京都丹波産和栗がふわり「亀広良」さんの栗きんとんで満喫。上品なこし餡と銀寄栗の贅沢な秋の味わい
栗を使用した和菓子は多々あれど、やっぱり欠かせないのは栗金団ではないでしょうか。きゅっとてっぺんに小さなちょんまげをたたえた愛嬌たっぷりな佇まいながらも、素朴であったり力強かったりとそのお店や栗の産地ごとに個性豊かな味わい。ほぼ栗とお砂糖だけなのに、千差万別・十人十色とでもいえるような奥深いお菓子。
さて、その栗きんとんですが、お正月になるとおせち料理にはかかせない存在としても名を馳せるスタイルの栗きんとんは、ぺっとりとした餡に栗の甘露煮がごろりと沈んでいるもの。そして冒頭でも触れた「絞り」というスタイル。そしてもうひとつが、そぼろ状の栗餡を纏った上生菓子様式の栗きんとんです。
いわゆる名古屋の観光地から一歩離れたエリアに暖簾を掲げる「亀広良」さんはその起源から、京都の和菓子の風を感じるお店。今回は亀広良さんの「栗きんとん」をご紹介。
亀広良さんの栗きんとんは、芯にこし餡を秘めてその周りにふんわりとそぼろ状の栗餡をたっぷりと纏わせた上生菓子スタイル。いわゆる和菓子屋さんならでは栗きんとんなので、普段和菓子屋さんや百貨店の和菓子コーナーには馴染みが薄いという方には珍しいかもしれません。
使用されているのは京都丹波産の銀寄栗とのこと。銀寄栗は色合い、香り、味わい全てがほくほくとして上品なため、京料理や上生菓子に使用されることが多い品種なのだとか。確かに程よく粒感を残したままの栗餡からは、固さではなくほろりとした優しい印象の栗の実を味わうことができました。
そしてこちらの栗きんとんの特徴は、口に含んだ刹那に漂う薫り高い空気感。ふんわりと花開く栗や小豆こし餡の香りを閉じ込めた空気が解放されたのち、栗餡の優雅な味わいが舌の先から染みていきます。前菜とメインのような流れは病みつきになりますね。
こし餡も栗餡を邪魔しないような、それでいて甘露を湛えた存在感。
滑らかな栗餡と小豆こし餡、そして栗の実の輪郭がはっきりとした歯応え。二つの異なる魅力をいったりきたりしながら、深まる秋と名古屋や京都へ旅行計画を練りたいな…と思う贅沢なひとときでした。