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雪が少ない札幌「三八豪雪」の昭和38年に匹敵

饒村曜気象予報士
解析積雪深(1月8日15時現在)

北海道の今冬の雪

 日本海を発達した低気圧が通過し、日本付近は冬型の気圧配置となり、寒気が北日本に南下してきます(図1)。

図1 予想天気図(1月9日9時の予想)
図1 予想天気図(1月9日9時の予想)

 日本海側を中心に雪か雨となりますが、積雪量はそれほど多くはありません。

 各地の72時間降雪量の予測(1月8日21時から11日21時)を見ると、東北から北陸の山沿いが中心で、多い所で50センチ程度です(図2)。

図2 各地の72時間降雪量の予測(1月8日21時から11日21時)
図2 各地の72時間降雪量の予測(1月8日21時から11日21時)

 北海道では72時間で10センチ程度しか降らない見込みです。

 今冬の北海道は少雪傾向が続いており、朱鞠内など標高の高いところでは平年の50~70%程度の積雪ですが、札幌など標高の低いところでは20~30%程度しか積もっていません(表)。

表 各地の積雪(1月8日20時現在)
表 各地の積雪(1月8日20時現在)

 これは、北海道といっても今冬は気温が高い日が多く、平野部では雨が降ることもあっての少雪であるからです。

 東北や北陸でも同じ傾向です。

 標高の高い所は雪として降っても、平野部では雨として降るため、平野部では例年の雪景色をみることができません。

札幌の最深積雪

 今冬の札幌の最深積雪は17センチしかありません。

 積雪の資料がつくられている昭和36年(1961年)以降でみると、積雪が80センチ台と90センチ台が一番多くなっています。

 そして、一番積もったのが平成8年(1996年)の145センチ、平成12年(2000年)の142センチと平成になってからです(図3)。

図3 札幌の年最深積雪(昭和36年(1961年)~令和元年(2019年))
図3 札幌の年最深積雪(昭和36年(1961年)~令和元年(2019年))

 逆に少なかったのは、昭和38年(1963年)と平成元年(1989年)の69センチです。

 冬はまだまだ続きますので、現在の17センチがそのまま令和2年(2020年)の最深積雪になるとは限りませんが、しばらくは大雪が降る可能性が小さい期間が続きます。

 札幌の16日先までの予報を見ると、降水の有無の信頼度も5段階で一番低いEや、二番目に低いDが並んでいますが、黒雲マーク(雪や雨が降る可能性がある曇り)が多い予報です(図4)。

図4 札幌の16日先までの天気予報
図4 札幌の16日先までの天気予報

 そして、雪マークが現れるのは、1月19日になってからです。

 この頃には積雪が増えると思いますが、札幌の最高気温、最低気温ともに平年より高い日が多い見込みです(図5)。

図5 札幌の1月の最高気温と最低気温(9~15日は気象庁、16~24日はウェザーマップの予報)
図5 札幌の1月の最高気温と最低気温(9~15日は気象庁、16~24日はウェザーマップの予報)

 今月末から始まる札幌の雪まつりは、遠方から雪を搬入しなければならない事態に陥るかもしれません。

「三八豪雪」と北海道

 昭和37年(1962年)12月から昭和38年(1963年)2月にかけて、北陸地方を中心に記録的な大雪となり、気象庁は「昭和38年1月豪雪」と名付けています。

 通称「三八豪雪」と言われるこの豪雪によって、死者・行方不明者231名、住家被害1735棟、浸水家屋6978棟などの大きな被害が発生しました。

 このときの降雪量の合計は、青森県の青森596センチ、山形県の新庄で902センチ、富山県の富山で631センチ、福井県の福井で589センチと北陸地方を中心に記録的なものでした(図6)。

図6 三八豪雪時の期間降雪量
図6 三八豪雪時の期間降雪量

 北海道では、倶知安では624センチでしたが、札幌で260センチなど、ほとんどの地点では北陸よりは少ない積雪でした。

 これは、北海道が南下した寒気の中心であったためです。

 大気が安定している状態が続き、あまり雪は降りませんでした。

 逆に、北陸など南下した寒気の周辺では、南からの暖気と遭遇して大気が不安定となり、三八豪雪と呼ばれる豪雪が発生しました。

 今冬も寒気の中心は北海道ですが、三八豪雪の時に比べると気温が高く経過していることが違います。

 高い気温で積雪が融け、あるいは雪ではなく雨として降ることで雪解けが進んでいることからの札幌の少雪です。

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図6の出典:気象庁ホームページ。

図3、表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図5の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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