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「自分自身を見つめ直す機会にもなっただろう」と矢野監督 《阪神ファーム・プロアマ交流試合》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
12日に本塁打を放った高山選手(右)と江越選手(中)、三塁打の島田選手(左)。

 先週の阪神ファームは7日からのオリックス3連戦で3連勝し、試合のなかった2位・ソフトバンクとの差を3.5ゲームに少し広げていました。しかし後半はソフトバンクが広島に3連勝。今度は試合のなかった首位・阪神を2ゲーム差に縮めてきています。いや~本当にソフトバンクは負けてくれません。8月4日に阪神が連勝を6で止めたのに、そのあとまた4連勝ですから。

 そして、きょうから今月2度目の直接対決があります。14日が熊本、15日がタマスタ筑後と台風の影響が少し心配ですね。今度は、もし阪神が連敗してしまうと首位の座を明け渡すことになる、まさに首位攻防の2連戦。正念場と言えるでしょう。もちろん優勝することが主目的ではありませんけど、ここまで来たら…と思ってしまいます。15日に先発予定の藤浪晋太郎投手も、自身のこれからのために頑張ってください!

 さて、公式戦がなかった週末に交流試合を行った阪神。11日が社会人チームの新日鐵住金広畑と久しぶりの顔合わせ、12日は大阪市立大学と初対戦でした。

★11日 8年ぶりの新日鐵住金広畑

 まず11日にあった、新日鐵住金広畑戦の結果をご紹介しましょう。対戦するのは2010年3月27日(鳴尾浜)以来。余談ですが、当時はまだ“新日鐵広畑”だったんですよね。2012年から現在の名称になって、来年4月から社名が“日本製鉄”に変わるため、それに伴って野球部名も変更されるでしょう。ユニホームもきっと。

 そして2010年といえば、阪神ファームにとって新しい試みである『育成試合』が始まったシーズンです。育成コーチ主導で社会人チームや独立リーグなどと戦うもので、本隊が公式戦をやっている時に並行して試合をすることも多々ありました。この日の新日鐵広畑戦は普通にファーム本隊が参加した交流試合ですが、翌28日の四国アイランドリーグ・徳島戦はシミュレーションとして行われ、4月から育成試合が本格化しています。懐かしいですねえ。

 ちょっと脱線しました。8年前の新日鐵広畑戦は、ルーキーの秋山拓巳投手が先発してプロ最長の5イニングを投げ、2安打ながら2失点。2回にプロ初被弾となる2ランを浴びています。結果は4対4の引き分けでした。それ以来、8年ぶりの対戦となった今回は、いきなり3点を先取されながらも8回に6連打で5点を取って逆転、6対4で阪神の勝ちです。

《交流試合》

阪神-新日鐵住金広畑 (鳴尾浜) 

 広畑 300 000 100 = 4

 阪神 000 100 05X = 6

  

◆バッテリー

【阪神】岩田-山本-牧-尾仲 / 岡崎‐小宮山(5回~)

【広畑】尾嶋(2回)-坂本(3回)-森本(1回)-宮田(2回) / 田中-福井圭(6回~)

◆二塁打 阪神:板山2、熊谷 広畑:佐々木

◆盗塁 阪神:荒木 広畑:飯田

4回、左前タイムリーを放った緒方選手。
4回、左前タイムリーを放った緒方選手。
8回2死二、三塁。西田選手の2点タイムリーで同点!
8回2死二、三塁。西田選手の2点タイムリーで同点!
森越選手も左前打で続き、チャンス継続。
森越選手も左前打で続き、チャンス継続。
小宮山選手が勝ち越しの2点タイムリー二塁打!
小宮山選手が勝ち越しの2点タイムリー二塁打!

