避難にも使える車中泊のコツは「ばすだしで」〜マイ避難先のひとつとして車中泊を快適に
各地で豪雨災害も起こる中、新型コロナ対策で密を避けるため、車中泊を検討されている方もいるかもしれません。
防災で注目を集める車中泊ですが、アウトドアでは、以前から気軽に実施されていました。私も一人暮らしの時、犬を3匹連れて、車中泊の旅をしていました。ただ、災害時、急に実行しようとしても、危険な方法になってしまうこともあります。事前に体験して準備しておくと安心です。今回は、災害時にも役立つ車中泊のポイントをお伝えします。
2020年1月26日〜27日に香川大学IECMS地域強靭化研究センター主催の防災キャンプでレクチャーしました。
車中泊も、テント泊も、災害用トイレも女子だけで体験して学ぶ、本音のレクチャー&おしゃべり会です。
ここでの車中泊体験を元に同研究センター 准教授 磯打千雅子氏が親子で考案した標語が「ばすだしで」です。この標語にそって以下、お伝えします。
ば=場所
まず、「ば」は場所選びです。車中泊をする際、水道、トイレが使える場所にあるかが重要になります。通常のキャンプであれば、オートキャンプ場を使えば、水道、トイレはあります。また初めての車中泊であれば自分の家の庭で体験するのもおすすめです。
災害時は、水道、トイレが使えなくなる可能性があります。女性は1日平均5回トイレに行っているので、発災から4時間以内にトイレに行きたくなる計算になります。そのため車中泊するかどうかにかかわらず、携帯トイレは防災用品として毎日持っておいてほしいグッズです。車中泊の際にも、もちろん、持参してください。自宅で車中泊の練習をする場合は、自宅に災害用トイレを設置して、災害時のトイレの模擬体験を同時に練習するのもおすすめです。(2021年5月3日追記 車中泊で携帯トイレを実際に使うのは、女性にとって大変という声が多いです。介護用おむつやパッドの方が市販のものより使いやすかったという声もあります)
さらに、避難する場所が低い土地、浸水や洪水、土砂災害、盛り土、ブロック塀が倒れるなど災害に弱い場所であっては危険です。安全な場所に避難してください。
首都圏の都市部では、災害時、クルマで避難する場所がない場合があります。長野県は、あらかじめ避難できる場所を行政がマッピングしているので、避難を検討しやすいです。他にも広がればと思います。
クルマで移動する際の危険性については下記に記事も書きましたので参考になさってください。
す=水平
次に、車中泊で一番気をつけなければいけないのは、エコノミークラス症候群を避ける事です。厚生労働省は、エコノミークラス症候群の予防のための啓発PDFも作成しています。
座ったまま寝るのは、エコノミークラス症候群の危険があるのはもちろんですが、快適ではありません。寝床を水平(フラット)にして、足をのばせ、寝返りも可能なスペースを作り出せれば、日常のベットで寝るのと変わらない状況になります。災害時はガマンしなければと思いがちですが、災害関連死などの二次災害を生みださないためにも、快適さを追求するのは重要なことなのです。事前に準備しておけば、災害時も水平にしやすいです。シートを倒すだけで水平にならないクルマであれば、隙間に緩衝材やクッションを詰めてベストな方法を事前に探求しておくのが成功のポイントです。シートがとりはずせるクルマもあるので、これも事前にクルマの仕様書を確認してみてください。
だ=断熱
クルマは熱しやすく冷めやすい熱伝導率のいいガラス・鉄が多く使われています。そのため、冬場は、テントよりも寒くなり、夏場、エアコンを切った車内は50度を超えることもあります。冬山でも寒くならずに寝ることのできるアウトドアの極意は断熱のテクにあります。
車中泊で、季節を問わず、必ず実施していただきたい断熱は、寝床の下に銀マットなどの断熱材を敷くことです(断熱の見出しの写真下側参照)。布団はふかふかで快適そうに見えますが、体温と車内の温度差により結露が発生しやすくなり、湿ってきます。布団やシュラフ(寝袋)の下には断熱マットを敷くのがアウトドアのお約束です。断熱マットの多くは、自然界最強の断熱材である空気を蓄える構造になっています。それゆえ、寝心地もよくなります。空気をためる構造であるエアマットやぷちぷちなども、断熱材です。
