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阪神タイガース・ファームに勝利した日本海リーグ選抜! ドラフトに向けて猛アピール!

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
日本海リーグ選抜のメンバーと首脳陣(写真提供:石川ミリオンスターズ)

■阪神タイガース・ファームとの選抜試合

 日本海リーグ、今季初めての選抜メンバーによるNPB戦は、阪神タイガース・ファームの本拠地である阪神鳴尾浜球場で開催された。

 選抜試合とは、石川ミリオンスターズ富山GRNサンダーバーズの2チームから、ドラフトに向けて推したい選手を選出し、そのメンバーでチームを結成して戦う。そしてそれを、NPB球団のスカウト陣に見てもらうのだ。つまり、人生を懸けた“オーディション”の場ということだ。

 大型バスに揺られて鳴尾浜に乗り込んできた彼らは普段は敵同士だが、この日ばかりは手を組んでともに勝ちを目指す。またその一方で、スカウトにアピールするために個人のパフォーマンスを精いっぱい披露する。

 初めて袖を通す“日本海リーグカラー”のユニフォームに、選抜用の背番号を着けた。ポジションも普段とは違う位置に就くこともあり、交代しながらアピールした。

阪神タイガース戦のメンバー(写真提供:日本海リーグ)
阪神タイガース戦のメンバー(写真提供:日本海リーグ)

■ランニングスコアとバッテリー

日本海:100 001 011=4 H13

阪神 :100 000 000=1 H5

日本海:黒野(1)、楽(2)、北浦(1)、村井(1)、道﨑(1)、瀧川(1)、日渡(1)、渡邊(1)―森本、東田、岩室

阪神 :椎葉(4)、伊藤稜(2)、松原(1)、森木(1)、ベタンセス(1)―中川、藤田

スターティングオーダー
スターティングオーダー

■得点経過

《表》

 初回、いきなり目を奪ったのは3番に入った三好辰哉(富山)だ。2死から右翼越えのソロ弾で先制した。三好はこのあとも三塁打、シングルと記録し、惜しくもサイクルは達成できなかったが、印象に残る3安打で十二分に魅せた。

 六回は三好をサードに置いて、4番の大誠(石川)がライトへの犠牲フライできっちり得点。

 八回は三好、大誠の連続安打から暴投で1点を挙げ、九回は2死から今釘勝(富山)、佐野大陽(富山)の連打で一三塁とし、川﨑俊哲(石川)の右翼線を破るタイムリー二塁打でダメ押しの4点目を刻んだ。

 吉田龍生(石川)も3安打で安定した打撃力を見せた。

《裏》

 先発の黒野颯太(石川)は立ち上がり、ヒットと盗塁でリズムが掴めなかったのか、連続四球で満塁とすると内野ゴロで1点を失った。

 その後を(石川)が2回、北浦遼那(石川)、村井拓海(石川)、道﨑亮太(富山)、瀧川優祐(富山)、日渡柊太(富山)、渡邊蒼(富山)が1回ずつを無失点で終えた。

先発の黒野颯太(石川)
先発の黒野颯太(石川)

■選抜チームの監督・石川ミリオンスターズの岡﨑太一監督のコメント

 「ウチは今年のNPBとの交流戦3試合は、全然いいところがなく負けてしまったんですけど、富山さんはオリックスさんやタイガースに勝っているので、なんかウチの選手もそれに引っ張ってもらって、のびのびとプレーしたような感じはありましたね。

鳴尾浜でもいつものように打撃投手をする岡﨑太一監督
鳴尾浜でもいつものように打撃投手をする岡﨑太一監督

 その中で三好選手の1打席目、ファーストストライクをしっかりとらえてホームランを打った。こういうNPBとやる機会も少ない中で、おそらく対戦したことのない椎葉)のまっすぐをとらえるって、やっぱりすごいことだと思います。

 富山さんの投手陣はほぼ完璧だったし、ウチも黒野以外のピッチャーはそれなりに今の自分の力を出せたんじゃないかなと思います。黒野については、そんなトントン拍子にうまくいくわけでもないですし、いろんなこと経験しながら、失敗しながらでやっていけばいいと思うんで。

 でも、待ってはくれないですから、時間は。やっぱり毎日の過ごし方っていうのはすごく大事になってくる。1日の時間の使い方とか、コンディショニングとかトレーニングとか、そういうことも含めて、まだまだ意識が低いんじゃないでしょうか。

(右から)岡﨑太一監督、吉岡雄二監督(選抜チームではコーチ)、片田敬太郎コーチ
(右から)岡﨑太一監督、吉岡雄二監督(選抜チームではコーチ)、片田敬太郎コーチ

 初めてのNPBとの選抜試合でしたが、富山さんにもスカウトに見てほしい選手もいるわけで、そこは吉岡雄二)監督と相談しながらやりました。

 やっぱり2チームでずっと戦っていて、彼らのいい面もすごく知っているし、彼らにも上の世界でプレーしてほしいっていう思いもありますから、もうそこはミリオンがどうとか富山がどうとかじゃなくて、本当に分け隔てなく活躍してくれたら嬉しいですね」。

