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白キャン解散直前インタビュー:麦田ひかる「解散ライヴを糧に、少しでも生きていける方がいればいい」

宗像明将音楽評論家
麦田ひかる(株式会社PLAYYTE提供)

7人組アイドル・グループの真っ白なキャンバス(通称:白キャン)が、2024年11月4日に幕張メッセ幕張イベントホールで解散ライヴ「明日も変わらない1日を」を開催し、7年間の活動に終止符を打つ。

解散ライヴに向けての7人の個別インタビューの1番手は麦田ひかる。ずっと小刻みに身体を揺らしていた麦田ひかるだが、その言葉は意外なほど客観的だ。いつも通りに解散までの日々を過ごしているという麦田ひかるに話を聞いた。

いつも通り、でも向上心はある

――解散が決まってから、白キャンのライヴや、ファンの人と会う特典会で、麦田さんの中で何かが変わった部分ってありますか?

麦田ひかる (即答で)ないです。いつもと同じです(笑)。

――10文字ぐらいで返しましたね。

麦田ひかる いつも通り。

――ところで、なんでずっと小刻みに揺れてるんですか?

麦田ひかる インタビューやだ(笑)。

――雑談だと思ってください。

麦田ひかる ……はい(笑)。

――最近だと「Crema」vol.3でインタビューを受けてたのに。

麦田ひかる みんないたから。

――そうですか……。5月22日に解散を発表して、どんな気持ちで白キャン最後の日々を過ごしていますか?

麦田ひかる ええ……。いつも通りだけど……いつも通りです。解散するけど、まだまだ向上心を上げてやってます。

――まだまだ向上心はあると。

麦田ひかる 向上心っていうことなのかはわかんないけど、いつも通りライヴ映像を見て、「あ、直したほうがいいな」とか思って。そういうのはいつも通りです。

――9月7日の三浦菜々子さんの生誕祭でも、麦田さんのダンスの切れがすごいなと見ていました。

麦田ひかる いつも通りです(笑)。

――……このインタビュー、30分やって100文字に満たない可能性が出てきたんですけど。

麦田ひかる いいんですよ。

――解散の日が近づいてきても、あまり気負いはない感じですか?

麦田ひかる 気負い……?

――麦田さんの中では、今までと変わらずにやろうという気持ちもあるんですか?

麦田ひかる はい。そのままの自分を出せていけたら。自分の体内にあることを。最後だから、たぶんその積み上げてたことが最後に出てくるんだと思うんで。いつも通り(笑)。

――白キャンの活動で特に思い出深いことはありますか?

麦田ひかる 白キャンの活動で……日々毎日たわいもない感じです。

――それはメンバーとの? ファンの人も含めて?

麦田ひかる 活動、全体的に。

――白キャンで活動する日々が好きだったと?

麦田ひかる ああ、まぁ(笑)。

――特に楽しかったこと、嬉しかったことってありますか?

麦田ひかる 楽しかったこと、嬉しかったこと……ええ、なんだろう。……毎日楽しいです。

――麦田さんは2020年に一度辞めて、2021年に再加入したわけじゃないですか。戻ってきて、麦田さんの中で何か変わった部分ってありました?

麦田ひかる どういうことですか?

――戻ってきて、もう一回白キャンをやってみてどうでした?

麦田ひかる どうでした? 辞める前は切羽詰まってたんですけど、辞めて戻ってきたときは、けっこう心に余裕があったんで、違う目線から、人とか、ライヴとかを見れるようになったんで、また違う視点から活動できている気がします(笑)。

――辞める前はそんなに切羽詰まってたんですか。

麦田ひかる 忙しかった。

――余裕を持って改めて白キャンの現場やライヴを見られるようになったとき、どんな感覚でした?

麦田ひかる 辞める前は……優しい人たちって知ってるけど、そう思えなかった。でも、辞めて余裕を持ってちゃんと見たら、自分がちゃんと見ようとしてなかっただけで、深く……わかんないです、終わりです(笑)。

――えっ、今ちゃんと話してましたよ。

麦田ひかる 終わりです。

――ここで終わっていいのかなって……。

麦田ひかる いいと思います。

――麦田さんが決めるんですか?

麦田ひかる はい(笑)。

2024年10月14日なんばhatch公演の麦田ひかる(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の麦田ひかる(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

感情の幅が狭い

――ライヴで特に楽しかったこと、嬉しかったことはあります?

