大雪対策 防災の新常識、電源の確保はしていますか?発電機・クルマ給電・ポータブル電源、選ぶならどれ?
年末年始の寒波で広い範囲の大雪が心配されています。コロナ禍では、避難所、避難場所は、密になる可能性もあるため、在宅避難のための対策を今まで以上に実施する必要があります。なかでも個人としての電源対策は、近年注目が集まっています。
Yahoo個人ニュースの、年越し寒波の停電対策 停電で使えなくなって「意外だった」と言われたことのある6つのものにも書きましたが、災害時、停電したため使えなくなったものは、エアコンやパソコン、スマホ、冷蔵庫や明かりばかりではありません。ファンヒーターや、給湯器、トイレなども使えなくなるなど、多様なものが電気を使っています。2019年9月に千葉県を襲った台風15号でも長期にわたる停電があったことから、台風後に君津市で子育て世代むけに講演した際、ママたちから質問が相次いだのが発電機についてでした。
発電機
カナダでは、1万Wの大容量発電機がホームセンターで販売され、値段は日本よりも格安
ところで上記写真は、冬の平均気温がマイナス12度、寒い日はマイナス20度になるのカナダのプリンスエドワード島(PEI)で撮影したものです。
カナダの家は断熱保温効果があるファイバーや高密度スチロールで壁や天井が覆われていますが、最近の暖房システムは電気に頼るものが多く、ヒートポンプや電気式ボイラーなどは単体で15000W(ワット)以上の電力が必要になっているので、断熱保温効果維持には限界があります。そこでそれらを主な暖房源としている場合には、予備の暖房手段が必要になります。電気に頼らないシステムであれば薪ストーブ、暖炉、石油ストーブなどがありますが、薪は少量では調達しにくく、ストーブの設置や掃除、手入れなどに手間がかかることから敬遠されがちで、一方石油ストーブは、灯油がリットルあたり360円以上と高いので、ほとんど利用されていません。そこで自家用発電機が注目され、PEIでは、地方の停電対策として推奨されていることもあり、発電機は、ホームセンターでも一般的に販売されています。
発電機の主な注意点は一酸化炭素中毒
ちなみに日本では、10000W以上になる発電機については、電気事業法38条により「自家用電気工作物」に該当し、保安規則や電気主任技術者について国に届け出が必要になるので、気軽に購入や設置ができるものではありません。
カナダでは大容量のものが、日本製の3分の1程度の価格で入手できます。
さらに、発電機による一酸化炭素中毒の事故はほぼないそうです。
なぜかというと、あまりに大容量で音も大きいので、誰も家の中で使おうと思わない規模のものだからです。
日本で販売されている発電機は、コンパクトで性能もよいのですが、その分、間違って屋内で使用されて事故につながっているケースもあります。発電機を購入したら、たとえカセットボンベタイプの発電機であっても、バイクやクルマのエンジンと同じなので、屋内で使用することはできません。また、屋内であっても風通しの悪いところでは同様の危険があることに注意が必要です。
また、稼働させるにはコツが必要なので、定期的にメンテナンスを兼ねて稼働させることも重要です。
発電機は、台風や暴風雪などの災害時、室外で作業するのは大変というデメリットがあるものの、安定供給できるパワーとコスパがよいというメリットがあります。
スタジオジブリの「崖の上のポニョ」の映画では、宗介の母、リサが素早く発電機を稼働させていた姿が印象的でした。
クルマからの給電
ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車の多くは1500W給電
クルマからの給電も最近注目されている災害対策です。
ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車の多くには、100V・1500Wまで使える電源が標準(またはオプション)設定されています。
100Vで1500Wあれば、石油ファンヒーターや洗濯機、電気炊飯器、給湯器まで使える可能性が出てきます。各クルマの説明にしたがって給電してください。(追記 12月30日 クルマのコンセントから自宅の電気を動かすために、外でも使える延長コードを準備しておくと災害時、便利です。)