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]左:江越  (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0)

2]一:山崎  (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃走一:荒木 (2-1-0 / 1-0 / 1 / 0)

3]中:高山  (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0)

4]遊:板山  (3-2-0 / 0-1 / 0 / 0)

5]指:緒方  (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0)

〃打指:西田 (2-1-2 / 0-0 / 0 / 0)

6]三:今成  (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃三:森越  (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]捕:岡崎  (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃捕:小宮山 (2-1-2 / 0-0 / 0 / 0)

8]二:熊谷  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]右:島田  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

岩田 4回 83球 (6-3-1 / 3-2) 145

山本 1回 10球 (0-2-0 / 0-0) 135

牧  2回 24球 (1-0-0 / 1-1) 148

尾仲 2回 25球 (1-1-0 / 0-0) 151

 

<試合経過>※敬称略

 1回に岩田が先頭から内野安打と右前打を続けて許し、3番・佐々木に右越えのタイムリー二塁打。なおも二、三塁で4番は三振でしたが5番・植田の中前タイムリー。次の投ゴロで自身の送球エラーがありもう1点。いきなり3点を先取されます。2回、3回は走者を出しながら抑え、4回が三者凡退。4回6安打3失点(自責2)でした。

 なお打線は新日鐵住金広畑の先発・尾嶋に対して、2回に板山が四球を選んだだけ。2人目の坂本にも3回は三者凡退を喫し、まだノーヒット。ようやく4回、先頭の山崎が左前打、高山も左前打で続き、1死後に緒方が左前タイムリー!1点を返しています。

山本投手は5回、2三振を奪って三者凡退。
山本投手は5回、2三振を奪って三者凡退。
牧投手は6回を三者凡退でしたが、7回に失点。
牧投手は6回を三者凡退でしたが、7回に失点。
試合終了。自身の二塁打で尾仲投手(右)に勝ちをつけた小宮山選手(左)。
試合終了。自身の二塁打で尾仲投手(右)に勝ちをつけた小宮山選手(左)。

 5回表は山本と小宮山のバッテリーでクリーンアップを三者凡退に!その裏が最後のイニングとなった坂本は2球ずつで2死を取って、最後は江越に真っすぐオンリーの4球を投げ、146キロで空振り三振。気合いが入っていましたねえ。

 6回表は牧が三者凡退に切って取ったものの、7回も続投すると先頭に右前打され、暴投と犠打で1死三塁となって、2番・大場の左犠飛で1点を追加され4対1に。しかし6回、7回と1安打ずつで無得点だった打線が8回に大反撃!それも2死を取られてからです。

 まず荒木が左前打して二盗を決めると、レフトの前にポトリと落ちる高山のヒット(処理はショート)で一気に生還!板山は左翼線二塁打で2死二、三塁となって西田が中前タイムリー!これで2人を還し、追いつきました。まだ続きます。森越が初球を打って左前打、小宮山は粘って右中間への2点タイムリー二塁打で勝ち越し!

 打者9人で6連打、計5点を取って6対4と逆転した打線。8回から登板した尾仲(8回は三者凡退)が、9回は先頭に右前打されるも次は二ゴロ併殺打、最後は一飛で試合終了です。

対応力が上がってきた板山選手

 矢野燿第監督は、2打席連続二塁打の板山祐太郎選手を「板山はいいよね。ずっと内容もいいし。きょうのヒットでも内容がしっかりしている。対応力という部分でも、ちょっと上がってきていると思う。簡単にアウト、みたいな打席は少ないから」と絶賛。“勝負できるところ”まで来ていますか?と聞かれた矢野監督は、こんな答えでした。

この日は二塁打2本を放った板山選手。
この日は二塁打2本を放った板山選手。

 「ああ、来ているんじゃないかと思うけどね。まだチャンスがね。上も結構、出番を待っている選手は多いから、そんなすぐにチャンスが来る感じではないかもしれんけど。特にスタメンとかでね。でも何とかできる可能性は上がっていると、俺は思うよ」

 なお板山選手自身は「追い込まれての対応力という面で、やろうとしていることができた」と話しています。

 岩田稔投手は「ちょっと自分のやりたいところをやったので、結果は3点取られましたけど。1個は自分の守備のミスがあって。まあ自分のやりたいことに集中しすぎて周りが見えていなかったかなというのはあります」と振り返り、具体的な内容は聞けませんでしたが「自分の中で、やりたいことがあって、自分を高めるために試した」と説明。

試したいことがあったと岩田投手。4回は本来のピッチングでした。
試したいことがあったと岩田投手。4回は本来のピッチングでした。

 その結果は?「3イニング投げて、ちょっとまだタイミングとか、そのへんが合っていなかったので4イニング目にそれを忘れて、しっかり低めに強い球を、リリースの時に強くという意識だったら、その3イニングとだいぶ違うボールも行きだしたし、内容もよかったので。今やりたいことプラス、その意識を持っていけたらいいかなと思います」。次回はそれを最初から?「もう一回、はい。ちゃんとまた練習できる時間があるので、そこで練習して、ちゃんと表現できるように」

江越選手に挑んだ直球勝負

 そして今秋のドラフト候補選手と言われる、新日鐵住金広畑2年目の坂本光士郎投手にも話を聞いています。実はちょうど帰りのバスに乗ってしまった直後だったのですが、関係者の方に声をかけていただき、わざわざ降りてきてくれました。感謝です!

