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結婚相談所の多くが加入している「連盟」。そのメリットとデメリットは?~結婚相談所の現実(6)~

大宮冬洋フリーライター
自会員だけでお見合いを組む結婚相談所、実は絶滅危惧種です。イラスト:つぼいひろき

 婚活アプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を続けている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が返ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 第6回は、近年の結婚相談所業界を席巻している「連盟」について。いま、小さな結婚相談所のほとんどが連盟と言われる会員情報共有システムに加入している。大手は、日本結婚相談所連盟(IBJ)、日本ブライダル連盟(BIU)、日本結婚相談協会(JBA)などだ。

 連盟に加入する最大のメリットは、お見合いの数を会員に提供できること。自社の会員は数十名でも、会員情報を共有することによって何万人もの異性のプロフィールを検索でき、お見合いを申し込める。中小の結婚相談所が集まることによって大手の結婚相談所や婚活アプリに数でも対抗しているのだ。

 連盟の利用は良いことばかりなのだろうか。デメリットはないのか。あえて連盟に加入していない結婚相談所もある。その一つが、三重県四日市市を拠点に9年前から活動している「三重で結婚しよう」だ。代表の片山陽平さんに話を聞いた。

条件がいい男女だけがお見合いを組めて、その他大勢は申し込むたびに断られる状況

――どの連盟にも加入していない理由から教えてください。

 四日市は人口30万人強の中規模の都市です。こういう場所で連盟に加入すると、同じ連盟内で独身の方を取り合ってしまい、料金の安い結婚相談所にだけ会員が集まることになります。他の相談所は面白くないでしょう。安い相談所は嫌われてしまい、お見合いを組みにくくなるなどの弊害も予想されます。それでは会員さんのためになりません。

――お言葉を返すようですが、料金は多少高くてもいいので、面倒見のいい結婚相談所に良い人を紹介してほしいと思う人もいるはずです。

 条件がいい人は連盟加入の結婚相談所を大いに活用するといいかもしれませんね。ただし、連盟のシステムを使ってたくさんのプロフィールを見ていると、目が肥えてしまって高望みをしがちです。条件がいい男女だけがお見合いをどんどん組めて、その他の人は申し込むたびに断られるような状況になりかねません。

――条件がいい男女とは?

 男性は年収と職業と外見、女性は年齢と外見がわかりやすい条件になります。これは他の婚活と変わりません。条件があまり良くなくてお見合いがなかなか組めない人をなんとかしてあげるのが相談所の役割だ、と私は思っています。

連盟加入のメリットはお見合いの「数」を会員に提供できること

――最近は、結婚相談所でも会員が自分でデータベースを検索できるのが当たり前です。結婚情報サービスや婚活アプリとの差がなくなっているようにも感じます。

 相談所のカウンセラーがどんなに熱心だったとしても、お見合いを申し込んだ相手が入会している相談所がそうだとは限りません。カウンセラー同士が面識ないことも大いにあり得ます。すると、相手の情報がほとんどわからないままお見合いと交際を進めなければなりません。結果としてうまくいかないことが多くなり、「とにかく数をこなせ」というアドバイスしかできなくなってしまうのです。

――打たれ強い人ならいいのですが、何十人と断ったり断られたりすることが続くと普通の人は精神的に滅入りますよね。

 おっしゃる通り、お見合い数は最少にして結婚できるに越したことはありません。うちは280人ぐらいの会員さんがいて、私がノートと身上書のみでお見合いを組んでいます。成婚した人の平均お見合い数は6、7人です。1人目や2人目のお見合いで結婚を決めた人も少なくありません。自社会員なので、男女双方の状況と希望を私がちゃんと把握していて、お見合いから交際までをサポートすることができるからです。連盟加入の結婚相談所と比べると倍ぐらいの成績だと思います。

 ただし、自社内ではお見合いを組めない人が出てくるので、7つほどの相談所とは月に何度か会合を持っています。お互いの会員同士でお見合いを組むためです。気の合う相談所としか組まないので、お見合いなどについてコミュニケーションが滞ることはありません。

――自分で小さな連盟を作っているようなものですね。やはり、連盟のメリットはお見合いの数を会員に提供できることに尽きるのでしょうか。

 私はそう思います。相談所にとって一番の苦労は、月会費を払ってくれている会員さんにお見合いを組み続けること。そのためには新しい会員さんを入れ続けなければなりません。うちは年間で100人ぐらいの新規会員の方を受け入れていますが、それでも足りません。

 連盟に入ってデータベースを使うと、一応はお見合いを組むことができるので、結婚相談所は精神的に追い込まれなくなります。それが成婚に結びつくかどうかは別問題ですが……。

 いま、ある連盟から加入を誘われて保留しているところです。加入して、会員さんの中でも条件のいい人には活用してもらうことも検討しています。

ネット通販のように、膨大な候補の中から「一番」を選びたい時代に

 以上が片山さんへのインタビュー内容だ。9年以上も「独立系」で奮闘して来た片山さん。その意義を強調しつつ、最後には連盟の軍門に降りそうだと明かしてくれた。小さな結婚相談所が単体で運営していくのはそれだけ大変なのだ。

 時代背景としては、誰もが「自分は好みの相手を選べる」と無意識のうちに信じていることがうかがえる。ネット通販のように、膨大な候補の中から一番を選ぶプロセスが保証されないと納得できないのだ。それだけ自由になったとも言える。

 しかし、結婚には納得感などよりも信頼と勇気のほうがはるかに大事だと筆者は思う。結婚相談所とも縁あって巡り合った。信じて任せて、紹介された人と素直な気持ちで会ってみなければ何も始まらない。少しでも相手の良さを見つけられたら交際を重ね、結婚へと踏み出すのが王道だと思う。

 2人の交際と結婚に、「連盟の総会員数」や「成婚率」などは関係がない。自分自身と他者の人間性を信頼し、新しい生活を始める勇気があるか否かが問題なのだ。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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