試合後、タイガースの和田豊ファーム監督と談笑する岡﨑太一監督(右)
試合後、タイガースの和田豊ファーム監督と談笑する岡﨑太一監督(右)

■おもな選手のコメント

 試合後、選手たちはシャワーを浴びたり片づけをしたりで、慌ただしくバスに乗り込んだ。時間の関係でコメントが聞けなかった選手もいるが、おもな選手のコメントを紹介する。

【三好辰哉】*先制本塁打を含む3安打1打点1得点

 「(対NPB戦)4戦目で一番いいアピールできたかなと思います。

 ホームランはまっすぐです。カウントが2ボールだったので、まっすぐが来るだろうなと思って、それを1球でとらえられたのがすごくよかったです。三塁打も自分のスイングをした結果、あの方向(左中間)に飛んでいきました。

 (あと二塁打で)サイクルは気づかなかったけど、ベンチで『次打ったらサイクルやで』って言われて狙ったんですけど、ショートゴロでした(笑)。サイクルを打ちたいっていう気持ちはありました。

 シーズンの残り試合とジャイアンツ戦でも、しっかりアピールしていきます」。

三好辰哉(富山)
三好辰哉(富山)

【吉田龍生】*二安打、中二塁打、中安打と3安打。センターで8度の守備機会を堅実にこなした

 「いつもは3番だけど今日は7番で、自分より若いやつらが前を打ってたんで、絶対に何か爪痕を残したろうと思って頑張りました。しっかりセンターに打ち返せましたね。

 少しはアピールできたかもしれないけど、でももっと打たないと(NPBには)まだまだ届かないなっていうのがあります、正直。

 次のジャイアンツ戦は何番を任されるかわかんないですけど、自分の実力を出して、スカウトさんに『やるな』と思わせられるように頑張ります」。

吉田龍生(石川)
吉田龍生(石川)

【森本耕志郎】*スタメンマスク(五回まで)で4投手をリード、第1打席に速球をレフト前へ

 「キャッチャーとしては初回の盗塁は刺したかったんですけど、なんとか前半の5イニングで試合を作ることはできたので、そこはよかったです。

 (盗塁は)走ってくるだろうなとは思っていたし、盗塁だけじゃなくバントとか、いろいろ想定はしていたので、簡単にストレートでは取り行かないで変化球でいこうっていうイメージで入ったんですけど、走ってきましたね。

 黒野、ブルペンでは調子よかったんですけど、いい時ほど試合で「あれ?」ってなることが多いので、もっと丁寧に投げさせればよかった。僕が早めにそれを言っておけばよかったなと思います。

 ヒットは、2ボールだったんでまっすぐ1本に絞っていきました。最初の2球よりちょっと遅い感じもしたんで、それを仕留められたのはよかったです。

 ジャイアンツ戦では、走ってきたら全部刺せるように準備をして試合に臨みます。バッティングは初球から甘いボールをどんどん打っていきます」。

森本耕志郎(石川)
森本耕志郎(石川)

【黒野颯太】*先発で1回を1安打3四球1三振1失点

 「緊張しましたね、めっちゃ。ストライク先行でいきたかったんすけど…。でもボール自体、そんな調子悪くないなっていう感じはしたんで、課題はストライク先行するっていうところです。前回(金沢でのタイガース戦)よりは、まっすぐがちょっと押せてたかなっていう印象はありました。

 またジャイアンツ戦で先発できれば、次はしっかり0に抑えて、流れをもってこれるようなピッチングをしたいと思います」。

【上田楽】*今季初の2回を投げて1安打1四球、無失点

 「前回(金沢でのタイガース戦)と違って、タイガースがホーム用のユニフォームやったんで、(タイガースファンとしては)より身近に感じられて、楽しく投げられました(笑)。

 スカウトさんが見に来られているとか、そこまでめちゃくちゃ意識することはなく、自分がやってきたことを出すっていうほうにフォーカスしたって感じです。

 僕は悪いとき、すごく高めに抜けるんすけど、今日はそれがなく、まっすぐがしっかり低めに決まってたんで、それでなおかつフライアウトが多かったんで、自分の持ち味は出せたかなと思います。

 鳴尾浜のマウンドは、金沢市民(野球場)とかよりも全然硬くて、全く掘れない感じ。めちゃくちゃ投げにくかったとかはないんですけど、合わせるのに最初ちょっと手こずったかなっていう感じでしたね。

 今年初のイニングまたぎでしたが、片田敬太郎コーチ)さんとも『試合でのマウンドをもうちょっと増やしていこう』っていう話になったんで、またこれからもまたぐこともあるかもしれないんで、いい経験になったと思います。これからバッターと対戦するっていう機会が増えていくと思うんで、しっかり目的をもってやっていきたいと思います」。