新日鐵住金広畑の坂本投手。3イニングを投げて4安打1失点ですが、最後の打者・江越選手には真っ向勝負!
新日鐵住金広畑の坂本投手。3イニングを投げて4安打1失点ですが、最後の打者・江越選手には真っ向勝負!

 対戦してみて「きょうはストレートがどれくらい通用するかを試したかったので、連打を浴びることもありましたが、自分の思っている球はしっかり投げられた、そこが収穫かなと思います」という感想。逆に課題も見つかった?「やっぱりまだ、そのストレートでも打たれるというか、いい当たりが多かったので。もっとキレを出していかないとプロでは通用しないとわかったことが課題です」

 阪神との対戦は?「初めてです」。プロとは?「去年のウインターリーグで先発もしたんですけど、それ以外は」。台湾のウインターリーグに社会人選抜チームで参加し、8試合に登板。唯一、先発したのが阪神の所属するウエスタン選抜でした。しかも勝ち投手になっています。ではNPBの単独チームとやったことがない?「ないです。初めてでした」。楽しみだった?「そうですね。やっぱりストレートがどのくらい通用するのか知りたかったので、結構ワクワクしながら、きのう一日過ごして(笑)」

5球目の146キロに空振り三振した江越選手。
5球目の146キロに空振り三振した江越選手。

 そして、きょうは江越選手から三振を奪って締めくくった?145キロ、146キロと真っすぐのみで。「3イニングと決まっていたから最後のバッターというのもあり、1軍でもプレーされている選手だし、そういうバッターから三振を取りたいなと思って全球ストレートでいきました。結果、三振を取れたので本当に嬉しかったです!」

 江越選手のところでギアが一段上がったように見えたのは気のせい?「チームメイトからも言われましたが、自分としてはそんなに変えた感覚はなかったんです」。リリースの際に出る気合いの声も大きくなったでしょう?「そうですね。声は出ていたと思います、自分でも」。最後は少し笑っていました。秋のシーズンも期待しています。頑張ってください。

★12日 大阪市立大学と初顔合わせ

 12日は初めて対戦する大阪市立大学を鳴尾浜に迎えました。ベンチの中に座る選手たちも、その隣の一塁側カメラマン席で試合を見守る学生たちも、キッチリと並んでいて気持ちよかったですね。ヤジもなんとなく理性的というか、あんまり相手を攻撃することもなく、打者や投手への激励が多かったような気がします。

 前日に続いて1回に選手点を与えた阪神ですが、この日は13安打と8四死球に2本塁打などで計14点を取って勝ちました。石井将希投手が5回、藤谷洸介投手が4回で、先月24日のBCリーグ・石川戦と同じ継投。藤谷投手は1四球のみで5奪三振、無失点です。

《交流試合》

阪神-大阪市立大学 (鳴尾浜) 

 市大 101 000 000 = 2

 阪神 014 420 03X =14

  

◆バッテリー

【阪神】石井-藤谷 / 長坂‐小豆畑(6回~)

【市大】山崎雄(3回1/3)-伊澤(1回2/3)-塘本(3回) / 板野

◆本塁打 阪神:高山3ラン(山崎雄)、江越2ラン(伊澤)

◆三塁打 阪神:島田

◆二塁打 市大:北村

◆盗塁 阪神:江越2、荒木2、板山、西田、熊谷

    市大:福永、北村、篠原

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]右:江越  (3-2-3 / 1-2 / 2 / 0)

2]一:荒木  (5-2-1 / 0-0 / 2 / 0)

3]左:高山  (3-2-4 / 0-2 / 0 / 0)

4]三:板山  (5-2-0 / 0-0 / 1 / 0)

5]指:緒方  (1-0-2 / 0-1 / 0 / 0)

〃打指:西田 (2-0-0 / 1-1 / 1 / 0)

