お鍋にあんこ?!中野の逸品グランプリ最優秀逸品賞「鍋横最中」は街和菓子屋さんのローカル銘菓
アーケード街、新旧の魅力が煮詰まった居酒屋、サブカルチャーが集う街。芸人さんが多く住むといわれることでも有名な土地、東京都中野。その中野の喧騒から一歩離れ、より生活感漂う東京メトロ丸の内線「新中野」駅前から伸びる鍋屋横丁という商店街に佇む和菓子屋さんが、創業1947年の「むさしの玉屋」さん。
むさしの玉屋さんにはどら焼きや桜餅、柏餅といった定番の和菓子から季節の生菓子まで揃う地域の人たちに寄り添ったお店なのですが、中野の銘品である商品を決めるコンテストがあるのです。その大会にて、2008年の最優秀逸品賞に選ばれたとある和菓子が。今回は、栄えあるグランプリに選ばれた「鍋横最中」をご紹介。
おとぎ話に出てくるような鉄鍋そのものというべきフォルムに思わず釘付け。一般的な最中は、最中種で中餡を挟んだものなのですが、こちらはお鍋の容器に中餡と滑らかな求肥を詰め込み、その上から取っ手までついた最中種の蓋を被せるといったユニークな形。そのため最中種もたっぷりと味わうことができ、歯ごたえや香ばしさも一般的な最中に比べると遥かに上回っているような印象です。
餡子は粒餡、こし餡、黒ごま餡の三種類が用意されているのですが、私のイチオシは黒ごま餡です。
粒餡やこし餡の定番かつじんわりと舌先から安らぎが伝わるような甘味も良いのですが、黒ごま特有の渋みやほんの僅かのえぐみが良い塩梅に作用しているのです。黒ごま餡のみではおそらく飽きてしまうような量なのですが、そこに求肥の柔らかなアクセントと強かな最中種の香ばしさが加わることにより、たっぷりでも最後まで飽きずに召し上がることができます。むしろ、後を引く美味しさに名残惜しさを感じるような…
実は鍋屋横丁、お鍋が沢山売られていたというわけでも鍋料理のお店が沢山あったというわけではなく、かつて「鍋屋」という人気のお茶屋さんがあり、それを記念して名づけられたんです。なんでも草餅が大変美味しかったのだとか…
形は違えど、和菓子つながりというのがなんともほっこりさせてくれるようなお話ですね。
遠方へのお土産としてはもちろん、都内在住の方であってもローカルな由来に基づいた街の和菓子というのは、その希少性も含めて喜ばれる手土産なのではないでしょうか。