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コロナ後で歓送迎会が増加 利用者が気をつけるべき「たった3つのこと」

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

歓送迎会の回数が回復傾向

年度末に歓迎会や送迎会を開催しますか。

ホットペッパーグルメ外食総研によれば、2023年春の歓送迎会の参加回数の見込みは、増加派(「昨年より大きく増えそう」+「昨年よりやや増えそう」)が17.9%で、2013年の調査開始以来最高の割合。20代男女の若年層を中心に、回復傾向であるといいます。

歓送迎会花見230310/ホットペッパーグルメ外食総研

1回1人あたりの想定予算は「5,000円~6,000円未満」が最多(30.7%)で、2番目が「3,000円~4,000円未満」(25.7%)。想定支出金額平均は3,998円(前年比113円増)と、2年連続で増加しています。相手は「会社・仕事関係」が最多の26.7%(前年比8.6%増)で、昨年よりも増加。

客足と大人数の増加

大手飲食店予約サービスのTableCheckは、定期的に飲食店の動向をデータ化しています。同社が2023年3月12日までの集計データをまとめたところによると、春先に旅行需要の増加、歓送迎会利用などによる客足増加がみられており、10人以上、20人以上の利用も増えているということです。

コロナ禍における飲食店の来店・予約件数推移/TableCheck

こういったポジティブな調査やデータ、および、3月13日からの「マスク着用の個人判断」を鑑みるに、2023年の歓送迎会はかなり盛り上がるのではないでしょうか。

歓送迎会が盛り上がり、飲食店に活気が戻るのはよいことですが、コロナ後ということで、利用者に気を付けてもらいたいことがあります。

心にゆとりをもつ

観光業や飲食業は、コロナ禍でまともに営業できず、経営的危機に見舞われたため、人材が離れていってしまいました。一度別の業界に移ってしまえば生活基盤が変わってしまうので、人材は簡単に戻ってきません。

帝国データバンクの調査によれば2023年1月において、 飲食店における人手不足企業の割合は、正社員が60.9%で業界別9位、非正社員が80.4%で業界別2位と高い水準にあります。飲食業界は非正社員によって支えられていることを考慮すると、8割の企業で非正社員が不足しているのは、喫緊の課題であるといえます。

人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)/帝国データバンク

人手不足が解消しないので、間引いた席数をもとに戻せなかったり、営業時間を拡大できなかったりする飲食店も少なくありません。

歓送迎会を行う人が増えたり、大人数客の割合が増えたりするのは、飲食業界にとって喜ばしいことです。ただ、人手がまだ不足している状況で、一気に客が増えたり、大人数客が押し寄せたりすると、オペレーションが回らないかもしれません。料理が提供されるのに時間がかかったり、スタッフを呼んでもなかなか来なかったり、水やドリンクのサーブが遅れたり、会計に手間がかかったりする可能性があります。

歓送迎会を行う際には、心にゆとりをもって、飲食店のサービスを見守ってもらいたいです。

節度を守ってアルコールを嗜む

コロナ禍によって、飲み会や宴会が激減したり、外食する機会が減ったりしました。その影響で、アルコールを全く飲まなくなったり、飲む機会が減ったり、飲む分量が少なくなったりし、これがそのまま習慣化した人も少なくありません。そういった人が飲食店に訪れると、アルコールの飲み方を忘れていて、節度を守った飲み方ができないことがあります。

ドリンクをたくさんオーダーすれば客単価が上がるので、飲食店は嬉しいです。しかし、適量を守って飲酒したり、飲み放題で大量に飲み残さないように注意したりしなければなりません。特に大人数で利用すると、気持ちが大きくなって飲み過ぎたり、飲み放題で無駄な飲み残しが多くなったりするので、よく留意する必要があります。

ノーショーやドタキャンを防ぐ

飲食店の書き入れ時は一般的に3月と4月の歓送迎会、忘年会の12月といわれています。反対に閑散期といわれているのが2月と8月。新年会の時期を除いた1月、5月もあまりよくありません。もちろん同じ飲食店であっても、業態や立地によって異なります。

東京都では2022年は1月21日から3月21日まで、まん延防止措置の期間となっていました。しかし、今年は何の制限もない年度末となり、飲食店にとっては書き入れ時です。

利用者にくれぐれも気を付けてもらいたいのが、ドタキャン(直前キャンセル)やノーショー(無断キャンセル)。ドタキャンやノーショーによって繁忙期の売上が減少するので、閑散期を目の前にした飲食店は苦しい立場に置かれます。当然のことながら、予約したくてもできなかった他の客に対しても迷惑をかけるでしょう。

ノーショーやドタキャンを回避するために、幹事は以下のことに留意しなければなりません。

まず、責任をもって参加者の状況を確認すること。ノーショーは絶対に行ってはなりませんが、ドタキャンもしないにこしたことはありません。人数の増減があればすぐに連絡します。全体を仕切っている幹事は、参加者としっかりコミュニケーションをとり、いち早く変化を察知して飲食店に知らせるべきです。

次は強制参加にしないこと。歓送迎会では、上司と部下、先輩と後輩、年上と年下など、上下関係になっていることが多いので、半ば強制参加になっていることがあります。参加必須と明言していなくても、暗黙的なプレッシャーや雰囲気があれば同じことです。多くの人に飲食店へ訪れてもらいたいと思いますが、気が進まずに参加表明してドタキャンやノーショーするくらいであれば、最初から欠席した方がよいです。幹事は少しでも強制的なニュアンスを漂わせてはなりません。

最後は、テイクアウトやデリバリーという選択肢も考えること。飲食店が復調するためには、店内飲食が活気を取り戻さなければなりません。ただ、もしも、ドタキャンやノーショーとなる可能性があるようならば、コロナ禍の副産物で充実した飲食店でのテイクアウトやデリバリーも考慮に入れた方がよいです。

歓送迎会は文明的な行い

食事は、生物として営みを続けていくために必要ですが、文明化した人類にとっては、人と人との関係を円滑に運ぶ潤滑油の役割も果たしています。

歓送迎会のように、新しい人が加わったり、これまで共にいた人が去ったりする重要な分水嶺において、一緒にテーブルを囲んで絆を深めたり、労ったりすることは非常に文明的な行いです。

当記事で紹介したことに留意して歓送迎会を行い、大切な人たちと飲食店で素晴らしい時間を過ごしてください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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