Yahoo!ニュース

広まらなかった花粉対策の「エアシャワー」 ウイルス対策に使えるか考察してみた

櫻井幸雄住宅評論家
コロナウイルスの脅威でマスクが売れている。他にも予防策があればよいのだが……。(写真:アフロ)

 中国で発生し、次第に脅威を拡大しつつある新型コロナウイルス。その予防策として、まずはマスクと手洗い。首相官邸のホームページでもマスクと手洗いが推奨されている。

新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~

 ワクチンが開発されていない現状では、それらに頼ることになるのだろう。

 もっと効果的な予防手段ないか、と思いを巡らせていたら、一時期マンションへの採用例があった「エアシャワー」のことを思い出した。最先端の設備機器としてもてはやされたことがあったのだが、今、それを採用しているケースはない。アレ、どうなったんだろう?そして、アレはウイルス対策として使えないか?

 いくつかの考察を試みた。

ホコリや花粉症対策として有効なエアシャワー

 エアシャワーとは、精密工場の入り口などでよく設けられる設備。風速25メートル以上というような強い風を吹き出す噴出口がいくつか付き、強風で衣服のホコリや花粉を吹き飛ばす。吹き飛ばしたホコリや花粉をフィルターでキャッチするので、外から入ってくる人が多くても、室内をクリーンな状態に保つことができる、というものだ。

 では、強烈な風を吹き付けることで衣服についたウイルスも吹き飛ばし、コロナウイルス対策としても効果があるのだろうか。

 吹き飛ばした後、フィルターの性能によっては細菌やウィルスも除去できる、ともされるのだが、それを証明するデータや論文は残念ながらみつからなかった。

 それでも、今なら、強烈な風を浴びる装置を使ってみたい気がするのだが、残念ながら「マンション全体の入り口に付けよう」という動きはない。

 理由は、以前、広めようとして失敗した苦い経験があるからだ。

マンションの入り口にエアシャワーを付けてみたら

 日本では、ある時期、エアシャワーをマンションのエントランスに設置する試みが出た。建物に入る人は必ずエアシャワーを浴びるので、館内をクリーンな状態に保つことができる、というもので、そんなマンションが登場しはじめたのは、2006年くらいから。「ウイルス対策として」ではなく、主に「花粉症対策として」の効用を期待して採用された。

 その後、2013年には、アパート用建物のオプションとして、エアシャワーを活用した安全装置を発売したハウスメーカーがあった。これは、エアシャワーの効果に防犯機能を加えたもので、状況に応じて、装置内を施錠し、警備会社に通報できるものだった。

 しかし、設置は広まらなかった。

 いちいちエアシャワーを浴びるのは面倒、という人がいたし、費用の高さも問題となった。ハウスメーカーの防犯機能付きエアシャワーはオプションで約200万円。それに加えて、定期点検・フィルター交換の費用が継続的に発生する。

 お金がかかる上に利用者の評価はいまひとつ、となれば、設置は広まらない。

 結果的に、エアシャワーを入り口に設置する集合住宅はなくなった。

 もし、この集合住宅用エアシャワーが改良され、ウイルス除去に効果があるとなったら……今なら、設置例が爆発的に増えるのではないだろうか。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

資産価値はもう古い!不動産のプロが知るべき「真・物件力」

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

今、マンション・一戸建ての評価は、高く売れるか、貸せるかの“投資”目線が中心になっていますが、自ら住む目的で購入する“実需”目線での住み心地評価も大切。さらに「建築作品」としての価値も重視される時代になっていきます。「高い」「安い」「広い」「狭い」「高級」「普通」だけでは知ることができない不動産物件の真価を、現場取材と関係者への聞き取りで採掘。不動産を扱うプロのためのレビューをお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

櫻井幸雄の最近の記事