飛行機で運ぶせいもある。フランス国内の縫製所で新しく製作が始まったが、同じようなものを作ると1枚7〜8ユーロになるとか。
5月11日以降、メトロではなく自転車を使う人が増えると予測して、自転車専用レーンを広げる措置が進行中。自転車、特に電動アシスト付き自転車の売り上げが好調というニュースもこの週の後半で聞かれた。
パリのシャルル・ド・ゴール空港では窓口にアクリル板を設置したり、体温測定カメラをつけたりという整備が進行しているというニュース。この夏にエールフランスは通常の30%の運行を予定しているとか。
4月30日(木曜)外出制限45日目
【感129581(1139)/死24376(207)】
県ごとの「赤」と「緑」が発表になった。「赤」でも「緑」でもない「黄色」の色分けもあったが、最終的には2色に色分けされる予定で、毎日更新されてゆく。
SNCF(フランス国鉄)のプレジデントがFrance2の20時のニュースに出演。5月11日以降は通常の50〜60%を運行させる予定であること、マスクは各自の責任で持参して付けてもらいたいなど、インタビューに回答する形で発言した。
5月1日(金曜)外出制限46日目
【感130185(604)/死24594(139)】
メーデー。第二次世界大戦以降毎年恒例だった大規模な行進が、今年は行われなかった。
5月1日はまたスズランの花を贈り合う日。この日は花屋さんだけでなく、誰でもスズランを街頭売ることが許されていているが、今年はそれが禁止されていた。例外的に店を開く花屋さんもあったが、市場に出回った量は少なく、欲しくても手に入れられない人が多かった。スズランの栽培家では、例年7000人の季節労働者を募って出荷するところ、今年は1500人だったとか。
労働者を讃える日の象徴として、フランス最高齢、99歳で現役の医師、クリスチャン・シュネイさんが大統領官邸に招かれた。
今後市場に出回る不織布のマスクは、販売価格0.95ユーロ(約115円)を上限にすると政府の発表。布マスクの値段の制限はない。
トゥールーズのエンジニアの学校が開発したドアノブを肘で開けられる装置がテレビで紹介されていた。学校のそばの病院ですでに役立っている。
5月2日(土曜)外出制限47日目
【感130979(794)/死24760(120)】
フランスに入国する人(フランス人でも外国人でも)は例外なく自己隔離。そのうち陽性反応が出た人は最大30日間、医師の監督のもとで隔離という方針が示されたが、後日、ヨーロッパからの入国については例外とするなど、施行までに揺れがある。
海外県グワダループから本土への飛行機(飛行時間8時間)が満席で、感染防止対策が取られていないのではという利用者の動画が流れ、問題視された。
この日からスペインでは、公園、海岸線が制限解除に。朝はスポーツをする人、その次に高齢者、午後に家族連れという具合に、時間帯によって利用を制限しているとか。フランスの海岸線は5月11日の制限解除以降も閉鎖となっているが、例えばブルターニュなどの「緑」の県は海岸線の開放を要求している。
パリから100km以内にあるジット(民泊施設)では、首相演説以降、予約の電話がひっきりなし。制限解除になったらすぐにという利用者が多いというニュース。
『ル・フィガロ』紙には、星付きシェフのテイクアウトの紹介。例えばアラン・デュカスのDucasse chez moi。インスタグラムかFacebook からメニューをインストールし、前菜、メイン、デザートなど好みで組み合わせてオーダー。7つある傘下のレストランの定番料理などから選べる仕組みになっている。また予約の取りにくい人気店「セプティーム」などもネットから注文するテイクアウトシステムSeptime a la maisonを始めた。
『ル・モンド』紙には、自家製布マスクの型紙と使いかたが掲載されていた。
5月3日(日曜)外出制限48日目
【感131287(308)/死24895(101)】
フランス全体で6000軒の映画館があり、年間2億の入館者数を数えているが、再開の目処は全く立っていない。外出制限期間中にフランス人の46%がインターネットの映画ダウンロードシステムに加入しているとのニュース。映画だけでなくテレビの連続ドラマなどの撮影もいつ再開できるかわからない状態。
5月4日(月曜)外出制限49日目
【感131863(576)/死25201(245)】
スーパーマーケットでマスクの販売開始。早々に売れ切れる店多し。
フランスでの最初の新型コロナ感染者は、正式に発表されている1月終わりではなく、ひと月早い12月だった可能性があるというニュース。首都圏セーヌ・サン・ドニの病院の医師が、過去に肺炎で蘇生治療を受けた患者のPCR検査を再度調べたところ、そのうちの1人が新型コロナ陽性という結果。同様の調査を他の病院でも進めている。それらの結果によっては、フランスでも早い段階から感染が始まっていた可能性がある。
(※上記項目の記載、公開後、日本時間5月6日2時に修正。感染者は亡くなってはおらず、現在回復している)
イタリアで制限解除。ただし、ミラノの商業施設はまだ再開しないところも多く、渋滞もないという報道。メトロではマスク着用はもちろん、4席に1人の割合で座るシステム。
ドイツの学校再開。まずは中学、高校から。これはフランスが保育園、小学校、つまり年少から再開するのと逆の考え。美術館、動物園も再開。
日本では緊急事態宣言を5月末まで延長。
以上が、パリの一生活者として筆者が接した報道の抜粋だ。
さて、毎日20時に恒例となった医療従事者への拍手は現在でも続いている。ただ、今週は雨がちで肌寒い天気が続いたせいか、我が家の界隈では初めの頃に比べるとやや寂しい感じが否めない。もちろん、この拍手をしなくてもよくなる状況になるのが一番好ましいことではあるけれど…。
今週のレポートは、閑散としたサンジェルマデプレ界隈の動画で締めくくることにする。