上田楽(石川)
上田楽(石川)

【北浦遼那】*1奪三振でチーム初めての三者凡退

 「今日はいつも以上に、落ち着いて投げられた感じはしました。球場に人が入っている割にすごく静かだったんで変な感じはしたんですけど、自分のピッチングに集中できていたの、そこはよかったです。

 あんまり自分をアピールしようアピールしようってなったら変に力が入っちゃうので、そこを考えずいつも通りプレーしようっていう風には考えていました。

 結果的に0っていうのはよかったんですけど、もっといいカウントを作ったりできたと思うんで、そこは次回に向けての課題です」。

北浦遼那(石川)
北浦遼那(石川)

【村井拓海】*1回を1安打1四球、無失点

 「(鳴尾浜のマウンドは)めっちゃ投げやすいっす。めっちゃ硬いの、めっちゃいいっす。めっちゃいいっす。

 でも、自分自身がずっとよくなくて、今日もあんまり感覚はよくなかったので、次はもっとよくしていけたらいいなと思います。

 (よくないのは)全体的にコントロールも出力もなんですけど、自分が満足いくような投球ができてないかなって思います。

 その要因は、1回怪我してからずっと思った通りにいってなくて、今ちょっと悩んでる途中みたいな感じです。でも、次の選抜のジャイアンツ戦までには、今の段階よりは絶対によくしたいなと思います」。

村井拓海(石川)
村井拓海(石川)

【日渡柊太】*1回を1安打1三振、無失点 最速150キロ

 「去年はやっぱりドラフトっていうのをずっと意識していて、アピールアピールって自分の中でいろいろ切羽詰まっていた状態やったんですけど、今年はそこまでではない。

 アピールもあるんですけど、それだけじゃない。今、自分が取り組んでいることをちゃんと出しきれているかなと思います。まだやれることもありますけど、やった結果がちゃんと出ているかなとは思います。

 去年から何を変えなきゃいけないかって考えたら、球速の面とか投げ方とか、そういうのがあったんで。今年は最初ちょっと調整不足で、出だし遅れたんですけど、途中からよくなってきて、やってきたことがやっと出てきたかなって思います。

 今日は変化球は3球ぐらいですね。あえてまっすぐを見せようというつもりではなく、この前(富山での試合で)対戦したバッターもいたんで、そのときにまっすぐが通用してファウルとかも稼げていたんで、押せるなと思ってまっすぐでいきました。バッターを見て、しっかり投げられましたね。

 まだまだ自分の目指しているとこまでたどり着いていないんで、まだもう1こレベルアップして、そこまで合わせていきたいと思います」。

日渡柊太(富山)
日渡柊太(富山)

■スカウトと現場は誰に注目した!?

 この日は4球団のスカウトが視察に訪れていた。スタンドで見ていた千葉ロッテマリーンズ編成管理部アマスカウトディレクターの榎康弘氏は、日渡投手と三好選手のプレーに目を留めた。

 「日渡くんは課題をちゃんと克服している。去年は左肩が開いていたけど、今年はそこも修正しているし、なによりボールに力がある。去年よりパワーアップしているね。三好くんもおもしろい。広角に、そして長打が打てる。今日もいいバッティングを見せてもらいました」。

 収穫があったとばかりに、榎ディレクターはにんまりと笑顔を見せた。

 奇しくもタイガースの和田豊ファーム監督も同じ名前を挙げた。

 「日渡くんはかなりよくなっているね。投げっぷりは去年からよかったんだけど、今年はいつでもストライクが取れる、変化球でもね。そして、まっすぐも上がっているよね。うん、すごくよくなったね。三好くんもいいね。今日だけじゃないよ。前回(富山)もそう。いいスイングだった。コンタクトがしっかりできるバッターだよね」。

 日渡投手は昨年、今年と2度ずつ対戦したが、その成長ぶりにも和田監督は目を細めていた。そして三好選手については8月の対戦でもインパクトがあったようで、さらにその評価を高めていた。

日本海リーグの選抜メンバーをじっくり見ていた和田豊監督(左)
日本海リーグの選抜メンバーをじっくり見ていた和田豊監督(左)

■次の選抜試合は

 選抜試合の次回は9月19日(金沢)、20日(高岡)、21日(金沢)の読売ジャイアンツ3軍戦だ。

 スカウトもまた視察に訪れるこの3連戦は、来月10月24日のNPBドラフト会議に向けての仁義なき戦いとなる。ここでの強烈なアピールは、限りなく指名に近づけるだろう。

 選ばれた選手たちは、どんなプレーを見せてくれるだろうか。

読売ジャイアンツ3軍戦はチケット発売中(写真提供:日本海リーグ)
読売ジャイアンツ3軍戦はチケット発売中(写真提供:日本海リーグ)

(表記のない写真の撮影は筆者)

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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