6]二:森越  (4-1-2 / 0-1 / 0 / 0)

7]捕:長坂  (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0)

〃打捕:小豆 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

8]遊:熊谷  (4-2-0 / 0-0 / 1 / 0)

9]中:島田  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0)

  ※小豆=小豆畑

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

石井 5回 58球 (4-2-1 / 2-2) 146

藤谷 4回 54球 (0-5-1 / 0-0) 145

<試合経過>※敬称略

先発の石井投手。同じ選手にタイムリー2本を打たれました。
先発の石井投手。同じ選手にタイムリー2本を打たれました。
この日もマルチヒットの板山選手。写真は8回の中前打です。
この日もマルチヒットの板山選手。写真は8回の中前打です。

 先発の石井は1回、先頭の福永に右前打と盗塁を許し、2番・北村の左前タイムリーで1点を先取されます。北村にも盗塁を決められましたが、後続を断って追加点はなし。2回も三者凡退に抑えながら、3回にも先頭の9番・桑原に中前打され、1死後にまた北村が今度は中越えのタイムリー二塁打。

 そのあとは4回に先頭へ四球を与えたものの併殺に仕留め、5回は三者凡退です。石井は5回を投げ4安打2失点。しかしその間に打線が大量点で試合をひっくり返しました。まず2回に先頭の板山が左前打して、盗塁と暴投で三塁まで進み、緒方の遊ゴロで生還。3回は1死から島田が四球を選び、暴投で二塁へ。そして江越の中前打で生還しています。さらに荒木の右前打と高山の死球で1死満塁、板山の一ゴロで江越がアウトになって2死満塁。

西田選手は降り逃げで一塁へ。ちなみに4回は盗塁も決めました!
西田選手は降り逃げで一塁へ。ちなみに4回は盗塁も決めました!
続く森越選手が中前タイムリー!押し出し四球と合わせて2打点です。
続く森越選手が中前タイムリー!押し出し四球と合わせて2打点です。

 ここから緒方と森越の連続四球で押し出しによる2点を加え、なおも2死満塁で長坂が中前タイムリー!緒方はホームでアウトになりましたが、打者9人で3安打と3四死球、4点を取って5対2と逆転しています。

 4回は1死から島田が右翼線への三塁打を放ち、江越の死球と盗塁(1回と同じく背中に当たり、同じく二盗成功)で二、三塁として、荒木の遊ゴロ野選で島田が生還。荒木も盗塁を決めて1死二、三塁となり、続く高山がライトへ3ラン!この回は4点追加です。5回には熊谷の内野安打と盗塁などで2死二塁、江越が左中間へ2ランを放ち、11対2となりました。

藤谷投手は6回から4イニングを投げて無失点です。
藤谷投手は6回から4イニングを投げて無失点です。

 大阪市立大学の3人目・塘本に対して6回、7回は走者を出しながら3人ずつで片づけられた打線ですが、8回は2死から荒木が内野安打と盗塁を成功させ、高山の左前打で生還!板山の中前打で一、三塁として西田は振り逃げ(三振と暴投)。この暴投で高山が還りました。なおも2死一、二塁で森越が中前タイムリー。さらに3点を加えて14得点です。

 なお後半の阪神バッテリーは藤谷と小豆畑に代わり、6回は2奪三振で三者凡退。7回は先頭の5番・篠原に四球を与え盗塁を決められますが、後続はしっかり断って無失点。8回と9回は三者凡退で試合終了。

矢野監督が語る、市大との相乗効果

 試合後、矢野監督は2安打4打点の高山俊選手を分析しました。「体にちょっと“巻きつき”かけてきたかな、というイメージ。レフトへ打ったやつも、最初のサードライナーも内側からはじけているというか。きのうのポテンヒット(8回のタイムリー)も俊らしい、いいヒットだった。面がいい形になってきているというか。それが巻きついて、カウントもいいから真っすぐ狙いで、ポイントが前になって入ったホームラン」

4回の3ランのあと、8回にも左前タイムリーを放った高山選手。
4回の3ランのあと、8回にも左前タイムリーを放った高山選手。

 最後の左前タイムリーも?「ああいう感じで(バットが)出てくるっていうのは、いい。外側から出ていたら打てないから。それと、手ばかりで打たないように。手でいっちゃうと、滑ってファウルになってしまう。バチンと叩かなあかん」。そんな打席の確率を上げていく?「そうそう。面で打つとポイントが多くなる。その1点でガンっというのではなくてね。イチローとか、西武の秋山もそんな感じに見えるけど、いいバッターってポイントが多い。打てるゾーンが長い。面で打っているから」

