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【JAZZ LIVE】ニック・ベルチュ/ローニン来日公演

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、スイス発のニュー・ジェネレーション、ローニンの来日公演。

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ニック・ベルチュ『リリア』
ニック・ベルチュ『リリア』

1971年スイス・チューリッヒ生まれのピアニスト、ニック・ベルチュが2001年に結成したのがローニン。この名前は、彼が敬愛する黒澤明監督の映画にも関係する“浪人”に由来しているそうだ。

もともと1980年に出逢ったドラムのカスパー・ラストとのスモール・アンサンブルでの実験を重ねていくうちに、自らの“RITUAL GROOVE MUSIC”という指針を固めていったベルチュは、メンバーを増やして“モバイル”というユニットを結成し、さらに2001年には名称をローニンに改めてアルバム『リチュアル・グルーヴ・ミュージック』をインディーズ・リリースした。

精神的なニュアンスを色濃く漂わせ、ミニマリスト的で、民族的な匂いとR&Bのエッセンスが同居した独特のサウンドは“禅ファンク”と呼ばれ、毎月曜日の夜に開かれたチューリッヒのクラブ“Montags”でのライヴに集まる観衆の熱狂が噂として世界へ広がるのも時間の問題だった。

その後、5人編成でサウンドを熟成し、2005年にドイツの名門ECMレーベルから『ストア』でデビュー。

彼は“リチュアル・グルーヴ・ミュージック”と名付けた自らの音楽について、次のように語っている。「音楽とは“動的な芸術”だ。それはダンスがそうであるように、統制された音楽のなかに存在するフォルムやサウンドによって得られる“気付き”が、グルーヴによる陶酔感と禁欲的な苦行を区別することなく受け入れられるからだ。それらはまた我々を不意打ちするいくつもの組み合わせを生み出す可能性を秘めている」と。

(ニック・ベルチュの発言は「ALL MUSIC」掲載のニック・ベルチュのBiography部分から引用)

うーむ、さすがに武士道に傾倒した“禅ファンク”の遣い手らしさがあふれた、難解な解説である。

今回の来日では、フル・バンドによるエレクトリック・セットとアコースティック・セットに分けて実施。アコースティックセットでは、ニック・ベルチュのソロとの二部構成になっている。

エレ&アコによる“禅ファンク”の「二度美味しい!」ステージは見逃せない。

では、行ってきます!

●公演概要

【エレクトリック・セット】出演:ニック・ベルチュ(ピアノ)、カスパー・ラスト(ドラム)、トミー・ヨルディ(ベース)、シャー(バス・クラリネット)

★10月10日(土) 開場15:00/開演15:30

会場:新宿 Pit Inn(東京・新宿)

★10月14日(水) 開場19:30/開演20:00

会場:晴れたら空に豆まいて(東京・代官山)

【アコースティック・セット】出演:ニック・ベルチュ(ピアノ)、カスパー・ラスト(パーカッション)、トミー・ヨルディ(ベース)、シャー(バス・クラリネット)

★10月11日(日) 開場19:30/開演20:00

会場:「山羊に、聞く?」(東京・代官山)

★10月13日(火) 開場19:30/開演20:00

会場:横浜 Airegin(横浜・関内)

♪Video LLYRIA Modul 47 BLUE VERSION

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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