【札幌市中央区】ネルドリップの時代が来た?寿珈琲でゆるゆる時間を楽しむ。
突然ですが。
皆さんは、食べ物や飲み物を味わう時、おいしい、という基準はなんだと考えますか?
コスパ?
こだわり?
ガイドブックの評価?
私は、おいしいと感じる基準は、私たち自分たちの主観でしかないと感じています。そして、それは潜在的に、自分が今何を求めているのか、ではないかと思うのです。
例えば。おいしいワインってなんでしょうか?
テイスティングで風味がはっきりしたもの?それともいつものご飯によく合うワイン?
何を求めるかで価値観が変わるでしょう。
コーヒーも同じかなと思います。
試飲カップに向き合ってチェックシートをつけて行く価値観がメインなのか、それとも長居して時にはおしゃべりや書き物、頭の整理をするための時間を過ごすのに最適なコーヒーを求めるのか。
味覚は、人それぞれ。
その主観には自分のライフスタイルや経験が反応されているわけで、
「Dis-moi ce que tu manges : je te dirai ce que tu es.」
【汝が食べているものを言ってくれれば、汝がどんな人か当ててしんぜよう】
というブリア=サヴァランの言葉は、まさに至言だなと思うわけです。
私は珈琲店に、長居をしたくなってきた。
では私の趣味はといえば、最近変化がありました。
数年間、とてつもなく【浅煎りスペシャルティコーヒー】にハマって、東京やら関西でふらふらあちこちのコーヒースタンド行きましたが、最近はバタンと行かなくなりました。
そうではなくて、気に入った店でゆっくり飲みたい。長居したい。そうなってきました。
これは絶対、ガイドとともにライター活動を始めたからだと思います。
長居をしたくなると、書き物の邪魔にならない、冷めてもおいしいコーヒーを好むようになりました。
ちょうど良い美味しさのコーヒーを1杯、時には2杯飲んでリラックスしたり、打合せしたり、読書したりしたいなーということになります。
そうすると店内であまりゆるゆる過ごすことの出来ないスペシャルティコーヒーのスタンドより、ゆっくり過ごせる珈琲店と呼ばれるようなお店に行きたくなります。
そうなると、ネルドリップの出番となります。
札幌は、ネルドリップが発達しているかも。
そうしたゆっくりの時間を楽しむためのコーヒーの淹れ方として、ネルドリップを使う店が多い印象のある札幌。
かつて東京で流行った、コクテル堂系列のエイジングした深煎り豆を使うネルドリップのコーヒーを、今では大変メジャーなコーヒーショップとなった札幌のコーヒーショップチェーンが持ち帰り、それを発達させてきました。
札幌はおそらく、ゆっくり珈琲店で過ごしたい人が多いのではないでしょうか?
(一方、東京の忙しい街角では、たくさんのネルドリップのお店が消えてなくなりました。)
その札幌で多く残ったネルドリップの名門珈琲店のひとつである【寿珈琲】では、とてもユニークなコーヒーを淹れているので紹介します。
なぜ、ネルドリップか。
詳しい技術論は私も研究中ですが、
ネルフィルターは目が粗いのでコーヒー豆の中の旨みや油脂を抽出しやすく、
かつネルという厚めのフィルターを使うことにより蒸らしやスピードをコントロールしやすいのではないかと思っています。これは職人の腕次第でしょうが。
浅煎りスペシャルティコーヒーではメインのの淹れ方であるペーパードリップ(基本的に抽出速度はコントロールしにくい)などよりも、ネルドリップの方が職人による個性や細かいテクニックや感覚によって、味を調整しやすいのではないでしょうか?
つまり職人の個性が出やすいのがネルドリップであり、油脂や雑味さえもうまくコントロールして、まるでダゲレオタイプの写真の様に、良い意味でピントをコントロールさせることができるのではないでしょうか?
ネルドリップは、一定水準以上の豆であれば、熟練した職人であればかなりのコントロールが可能な淹れ方のようです。
そして基本的にはペーパードリップよりも油脂を含む豊かな味になるので、珈琲店でゆっくりするのには最適になるのだと感じています。まろやかで、冷たくなっても旨み成分が消えにくいので、まさに長居するのには最適?なのです。
この淹れ方が、東京よりもゆったりとした時間が流れている札幌で、街の文化とマッチし、独自に進化して、良い職人たちが育ち、生き残ったのだと思います。
エスプレッソマシーンやペーパーフィルターが、浅煎りスペシャルティコーヒーの、豆自体の個性を際立たせるのに良いストレートな抽出方法である、というのとは対照的です。
つまり、私がネルドリップのコーヒーを一時期にも増して好むようになってきたのは、珈琲店に求める機能が変わってきたのだと思います。
もう一度言います、珈琲店に長居したい。
寿珈琲の、ネルドリップの魅力。
というわけで、札幌ではゆるゆる珈琲店で過ごしたい人が多いのでネルドリップが定着したという推察をしているのですが、寿珈琲では、さらにこの店の個性として、ネルドリップにぴったりの深煎り文化を継承しつつ、最近はその中ではかなり浅めというか中深煎りに近い焙煎も使っているのが特徴と思います。
苦味よりもまるで森の中にいるような木の香りや焙煎香、後から旨味、そして甘味がやってきます。
まさに居心地良くなるコーヒーです。
ネルドリップの幅広いピントをうまく使いこなしている感じがします。
そして次の特徴として、ネルドリップに良くありがちなデミタスカップ、あるいはそれに準じた小さめのカップに出すのではなく、紅茶で出す様なカップで、並々とコーヒーを出してくれることです。
これは店主いわく、寒いゆえラーメン、石狩汁、スープカレーなど汁物が発達した札幌の風土が反映したかもしれない、とのこと。
さらに測定していませんが、温度はそんなに高くは提供されません。一口目から飲みやすく、熱いと感じることはなく、その香りが時間によって変化していきます。
また職人による淹れ方の違いも、人間性として許容しているのも面白い。店主だけではなく、熟練した個性派の職人たちの違いを感じるのも面白い。
というわけで、この寿珈琲の【ネルドリップを使った深すぎないコーヒー】の香りと旨み、そしてネル独特の油脂分のゆったりとした風味と職人技が、全力を上げて私にここで長居をしろ、と誘ってくれているのかもしれません。
スペシャルティコーヒーの魅力は否定しませんが、そもそも優秀なネルドリップのお店とは、求めるものや存在理由(レゾンデートル)がまるで違うなあと感じています。
結論として、ブリア=サヴァラン(彼はフランスにそれまでのトルコ式ではなくドリップコーヒーを広めた1人でもある)は私に対して、
【汝が今コーヒーに今求めているのは、ミシュレのようにコーヒー(カフェイン)飲用によりヨーロッパの戦争が増えたという考えとは真逆で、コーヒーによるリラックス作用を求めているのであるな。】
と答えてくれるかもしれません。
皆さんも、気候の良いうちに、ぜひ、自分に合った、長居できる居心地の良い珈琲店とコーヒーを探してみてはいかがでしょうか?
札幌のコーヒー文化を楽しみましょう!
★寿珈琲
住所:札幌市中央区南2条東1丁目1−6 M's2条横丁
営業時間などはInstagramでご確認ください。
公式Instagramは、こちら。