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心理学者が解説するビッグモーターの企業体質にみる「能力高い=パワハラ容認」に陥る理由と企業の末路

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

みなさんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田太郎です。

普段は大学教員として心理学の教育や研究を行い、また学校や企業でのカウンセリングなどの実践から、You Tubeインスタでこころの健康の大切さをSNSで発信しています。よろしければフォローをお願いします。

今回の記事では、ハラスメントに関する実務をしているとよく体験する「能力高い=パワハラ容認」という企業が、まさにビッグモーターが示している末路だと感じたので、パワハラ企業体質についてお話ししたいと思います。

暴力と恐怖を利用する能力観

ビッグモーターでは、組織の方針などが記された『経営計画書』を毎年、すべての社員に配っていました。

その中で『経営の原点12カ条』があり、「目標達成のためには、潜在意識に透徹するほどの、強く持続した願望を持つこと」 「経営には、いかなる格闘技にも勝る激しい闘争心が必要」という、いつの時代ですかという言葉が並んでいます。

組織に関する方針の項目には、「能力と考え方」と題した表ががあり、「能力」は仕事の能力で、「考え方」とは、会社と社長の意思に従えるかを意味していて、能力が〇で考え方はXの人には「会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください」と書かれています。会社が不正をしろという命令を下すと、社員は断れないという会社であったのが分かります。

またその理由として、人事については「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権(せいさつよだつけん)を与える」と書いてあります。この意味は、「他人に対して「生かす」か「殺す」かを選択できる権利」のことを指しています。目標達成のためと書かれているにも関わらず、なんの基準もなく好き嫌いのレベルで昇進や降格、更には解雇が行われていたようです。

元社員が「知ってる限りでも2~3人、その場で突然クビと言われた人もいるようです。また『歩き方が悪い』と女の子がクビ」になることもあったといいます。完全に人権侵害に関わるハラスメントです。

また、規定はプライベートの内容にまで踏み込んでおり、「社員旅行や親睦会などの会社行事の不参加者は、人事評価を下げる」 「結婚式は、売り出し日を外して予定を組む」というライフ・ワークバランスを無視したものでした。

そして、最大の懸案である『環境整備点検』です。副社長らが店舗を視察し、掃除や備品などの管理をチェックするイベントがあり、「職場環境が整備できない役職者はカド番、もしくは更迭する。リーダー失格」これで、街路樹を意図的に枯らしていた疑いがもたれているのです。

このような考え方は、暴力(攻撃性)と恐怖感を利用して人間をコントロールするための手法を駆使してるように感じます。このような手法は、詐欺師が利用する方法と同じです。

相手に恐怖感を与えて、それを回避しようとするために人間を動機付けます。社員にとってその回避の手段が、組織の理論に従うことであり、社員は人事降格などを回避したい恐怖感から不正行為に手を染めてしまったのではないかと考えられます。

能力高いからパワハラ容認

パワハラチックな社員でも、高い業績をあげているために、そのひどい態度を指摘できない状況にある人はいませんか?

また、パワハラ管理職がいることで、職場全体のパワハラ体質を誰も指摘できない状況にある人はいませんか?

パワーハラスメントに関する実務をしていると直面するのが 、パワハラチックな社員の能力の高さや業績が惜しくて、そのためにパワハラ行為に目をつぶってしまう組織が、数少なくなくあるということです。

心理学には、ハロー効果というものがあり、際立って能力の高いものがあればそれ以外のことについては、過小評価するという傾向があります。

このような認知的なバイアスが我々にはあるので、パワハラに対する過小評価を生み出してしまうのです。客観的に見た時に重大な問題が起こってるにもかかわらず、その中に入ってしまうと盲目になってしまうのです。

ハラスメントの実務担当者は、第三者の視点から社会的常識に照らして、容認できないことを指摘する役割があります。ビッグモーターは株式会社ですが、非上場企業であり客観的な目線が非常に入りにくい閉鎖的な企業です。その環境がこの劣悪なパワハラな組織風土を今まで温存したのだと思われます。職場の風通しの良さがいかに重要かを思い知らされます。

こういう企業は、社員のメンタルヘルスをむしばみ、顧客を裏切り、そして最終的にビッグモーターのように社会から不正が追求される事態になるのです。

Z世代が会社を変えていく〜「共感力」が求められる社会

今、私が行っている保育園の心理的安全性の研究の中で、時代の変化を痛感しています。

保育園の管理職にインタビュー調査を行うと、多くの人が新人に対して、いかに意見を言ってもらうかを重視している、と話されます。

これが一昔であれば、「 ついて来れない人はやめてもらったらいい、わかっている人だけ残っていけばよい」いうような上から目線の指導方法でした。いま、保育現場は売り手市場であり、保育士は非常に貴重な人材です。その貴重な人材を手放さないために大切にされています。

現在の変化が多い社会において、若い人の意見をいかに現場に取り入れて活かしていくかということが、組織の発展に寄与すると考えられています。

それが結果的に職場の心理的安全性を高めて、新人の退職を抑制し、働きやすい職場になるのです。

ビッグモーターは犯罪行為を行うための組織体制そのものだった可能性

ビッグモーターは悪条件があまりにも揃いすぎたためにパワハラ企業体質が温存し続けました。一歩踏み込んで感じることは、組織的に保険金詐欺請求の仕組みを行うために、犯罪組織の論理を用いて組織を意図的にコントロールしていたようにも感じます。

損保会社との癒着も取り沙汰され、これからかなり大きな問題になっていくと思いますが、今後、全容の解明が求められると思います。私も組織の動向について心理学的に追いかけていきたいと思います。

記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

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また次の記事でお会いしましょう!

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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