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驚きの発表が続いたノルウェー王室、現地ではツッコミ相次ぐ

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
カップルは、ベレット氏にも自由に発言する権利があるとコメント(写真:ロイター/アフロ)

婚約者デュレク・ベレット氏を巡っての騒動を落ち着かせるために、マッタ・ルイーセ王女は公務から退くと発表した。

国王と王妃は記者会見を開き、「娘だから」ルイーセ王女の称号はそのままにしたいと説明した。

電撃的な知らせはそこでは終わらず、次はルイーセ王女とベレット氏が共にコメントを出す。王女のインスタグラム公式アカウントには動画が掲載され、二人は心情を明かしている。

ベレット氏は珍しくスーツを着用しており、国民に向かって丁寧な態度でこの機会だけは望もうとしたたようだ。

「ビジネスウーマン」と「王女」としての役割により線引きをするとして、7点を強調した

  1. 王女は公務から退く
  2. カップルは同日発表されたように、王女の肩書を商業的な仕事とは混合しない
  3. 王室メンバーである家族との話し合いは穏便に進んだ
  4. 伝統通りに、結婚してもベレット氏は称号を与えられず、ノルウェー王室を代表しない。だが家族の行事やスポーツ行事には参加することもある
  5. ベレット氏は常に王室と王女をサポートしたいと思っている
  6. 他の人と同様に、ベレット氏には自由に発言する権利がある
  7. 二人とも医学は信じているが、代替療法は医学を補充するものである

婚約者の言葉

ベレット氏は王女の隣で次のように述べた。

私は常に婚約者であるルイーセをサポートしたいと思っており、彼女には幸せであってほしい。私がしたことで彼女や両親に迷惑をかけたとしたら、意図的であったことは一度もない。王女の家族とは話し合い、王室の役割をより深く理解し、尊重しています。

私の言動がノルウェーで物議を醸したことは知っています。君主制に問題を引き起こしているという人もいました。私はそのつもりは一度もなかったことを、ここではっきりと伝えておきたい。王室の役割をサポートするために私は自分の役割を果たします

同時に、私も自分自身には正直でありたい。私にも自主性を保ち、自分には正直であり、思いを発言する権利があります。

医学には敬意を払っていることも強調したく、医学によって救われたこともありました。ヘルスケア制度で働く人々にも敬意を払っています。しかしながら、この惑星にあるすべてのリソースを私たちは使う必要があり、代替療法は医療システムの代用ではなく、補充として成り立ちます。

引用個所 デュレク・ベレットの発言

@princessmarthalouise

現地の反応は?

ノルウェーのメディアは、天使学校を運営するなど、自由奔放なルイーセ王女に対しては以前から批判的だった。

今回の発表にはさまざまな評価がでている。

ポイントとしてニュースの見出しとなったのは

  • 王女の称号は維持する
  • 王女は公務から退く
  • 王女は王室を代表しない

そして、国王の発言で浮き彫りとなったのが、

ベレット氏が君主制やノルウェー王室の役割をやはり理解しておらず、自由に行動しても、王女や王室に迷惑をかけることはないと思い込んでいたこと。

王女は公務から退くと発表したが、詳しくは「現時点で公務を退く」という発表のされ方だった。そのため、「いずれ公務にカムバックするのでは」という指摘が各メディアで相次いでいる。

公務から退くのは「賢い選択」だが、そもそも王女は公務をほぼしていない状態でもあった。

「王室を代表しない」と王室が主張しても、人々はルイーセ王女とノルウェー王室をつなげて考えてしまう。王女の称号を持ち続ける限りは「王室を代表しない」には無理がある、というのも各方面から出ている突っ込みだ。

「高齢者もいる王室メンバーの未来を考えると、ルイーセ王女や娘3人は将来的に重要な役割を担う可能性もある。王女はいずれ国王や女王となる家族を愛しているから、家族のためにも王室には必死に良い貢献をしたいと思っているだろう。王女の称号をルイーセ王女から奪わないことは賢い選択かもしれない」(王室の専門家のコメント・アフテンポステン紙

「コロナ・メダルの売人が、ノルウェー王室で居場所を見つけようとするのは大変な作業である。シャーマンでいようとするのは結構だが、王室のバルコニーでシャーマンであろうとするのはよろしくない」(アフテンポステン紙のコメンテーター)

「実際のところ、進展はわずかなものだ。ここ数年でも王女はわずかな公務しかしてこなかった。王女である限り、王室を反映している」(歴史家・ノルウェー公共局NRK

公共局NRKは看板番組である夕方のニュース番組で、国王夫妻の記者会見とカップルのインスタグラム動画を編集して放送。

ベレット氏が「王女の家族との話し合いで、ノルウェー王室の役割をより深く理解した」と話す動画の直後に、

国王の「あの米国人は、君主制が何かをわかっていない」と笑ってコメントする部分を放送するなど、

すでに両者の理解度に距離があるようにみえる報道をした。

代替療法としてスピリチュアルビジネスの正当性を主張

王女自身は理学療法の勉強をした過去もあり、馬の愛好家でもある。

動画や王室プレスリリースでは、代替療法として針治療、ホースセラピー、ヨガ、水晶、メディテーション、自然医学、耳を傾ける会話を挙げている。

だが、ベレット氏の「エネルギーを最適化する」というメダル販売や両氏のスピリチュアル事業を正当化するために、他の療法を持ち出し、現実主義の強いノルウェーの人々を説得しようとするには無理があるように筆者は感じる。

カップルが提唱するのはスピリチュアルであり、これらを共に医療の補完となると主張するのは「ナイーブだ」というもある。

「王室がもっと早く、ベレット氏と真剣に話し合いをするべきだった」、「公務を退かないといけなかった王女は可哀そうだ」など、意見はさまざまだ。

王室が望むように、事態は落ち着くか?

この日は驚きの声明がノルウェー王室から続いた日となった。

今まで何度も現地でニュースとなってきたルイーセ王女だが、この日は記録に残る日となるだろう。

とはいえ、ルイーセ王女の言動を見てきたノルウェー国民の中に、これで事態が落ち着くと考える人はあまりいないだろう。

なぜなら、マッタ・ルイーセだから。

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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