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緊張よりも「楽しんでやろう」って気持ちのほうが大きい――14歳のシンガー・Layインタビュー

宗像明将音楽評論家
Lay(提供:HIROMA Label)

14歳にして、アコースティック・ギターを弾きながら、自身の手による英語詞を歌いあげるシンガー・Lay(レイ)。2022年9月28日に「Wanna be Breakin'」を配信リリースし、今後第3弾まで配信が既に決まっている。さらに10月8日にはサーキットイベント「FM802 MINAMI WHEEL 2022」に出演予定。BIG STEP大階段でのフリーライヴに抜擢されたことも、Layが注目されている存在であることを物語っている。今回は、そのLayはもちろん、SPEEDのプロデュースで知られ、サウンド面を中心にLayをプロデュースしている伊秩弘将も同席しての取材が実現。プロデューサーチームの考える展望、そしてLayの14歳の日常から理想とするアーティスト像までを聞いた。

Lay(提供:HIROMA Label)
Lay(提供:HIROMA Label)

初めてギターに触れたのは7歳

――お姉さんの影響で音楽に興味を持ったそうですが、どんな音楽環境で育ったんでしょうか?

Lay:両親は音楽は好きなんですけど、別に楽器をやってたとかじゃなくて、ただ好きって感じですね。お姉ちゃんがギターを始めた頃にLayもしたいなと思ってやりはじめました。

――初めてギター弾いたのは何歳ですか?

Lay:7歳ぐらいです。

――曲を作るようになったのは何歳ぐらいでしたか?

Lay:小学5、6年生ぐらいですかね。

――聴いていた音楽はどんなものでしたか?

Lay:ちょうどギターを始めた頃ぐらいから英語も始めて、特に好きになったのが洋楽だったんです。そこからいろんな洋楽を聴くようになりました。Carly Rae Jepsenさんだったり、最近はLady Gagaさんも好きです。

――そんな小学生の頃は、クラスの中でどんな子どもでしたか?

Lay:自分から意見を言ったりするのが好きなタイプだったんで、けっこう活発でしたね。修学旅行や林間学校に行くときも班長とかに立候補してました。

――中学生になって、今クラスの人たちはLayさんが音楽活動をしてるのは知ってるんですか?

Lay:知ってます。小学校からのメンバーと全然変わりなくそのまま行くタイプなんで。「頑張ってね」ってよく言われてます。

矢井田瞳のコーラス参加が活動のきっかけに

――音楽活動を始める経緯はどういうものだったんですか?

Lay:矢井田瞳さんが今年リリースされた「Everybody needs a smile」っていう曲のCMのコーラスに参加させていただいたことがきっかけで今につながってる感じですね。

伊秩弘将(以下、伊秩):ECCジュニアのCMの曲で、子どものコーラスっていうのがコンセプトなんですけど、コロナ禍になって曲はできているのにレコーディングが進まなくなって、古い付き合いのマネージメントの田口(幸夫)さんから「困ったよ、子どもはいないかな」って相談されたので、「自分のイベントに関西から三姉妹が来ますよ」と紹介しました。

――伊秩さんはどういう経緯でLayさんたち三姉妹と知り合ったんですか?

伊秩:もともと長女が僕のイベントに出ていて、そのうち妹がググッと成長してきて。去年の8月ぐらいにお姉ちゃんのバックで一回イベントに出てもらったときに、ギターがすごくカッコよかったんですよ。歌のグルーヴも良いし。

――お姉さんと妹さんは何歳なんでしょうか?

Lay:20歳と11歳です。

――20歳、14歳、11歳の三姉妹なんですね。今、家ではどんな音楽を聴いてるんでしょうか?

Lay: Alexaに「ちょっと流して」って言ったら、いろんな曲を流してくるじゃないですか。それを聴いて好きな曲も見つけたり。

――伊秩さんの手掛けた曲や矢井田瞳さんの曲も聴いてましたか?

Lay:聴いてます。伊秩さんの曲は、両親が好きで昔から車でかかってて、頭に残ってます。矢井田さんも、コーラス参加がキッカケで、この歳になって聴くようになって、すごいいいなって思って。「I'm here saying nothing」の英語ヴァージョンをMejaさんが歌ってて、その曲をLayもライヴでカヴァーさせてもらってるんです。

――英語は聞くのも話すのも得意なんですか?