どの製品がどれくらいの電力を使っているか知っておくことは、節電だけでなく、災害対策にもなるので、こどもと一緒に電気製品にシールでついているWの数字を確認して、1500Wになるまで足し算遊びをするのもお薦めです。概ね、LED照明器具が5〜10W、蛍光灯が40〜100W、冷蔵庫が200W前後、パソコンが50〜100W程度、扇風機が50〜60W、液晶テレビが150W前後になっており、冷蔵庫などモーターを使うものは、起動の時、さらに電力を使う製品もあります。
カーチャージャーやカーインバーターでできること
電気自動車、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカーではなくても、走行やアイドリング状態(エンジンキーがACCの位置)で、カーチャージャーやカーインバーターを購入して、スマホやパソコンを充電することは可能です。
カーチャージャーは、シガーソケットやアクセサリーソケットと言われる場所に差し込んで使います。クルマの12Vの直流をそのまま使います。
カーインバーターは、この12Vを家庭用の交流100Vに変換する装置です。コンセントが使えます。アクセサリーソケットにつなぐカーインバーターは、クルマのヒューズが切れる上限を考え、概ね180Wのものまで使えます。カーバッテリーにつなぐタイプは1000Wと表示があるものでも、クルマのバッテリーがあがるのを避けるため、安全値をとって、中・小型車で300W大型車で500Wが上限になってきます。
なお、アイドリング状態は、大雪の場合、一酸化炭素中毒の危険もあるので、マフラー部分を徹底的に除雪するなどの注意が必要です。
ポータブル電源の可能性
ポータブル電源は、屋内で使えることにメリットあり、近年性能の向上が著しく、多様な製品があります。
電気量を求めるのか、軽さを求めるのか、充電時間の短さが大事なのかなど、用途によって、選ぶものは変わってきます。
難病のある方や家族を支援する沖縄の認定NPO法人の沖縄県難病相談支援センターアンビシャスでは、医療ケアが必要な人のためのポータブル電源の貸し出しと使い方の注意点や比較について動画でまとめています。医療ケアが必要な人ではなくても参考になる情報が満載です。製品比較だけの情報であれば、YouTube動画で多数あります。
満充電や0のまま放置はトラブルの元
ところで、ポータブル電源の多くはリチウムイオン電池が使われています。普通のスマホのモバイルバッテリーもそうなのですが、6カ月を超えるような長期保管をする際には、電池容量の50〜70%の電池残量での常温・常湿保管が推奨されています。常時使っている場合は内部制御システムが働き、満充電や空になっても大丈夫なのですが、長期間、無充電のままで放置すると、電池自体の化学反応はそのまま続いてしまうので過放電になり、電池の劣化を招いてしまうのです。それを知らずに、やっぱり保管するには満充電にした方がいいと思い込んでいたり、充電したものの追加で充電しなかったために0%になってしまい、いざという時に使おうとしたら故障していたというケースが上記アンビシャスの一連の動画の中で報告されています。中にはそれが20万円もする機種だったこともあるそうです。
ポータブル電源を購入された場合は日常のパソコンやスマホの充電などに常時使うことをお薦めします。バッテリーの劣化も心配ですが、それ以上に新品のまま、使えなくなるほうが悲しみが深まるように思います。そして、普段から使えないものは災害時に使えないからです。(追記 もちろん、まだまだ発展途上技術でもあるので、どのリスクをとるかは、個人の価値観でしかありません。)
カーバッテリーから蓄電池を自作
また、カーバッテリーとインバーターと太陽光パネルを使って自作で蓄電池も製作できます。動画や、こどもでも製作できるキットも販売されています。太陽光パネルは、悪天候の最中は、利用できませんが、毎日使うと太陽のありがたみをしみじみ感じられるので、新しい技術ですが、ほっこりなごめるように思います。アウトドア好きの人は、原始時代の生活が好きと思われがちですが、結構、発電好きが多い印象です。バックパックにつけるソーラーパネルなども販売されているくらいです。
自宅での電源確保は、今後ますます重要に
以上、いくつか電源確保の手段を記載しました。withコロナの時代、そして、ゼロカーボン社会やSDGsの動きからしても、電力リスクの分散と個人の電源確保は今後ますます重要になってきますので、各自、楽しみながらできる所から取り組んで災害時に生かしていただければと思います。