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性別関係なく、愛する自由を なぜノルウェー首相はプライド行進の先頭に立つのか?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
行進する首相(右)写真:Martin Fjellanger/Oslo Pride

ノルウェーでは移民背景があるセクシャルマイノリティは、ノルウェー社会に加えて、自分の出身国のコミュニティという「2重の差別」を受けやすい。

2018年ノールランド調査では、回答者の半数以上が自殺を考えたことがあり、5人に1人が実際に命を絶とうと試みた。

人種・宗教・肌の色により、幼稚園・保育園にいる頃から差別を受ける。ネットの普及により拡大するヘイトスピーチは、この国でもたびたび問題となっている。

22日、性の多様性を祝福するプライド・ウィークの最後に、市民の行進が首都オスロで開催された。

今年はアーナ・ソールバルグ首相が先頭に立ち、右派・左派の両派から多くの大臣、国会議員、政治家らが歩いた。

Photo: Martin Fjellanger / Oslo Pride
Photo: Martin Fjellanger / Oslo Pride

主催者側によると、5万人がパレードに参加し、27万5千人が通りでパレードを鑑賞。過去最高の数字を記録した。

未だに差別を恐れて、ありのままの自分でいられない人がいる。

「安心していいんだよ」、「私たちは差別を許さない」というメッセージを送るためにも、政治家などの権力者、企業などらがパレードに参加することは重要な意味をもつ。

「ヘイトをやめよう」というメッセージ、プライド広場にて Photo: Asaki Abumi
「ヘイトをやめよう」というメッセージ、プライド広場にて Photo: Asaki Abumi

今週、オスロの街は虹色になっていた。

飲食店、ホテル、企業、バスや路面電車など、どこでも虹色の旗を掲げ、「性の多様性を私たちは支持する」という姿勢を見せる。

虹色に染まった国立劇場 Photo: Asaki Abumi
虹色に染まった国立劇場 Photo: Asaki Abumi

ありのままの自分でいられない人への「ここには安心してきてくださいね」、そして「男と女」という恋愛関係以外を認めようとしない人に対する無言のメッセージだ。

ソールバルグ首相は、ノルウェー国営放送局NRKの公式サイトにこう寄稿した。

「多くの人がパレードに参加しますように。ありのままの自分でいる自由のために、私たちは共に歩きます。誰もが安心できる社会が実現するまで、私たちは行進し続けるでしょう」。

Photo: Hedda Marie Westlin / Oslo Pride
Photo: Hedda Marie Westlin / Oslo Pride

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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