麦田ひかる 自分、たぶん感情がけっこう一定なんで。一定って言っても、上も下も幅が狭いんで(笑)、やっぱ全部楽しいと思ってて。最上級に行っても……わかんないです、はい(笑)。

――以前、つらいことや大変なことも楽しいと思えるタイプだと言ってましたね。

麦田ひかる はい。

――そこは強みなんじゃないですか。沖縄、台湾、インドネシアもあって、日程的に詰まっていて、休みもそんなにないだろうし、でもやっぱり今楽しいですか?

麦田ひかる はい、全然苦ではない。

――なんでそんな強いんでしょうね?

麦田ひかる たぶん感情の幅が狭いんで(笑)。

――感情の幅が狭い、で全部終わるんですか?

麦田ひかる はい。(机の上に波線を描きながら)こうなってるんですよ、たぶん。感情の幅が広い人って、めっちゃ沈むじゃないですか。取り戻すための波も長いじゃないですか。自分は短いんで。

――(波線を見ながら)麦田さんは感情の波がゆったりで、かつ、波の上下がそんなにないと。大きく上がることもない?

麦田ひかる あります。でも、その幅もたぶん狭いのかもしれない。

――めちゃくちゃ落ち込むことも、めちゃくちゃ喜ぶこともなくて、ちょっと落ち込むとか、ちょっと嬉しいぐらいということ?

麦田ひかる 人によっては「ちょっと嬉しい」だけど、自分にとっては最上級なんで。

――自分の感情をすごく客観的に見てますよね。

麦田ひかる 後から気づきます。そのときは嬉しい気持ちだけど、後で回りを見ると感情の幅が狭いんだなって思います。

――苦しかったな、っていう思い出はありますか?

麦田ひかる ないです(笑)。

――苦しいことは何ひとつなかった?

麦田ひかる いや、あるんだろうけど、まぁ言わないです。もう過去なんで。

――過去のことはもう言いたくない?

麦田ひかる (即答で)はい。

――今日一番強い「はい」ですね。振り返りたくはない?

麦田ひかる 振り返るけど、自分の中で振り返るだけでいいと思います。

――ここで言う必要がない?

麦田ひかる (即答で)はい。

――それを決めるのは麦田さんなんですか?

麦田ひかる はい。自分の心なので(笑)。

2024年10月14日なんばhatch公演の麦田ひかる(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の麦田ひかる(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

白キャンの全集大成ができたらいい

――ラストライヴが幕張メッセ幕張イベントホールだと聞いたとき、どう思いましたか?

麦田ひかる 「あ、やるんだ」ってなりました。

――それは「できるんだ!」みたいな感じ?

麦田ひかる 最初聞いたときはなんだろう……びっくりしました。

――幕張イベントホールは広いと思うんです。実際に立ったらどんな気持ちになると思います?

麦田ひかる (驚いた顔で)え、わかんないです。

――なんでそんなびっくりしてるんですか。

麦田ひかる (笑)。

――青木(勇斗/プロデューサー)さんは、そこでBiSHのライヴを見たと言ってましたね。

麦田ひかる はい、自分も見ました。

――そこに麦田さんも立つわけで、BiSHが立ったステージに立ったらどうなるんだろうと想像したりしないですか?

麦田ひかる ……まだ想像してないです。

――ラストライヴはどんなものにしたいと思いますか?

麦田ひかる いやもう最後なんで。白キャンの全集大成ができたらいいし、なんか明日も変わらないなんとかをみたいな……。

――「明日も変わらない1日を」ですね。

麦田ひかる なんで、「明日もまだ白キャンが続くんじゃないか」っていうくらいの楽しい時間にしたいです。悲しいと思ってもらえるのもいいんですけど、これを糧に、少しでも生きていける方が、自分もですけど、いればいいんで。「明日も白キャンが活動するんじゃないか」っていうくらいの楽しいものを作りたいです。

――泣くと思います?

麦田ひかる 知らないです。やめてください(笑)。

――そういう質問はやめろと。

麦田ひかる はい。なんかそう言われると、「泣かないほうがいいんだ」とか、なんかそう思ってしまうから。

――余計な情報をインプットしたくないと。

麦田ひかる ってことです(笑)。

真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)
真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)

真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』

2024年11月4日(月・祝)

幕張メッセ 幕張イベントホール

開場:17:30 / 開演:18:30

https://shirokyan.com/news/3632/

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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