 そのあと自ら、対戦相手の大阪市立大学について語り始めた矢野監督。「きょうは自分自身を見つめ直す、いい試合だった。あの子たちは当たり前やけど勉強して大学に入って、野球にもすごくちゃんと向き合っている。監督に聞いたら、将来プロ野球選手を目指す子が野球部に入ってくるらしい。野球の推薦で大学に入ったのでなく、勉強で入った市大で、そういう考えを持ってる。だから練習もすごくやっているし」

整然と並んだ大阪市立大の選手&学生さんたち。
整然と並んだ大阪市立大の選手&学生さんたち。

 そして「きょうは選手に、言葉は悪いけど“ボコボコにしてやってくれ”と言った。それが市大の子らに対する誠意やと思うし、あの子らもそうやって市大に入りながらもプロを目指したり、もっと野球がうまくなりたいと思ってやっている中で、ああプロってこうやるんだな、ここがすごいな、この部分は何とかなるかもしれないなとか基準になるじゃない?こっちとしても、よくないミスはあったけど全体として、そういうふうに戦ってくれた」と一日を回顧しました。

 さらに「振り返ったり、自分を見つめ直したりできる時間になった」「お互いに勉強できる機会」「いい刺激になる」という言葉を続けた矢野監督です。

相手にダメージを与える渋いヒットを

 ホームランの2人の話を、と思ったのですが高山選手は時間がなくて、球種しか聞けず…「真っすぐでしょう」というひとことでした。江越選手は1回と4回に同じ背中への死球があったので、大丈夫ですか?と尋ねたら「痛いです」と即答。公式戦でも、ことしはリーグ最多の12死球ですもんね。2ケタ死球ってこと自体がリーグ8年ぶりのことで、ちょっとビックリしています。

試合後、整列しての挨拶を終えて引き揚げてくる江越選手。
試合後、整列しての挨拶を終えて引き揚げてくる江越選手。

 あ、ホームランの話ですね。追い込まれてから低めの変化球をうまく打った2ランには、本人も「うまく打てたと思います。スライダーでした」とのこと。これからも「何とか1球でとらえること、追い込まれたら何とか詰まってもヒットにできるように、そういうバッティングが課題です。きれいなヒットも大事だけど、そういう渋いヒットが…」と江越選手。つまり相手に与えるダメージは大きいと?「はい、そうですね」

 次に石井投手は「思ったより腕は振れていたけど、まだもっと振れると思いました。球速は147キロ(球場での表示は146キロ)とか、ランナーのいない状態では常時140キロちょっとが出ていたので。しっかり腕を振っていけば、ある程度は自分の思った球が投げられると感じました。そういう意味では収穫だったと思います」と、約20日ぶりの試合を振り返りました。

納得はいかないけど前回よりよかった

 最後は藤谷投手です。ナイスピッチング!と言われて「ナイスピッチングじゃないですよ~」と。そういえば最後も空振り三振を取って終わったのに、なぜか仏頂面でしたね。「思っていた球と全然違ったので…。特に最後のバッターが」。どう思っていて、どんな球になった?「アウトローに投げたかったのが、インコース気味のめちゃくちゃ高いボールになったので、取った三振というより振ってくれての三振でした」

小豆畑選手(右)とタッチしながらも、なかなか笑顔が出なかった藤谷投手。
小豆畑選手(右)とタッチしながらも、なかなか笑顔が出なかった藤谷投手。

 それでも4イニングで無安打無失点。「最初の6回はいいボールもあった。あれを続けていけたら、と思います。変化球はカーブとスライダーがちょっと抜けたり、引っかかったりしていたので、そこを修正して。チェンジアップはこれまで通り伸ばしていきたいです」

 藤谷投手も7月24日以来の登板で、同じ4イニングを投げて「あの時よりはよかったですね」とうなずきました。確かに前回は計4安打3失点で、真っすぐの球速も142キロくらいだったと思います。「でも、きょうの方が暑かった!」。そりゃそうでしょう。あの時はナイターですから。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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