夏場の断熱は、寝床の下に加えて、昼間のフロントガラス部分が重要です。フロントガラス用は、カー用品店やホームセンターで入手できます。エアコンをつけて、断熱したとしても、夏場は車内にこどもやペットを残して出かける事は厳禁です。
冬は、窓からの冷気がつらいので、窓サイズにカットした銀マットを養生テープなどで窓にはっていきます。断熱の見出しの上の写真が窓ガラスに断熱材をはっていく場面です。ジャストサイズであれば、テープなしでも密着できる場合もあります。窓カーテンは空気をためることができず、断熱性能は低いです。目隠しやプライバシー用にしかなりません。銀マットは厚みがあるほうが、断熱効果は高いですが、薄いほうが、窓に密着させやすいなど厚みの選択は一長一短です。さらに車中泊慣れしている人は天井部分を改造して、断熱材をあらかじめ貼り付けていたり、床やドア部分にも断熱材がとりつけられるようにしています。鉄部分については貼ってしまうと出入りが大変になるので、大きめの銀マットを置くというのもありです。
し=収納
し=収納です。室内はヘッドライトや、LEDランタンを用意しますが、荷物をどこに置いたかわからなくなりがちです。暗い中、出入りの際に財布を落としたということのないように、モノの置き場が整っていることが、快適な車中泊につながります。着替えをスムーズに行えるかどうかも、モノの置き場が明確であってこそ。命に直結するスキルではないですが、快適性には収納もお忘れなく。そしてこれを極めるためには事前の体験が必要になってきます。
で=電源
最後の「で」は電源です。通常のクルマはカーチャージャーやカーインバーターを使うことにより、スマホを充電したり、300W程度の電気が使える場合もあります。電気自動車やハイブリッド、プラグインハイブリッドになると1500Wの電気を発電できます。そのため、延長コード(防雨型の屋外コードがあればなお可)を購入しておけば、室内のエアコンや冷蔵庫も動かせる場合があります。(100V超えるものは使えません)。さらにV2Hという装置をつければ在宅避難も可能になりますが、それについては今後別記事で紹介いたします。
ただ、災害時はガソリン不足が問題になるので、いつもガソリンが半分になったら給油する癖をつけておきます。それでも、足りなくなるので、茨城県境町では、ガソリンだけではなく、電気とガスも加えた3種類が使えるトリプルハイブリッドカーを公用車として全国初で導入しています。電気+ガソリンのハイブリットカーにタクシー等で使われているLPGをプラスしたことで、ガソリンとLPGを満タンにしておけば1300kmは無給油で走ることができます。そのため長距離の避難も可能になります。そして、クルマ全体で2000W出力できる発電機として、停電時にも長時間電力を供給できるものになっています。
電気があると、医療ケアが必要な人たちも医療ケアを継続できます。ベットのまま車中泊できるように、クルマにトレーラーを牽引する方法もあります。
このトリプルハイブリッドカーは、岩手県北上市のガス会社、北良株式会社と花巻市の有限会社マイカープラザが、東日本大震災や各地の被災地支援に入った経験をもとに開発したものです。現在は、クルマの電気を使い、水を作り出す装置もついており、車体に蛇口もあります。さらに、作り出した水を浄水し循環させるWOTA BOXと組み合わせることにより、シャワーやお風呂という災害時の水回り問題も解決できています。今後の災害時の車中泊や在宅避難の可能性として、注目しておいてほしい仕組みです。
2021年5月3日追記
さらに、最近はポータブル電源も性能があがっており、最近の車中泊に使われています。わがやも自作のバッテリーから制作したポータブル電源と購入したもの、2台、日常から利用しています。それについては、大雪対策 防災の新常識、電源の確保はしていますか?発電機・クルマ給電・ポータブル電源、選ぶならどれ?をご確認ください。
以上、車中泊のコツ、「ばすだしで」、いかがでしたでしょうか?
車中泊は奥が深いです。ぜひ、事前に準備して取り組んでいただければと思います。