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兵庫県斎藤知事 会見で自分のために涙して「続投したい」ネットあ然 不可解な深層心理を心理学者が解説

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士
涙ぐむ理由が衝撃的だった

兵庫県知事が11日の会見で、涙ぐむ場面がありました。会見の中では、「こういう状況になったことは申し訳ないなという思い。自分自身に対して悔しい」と涙ぐみながら話しました。これは、自民党県議らに対して前回の知事選で支持をしていただいたことを踏まえて「重い決断の中で私に出馬要請をしていただいた」ことを振り返ってそう思ったとのことです。

兵庫県はこれまで、告発文書を3月に配布した県西播磨県民局長に対し、公益通報の調査結果を待たず5月に男性を懲戒処分とし、男性は7月に死亡しています。

これに対して、記者から「元県民局長さんが結果的に亡くなられたことなどへの後悔の感情は、今の涙には、こもっていなかったんでしょうか?」と質問されると、「今の思いは先ほど申し上げたとおり、自民党の先生方とのこれまでの経緯とか、維新の会の皆さんとのこれまでの経緯ということに対してのご説明でした」と答えています。

また、続いて「県民からは激励の声が多いというふうにお話をされていましたけれども、具体的にどんな激励の言葉が届いているのでしょうか?」と質問されると、斎藤知事は、「激励はしっかり頑張れよというような声をいただくこともあります」と、応援されていると答えています。

こうした自分中心のコメントに対して、地元の兵庫県の住民やネットから、批判が殺到しています。

記事をお読みの方も、亡くなられた二人や県民に対して涙をするのなら分かると思うのですが、「自分のために涙をする」状況に理解ができないのでは思います。本来ならば、職員が亡くなった時点で深く頭を下げて辞職することが普通だからです。

斎藤知事は筋が通っている

私は、斎藤知事が涙の理由を「自分に対して」としていることに、全く違和感を感じませんでした。

その理由は、これまで一貫して「誹謗中傷性の高い文章である」「懲戒処分は間違っていない」という信念を貫いているからです。これは、人間なので至らない部分があって申し訳ないが、これから自分は県政を担うことができる人間である、という信念があるからと思われます。

こういう信念で考えるならば、「私の辞任などありえない」という考えに行きつきます。議会に対しては、12日の会見でも、「改革の歩みを止めるべきではない」と述べて、自らへの不信任決議が可決されても議会の解散を検討すると話しています。なぜこれだけ自分の考え方を一貫できるのでしょうか?

相手の立場に立てないからこそ

批判の中でもあったように、当事者である知事は、亡くなられた方に対する謝罪や県政を停滞させている責任、全議員が辞職を求める状況を冷静に考えることができれば、知事にとどまることができないと考えるのが普通です。

しかし、この「相手の立場に立てないこと」が百条委員会を開催される状況を生み出し、また兵庫県職員に対して、ハラスメントを予防できなかった理由にもなっていると思われます。

相手の受け取り方がとても重要なことは言うまでもありません。ハラスメントとして認定されるためには、厚生労働省が示す3つの条件、つまり「常識的に」相手の人権を侵害することを行ったことが条件になっています。

管理者や上司は、ハラスメントにならないために、相手にとって人権侵害になっていないかを常に考えた行動が求められるわけですが、こうした相手の気持ちを理解できないことが、ハラスメントを助長する結果になったと思われます。

会見においても、記者の方に対して「それはあなたの考えで分かりませんが」という注釈をよく言われています。この発言は、偽りなく正直な発言であると思われます。実際に相手の気持ちや状況を理解しにくいのだろうと思われます。

相手の気持ちがわからない人が政治家になれるものなのでしょうか、非常に疑問に感じます。

自分に合わない考えを排除する

前回の記事でも説明させていただいたのですが、人間は自分の考えに合わないことに対して、それらを排除する傾向があります。

例えば、お酒を飲むことが好きな人は、「お酒が健康に良い」という情報を選択的に受け入れ、お酒が健康に良くないという考え方を避けます。斎藤知事も、同様に自分の一貫した考え方に合う場合それを採用して、合わない場合採用していない傾向がみられます。この傾向を認知的不協和理論といいます。

「県民から励ましの声が届いている」という自分にとって都合の良い意見だけに耳を傾けて、それ以外を排除しています。ここまで排除するのは理由があると思いますが、その理由はこちらの記事に書きましたので、以下のリンクからお読みください。

(記事リンク)兵庫県議86人全員が辞職要求しても辞めない斎藤知事 なぜ留まり続けることができるのかを心理学者が分析

涙が出る深層心理とは

人間は、感情的に揺さぶられたときに自然と涙があふれます。今回の斎藤知事は、これまで鉄仮面のように表情を変えなかったという状況から、突然、感情的に表現したので、それが印象的に映ったように感じます。

この自分のふがいなさに涙をしたことに対して、計算高いと論評する人もいますが、私は素直な反応だと思いました。というのも、これまで百条委員会で奥谷委員長に「被害者ずらしないでください」と注意を受けていた発言と類似していて、「自分は努力しているのに…」という被害者ストーリーの延長のように感じます。

当然このような反応は、被害者、県民、周囲の人たちを批判的にさせると思います。

ただ、この被害者ストーリーに一部共感する人がおり、Xで一時「#斎藤知事頑張れ」がトレンド入りしています。この不思議な現象についても、今後検討する必要があると思われます。今回の涙は、こうした被害者ストーリーをより強固にする可能性がありそうです。

動画では、簡単な関西弁で解説していますので、ぜひこちらもご覧いただき、コメントをいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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また、次の記事でお会いしましょう。

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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