Yahoo!ニュース

北京オリンピックでツイッターが最も盛り上がった瞬間は?

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
北京オリンピック盛り上がった瞬間第14位.(写真:ロイター/アフロ)

北京オリンピックも17日間の期間を終え,日本は冬季オリンピック過去最多の18個のメダルを獲得しました.メダルを取った選手の皆様もそうでない皆様も,応援していた皆さまもお疲れさまでした.

この17日間はツイッター上でもオリンピック関連の話題で大いに盛り上がっていましたので,どう盛り上がっていたのかを簡単に分析してみました.

対象としたツイートは2月1日~20日18:00の間に投稿された,

オリンピック,五輪,メダル,#オリンピック,#五輪,#メダル

を含む5,028,198ツイートです.

ツイート数分析

まず,一日当たりのツイート数を見てみましょう.

一日後とのオリンピック関係ツイート数(著者作成)
一日後とのオリンピック関係ツイート数(著者作成)

開会式が終わって本格的な競技が始まった2月4日以降ツイート数が増えているのが分かります.最も盛り上がったのが,2月10日,11日でした.10日は男子フィギュアスケートのフリーが行われた日,11日は平野歩選手が金メダルを取った日でした.どちらも注目選手が出てきた日ということでツイッター上での注目度も高かったのでしょう.

実はこの辺りを境に徐々にツイート自体は減っていったのですが,2月17日に盛り返します.この日は髙木美帆選手がオリンピックレコードで金メダルを獲得した日になります.やはりメダルが取れるとツイッターも盛り上がりますね.

ツイートのピーク

そこで,細かくツイートのピークを見てみましょう.

1時間ごとのツイート数をプロットしたものがこちらです.

1時間ごとのツイート数(著者作成)
1時間ごとのツイート数(著者作成)

概ね毎日夜くらいにピークが来ていますが,これはこのくらいの時間にメダルが決定することが多いからでしょうか.

全体を通してみると,特に大きなピークがいくつかあることが分かります.ピークトップ5を見てみると,

・2月10日14時(男子フィギュア鍵山選手銀メダル,宇野選手銅メダル,羽生選手4位)

・2月11日12時(スノーボードハーフパイプ平野選手金メダル)

・2月17日23時(女子フィギュア坂本選手銅メダル)

・2月4日21時(開会式)

・2月6日21時(スキージャンプ小林選手金メダル)

となります.

こう見るとフィギュアスケートの注目度の高さが分かります.他の競技の金メダルよりフィギュアスケートのメダル決定の際にツイートが多くされているようです.これは,リツイートを除いた場合により顕著にあらわれますので,フィギュアスケートは多くの人がリアルタイムで見て,自分の感想を直接ツイートしているのではないかと思われます.

注目選手は圧倒的に羽生選手

このフィギュアスケート選手への注目度の高さは各選手への言及数からも見て取れました.主なメダリストや話題となった選手について言及数を調べました.そのトップ10が以下の通りです.

主な選手への言及数トップ10(著者作成)
主な選手への言及数トップ10(著者作成)

この結果,最も言及数が多かったのは羽生選手でした.トップ5を見ると平野選手以外は皆フィギュアスケートの選手ということで,やはりフィギュア選手が話題になりやすかったのかと思われます.もともとツイッター上ではかなりコアなフィギュアスケートファンのコミュニティがあったりもしますので,納得がいく結果ではあります.

しかし,羽生選手についての言及は群を抜いています.2位の宇野選手の2倍以上ツイートされてますし,ショート,フリーのタイミングのほかに,記者会見,エキシビションでも大きなピークを作っていました.さらに,ほかの選手との最大の違いとして「常に誰かしら羽生選手について言及している」という面白い現象がありました.試合のない日の深夜4時にも誰かしら羽生選手についてツイートしているってのはさすがとしか言いようがありません.

ちなみに,言及数にはリツイートを入れていますが,オリジナルツイートの割合を見てみると高梨選手や堀島選手に関してはオリジナルツイートの割合が多かったようです.高梨選手は団体競技で失格になってしまったことや,堀島選手は今大会日本人選手メダル第1号ということで,話題性が高く直接言及した方の割合が多かったのではないかと推測されます.

メダルごとの反応の違い

最後に,メダルごとに反応にどのような違いがあるのかを見てみましょう.メダルの色である金銀銅についての言及数について調べてみました.

メダルの色に関する言及数の分析(著者作成)
メダルの色に関する言及数の分析(著者作成)

ここでは,金銀銅それぞれのオリジナルツイートと,リツイートの数,そしてオリジナルツイート率を算出しています.

やはり,「金」という言葉を含むツイートが最も多く,メダルとしては金メダルに話題が集中することが分かります.銀と銅はそれほど変化はないようです.もっとも銀メダルは6個,銅メダルは9個獲得していますので,一つ当たりの平均で考えると銀メダルの価値が高いとは言えそうですが.

また,オリジナルツイート率を見ても,金銀銅の順番で率が下がっていることが分かります.オリジナルツイート率が低いということは言及の多くがリツイートであるということになり,自ら何か意見・感想や情報を発信するというよりも,情報の拡散を行う行為が中心であると考えられます.

ということで,ツイッター上ではやはり金メダルへの注目度は他のメダルに比べて特に高く,金メダルの獲得に対してはリツイートではなく言及しがちであるという傾向が見て取れます.特に驚くべき結果ではありませんが,金メダルの特別性についてデータからも裏付けることができた結果かなと思います.

おわりに

というわけで,オリンピック期間中のツイートデータについて簡単に分析してみました.その結果,ツイッター上での言及数と言う観点からは,金メダルの影響力は強いものの,メダルは取れなくても羽生結弦選手が最強という結果になりました.さすがです.

データ自体は500万ツイート近くありますが,今回はそれのざっとした統計分析だけをしてみた感じです.データとしてもなかなか面白い情報が含まれていそうなので,今後より詳細を分析してみたいところです.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

鳥海不二夫の最近の記事