Lay:どっちもある程度ってところなんで、自分が言いたいことがパッとはまだ出てこないんで、勉強中です。

自分をどうやって出していけるのかな

――Layさんが作詞して9月28日に配信リリースされた「Wanna be Breakin'」もほぼ英語ですが、音楽に関しては英語のほうが親しみがある感じでしょうか?

Lay:そうですね。ギターで弾いていくにあたって、日本の音楽と海外の音楽ってちょっと違うじゃないですか。自分は洋楽のほうが好きなのかなと思って、とりあえず好きなほうをやってみようと思って、今はそっちばっかりって感じですね。

――配信リリースや「MINAMI WHEEL」の話がご自身に来てどう思いましたか?

Lay:とってもうれしかったんですけど、自分の中で不安も大きくて。全然まだ発展途上なんで、まだ学んでいかなあかんこともたくさんあるので。でも、すごくうれしかったです。

――不安なこととは何でしょうか?

Lay:自分をどうやって出していけるのかなっていうのが大きいですね。歌いたいように歌えるかな、って感じです。

――それは今できてますか?

Lay:今は、作っていただいた曲を自分がどういうふうに楽しめるかなっていうことを考えてて。ライヴで歌うときも、Layが楽しくないと聴いてる側も楽しくないじゃないですか。だから自分がどういうふうに歌ったら一番楽しく歌えるかっていうのが最近よく考えることですね。

――普段のライヴは緊張しますか。

Lay:最近はあんまり緊張しなくなりました。でも、この間、名古屋のDIAMOND HALLで歌わせていただいたんですけど、Lay、大きい会場で歌うのが初めてで、会場入りしたときは「うわー」と思って。でも、リハーサルをしたらそんなに緊張しなくて、本番はいつものライヴより緊張してなかったです。楽しめたんでOKです。

――それは大物の証しなのでは?

Lay:わかんないです(笑)。

――ライヴではレザーのパンツを履いてるじゃないですか。あれは誰のアイデアなんですか?

Lay:あれは父が買ってくれたんです。

伊秩:かっこいい感じで行こうとして、「パキッと白か黒かで」と、こちらが提示しました。素材感までは言ってなかったですけど、革でも似合いますね。同世代の女の子たちとか、ちょっと下の女の子から「ああいうお姉ちゃんになりたい」って思ってほしいし、女の子をいっぱい取り込みたいなという思いがあります。

――プロデューサー目線として、同性の同世代や下の子を取り込みたいわけですね。

伊秩:本人から出てるものがピュアなんで、そのストレートな感じがそのまま伝わるといいなと思います。「Wanna be Breakin'」も本当は「Wow Wow Wow Wow」と一緒に歌いたくなるところがあるんだけども、コロナ禍なんでコール&レスポンスができないし、どういうふうにアプローチしていくかの模索になる時期ですね。本人的にはライヴで反応がないし、なかなか手応えを感じにくいんでしょうけども、ファンの方はすごく集中して見てるので、僕はなかなかの手応えを感じますね。

――Layさんの一番の魅力は何でしょうか?

伊秩:発信力と理解力。何かを言ったら、それをそのままやるんじゃなくて、自分の中にちゃんと入れて、自分の言葉や自分のグルーヴで返すんです。メロディーも、ちょっとフェイクが出てきたりとか、語尾が変わってたりとか、そういうところがすごいクリエィティヴなんです。ちゃんとLayの感じで出てる。そこが一番の魅力ですね。

Lay:無意識にやってる部分もあるんですけど、「それだけだったらライヴ感が薄いな」と思ったりしたら、より自分のグルーヴ感を出すように最近は頑張ってますね。

Lay(提供:HIROMA Label)
Lay(提供:HIROMA Label)

もっと音楽にハマりたい

――9月28日からは3回の配信リリースがスタートして、10月8日には「MINAMI WHEEL」の大舞台が待っています。今、どんな感覚で日々を過ごしてますか?

Lay:たくさんの方にLayの音楽を楽しんでもらうために、もっとLayが音楽にハマろうっていう気持ちでいますね。8月の誕生日にヘッドホンを買ってもらって、それでいろんな音楽を聴くようになったり、Layが「すごいな」と思う人を見つけたりとかして、最近すっごい楽しくて。自分の気持ちが暗くなったときに、もう一回しっかり音楽にハマってみたらすっごいテンションが上がったので、もっとLayが音楽にハマろうっていう気持ちで最近はいます。Layが知らなかったところに飛び込んでいく感じがすごい最近は楽しいです。「MINAMI WHEEL」も、緊張っていうよりかは「楽しんでやろう」って気持ちのほうが大きいですね。楽しみです。

――配信リリースでは、全国の知らない人にも自分の歌が届きますね。

Lay:すごい楽しみっていうのもあるんですけど、怖いなって気持ちもあります。でも、Layの音楽を聴いたみんなに、ちょっとでも気分転換とか希望を与えられたらなって思います。

――「Wanna be Breakin'」の歌詞は英語中心ですが、どこかで全編日本語詞になるタイミングもありうるんですか?

伊秩:歌がうまい子たちがいっぱいいて、みんな苦労してもなかなか頭ひとつ抜けられないなかで、まだ14歳でも勝てそうな要素として英詞を入れました。Layに試しに英詞を書いてもらったんだけど、すごく早くて。別にペラペラしゃべれるわけではないんですけど、英詞を書いてみたら本当に2、3日ぐらいでコンセプトの「Wanna be Breakin'」っていうテーマを理解して書いてきて。子どもたちもマスクの生活で、3年もライヴで「イエーイ!」って言う経験がないから、いつか脱しようぜっていう本人の同世代へのメッセージとして出てきた言葉たちで。歌詞にイノシシが出てくるんですけど、敵が来たら自分からガーッて行っちゃうのがイノシシなんですけど、あれって決して自分が強いわけじゃなくて臆病から来てるから、そういうところも含めてなかなか面白いなって。日本語に訳すとちょっとトゥー・マッチなところや重い部分、ちょっとディスっちゃってるところがあるんですけど、英語にしたほうがそれが発揮できるので、これは英語のほうが面白いなと。それを前面に出していながらも、ある日、日本語だけの歌詞をポンッて出したらめちゃめちゃインパクトがあるなとも考えてはいます。今回はロックっぽい曲ですけど、Layのひとつの発信として、今後はR&Bもあるだろうし。

Lay(提供:HIROMA Label)
Lay(提供:HIROMA Label)

――SNSもオープンしましたが、意識していることはありますか?

Lay:ないかもしれないです。

――じゃあ14歳のそのままの感覚で?

Lay:そうですね。

伊秩:そこは一番お願いしたいところなんです。今までは「上に行こう」っていう時代だったけど、これからは「横に広がる」っていう時代だと思うんですよ。じわじわ横に広がっていくようなことをやってくれればうれしいですね。

――目指しているのは、かつてのヒットチャートのような「上」ではないということでしょうか?

伊秩:結果的にそういうチャートに入っていくことはうれしいですけども、そこを目指すというよりも、いかに裾野を広げていくかっていう感じですね。Layのレーベルは「HIROMA Label」(ヒロマレーベル)っていうんですけど、僕らチームの願いとしては「広まっていきたいよね」っていうことなんです。どっかで足し算が掛け算になる瞬間が来るだろうし、でもそこまでは逆に遠回りしてもたくましくなってほしいです。

――Layさんには、理想のアーティスト像はあるでしょうか?

Lay:希望とかを与えたいっていうのはもちろんあるんですけど、それよりもLayの音楽を楽しんでほしいっていうのが一番にあって、たくさんの人に届けられたらなと思ってます。やっぱり、どんなことするにも楽しくないと続かないじゃないですか。楽しいっていうのが一番にないとやっていけないと思うし、そこからまた伝えたいメッセージっていうのは出てくるのかなと思ってるので、楽しくやっていきたいなと思います。

Lay関連サイトリンク集:

https://lit.link/lay821

Lay「Wanna be Breakin'」ジャケット(提供:HIROMA Label)
Lay「Wanna be Breakin'」ジャケット(提供:HIROMA Label)

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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