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米国で今度はゴリラが新型コロナに感染… 私たちの身近な動物たちは大丈夫なのか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:kazu218/イメージマート)

米国のカリフォルニア州のサンディエゴ動物園サファリパークのニシローランドゴリラ3頭が、新型コロナウイルスに感染しました。大型類人猿の感染が確認されたのはこれが初めてです。

ゴリラトラ、ライオン、ミンク、ユキヒョウ、イヌ、ネコに続き、新型コロナウイルスへの自然感染が確認された7番目の動物です。私たちが、ペットとして飼っている身近な動物は新型コロナウイルスへの感染状況がどうなっているのか見ていきましょう。

ゴリラが新型コロナウイルスに感染したときの症状は?

以前から、新型コロナウイルスは、主に人から人への感染なので、類人猿に感染しやすいと予測する研究結果が発表されていました。それが現実になりましたね。

1月6日に、感染した3頭のうち2頭がせき込み始めたため、動物園の職員はゴリラたちの便を採取し、カリフォルニア動物衛生・食品安全研究所に送った。検査の結果、研究所と米農務省の国立獣医学研究所が11日に感染を確認した。

ゴリラが新型コロナに感染した第7の動物に、すでにトラ、ライオン、ミンクも

ゴリラはせきなどの呼吸症状があります。感染経路は、無症状の職員からだそうです。

サンディエゴ動物園サファリパークでは、動物と触れ合う職員は全身防護服を着用するなど、厳格な感染予防策を講じているそうです。

動物園はもちろん、動物が多いので人から新型コロナウイルスを感染させないよう予防することは、重要ですね。

それでは、動物園ではなく身近な動物は新型コロナウイルスに感染しやすいのかを見ていきましょう。

身近な動物は新型コロナウイルスに感染しやすいのか

人の新型コロナウイルスは、爆発的に感染拡大をしています。私たちに身近な動物は新型コロナウイルスに感染するのかを見ていきましょう。

写真:ロイター/アフロ

飼い主が新型コロナウイルスに感染していると、猫が感染する可能性があります。そして、猫―猫同士で、感染(飛沫感染など)します。その上、幼猫の方が感染しやすいことがわかっています。症状が出ない場合(その場合でも、肺にダメージが残ります)もありますが、主に呼吸器症状(くしゃみ、鼻水、せきなど)があります。

「新型コロナウイルスに猫が感染後、無症状でも肺にダメージ 飼い主のすべきことは?」にも書いていますので、詳細は省略します。

フェレット

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

以前から飼い主がインフルエンザに感染するとフェレットが感染する可能性があることは知られています。フェレットのインフルエンザの症状は、人とよく似ていて呼吸器症状(くしゃみ、鼻水、せき)を起こし、悪化すると死亡することもあります。

そんなフェレットは、呼吸器ウイルス感染症の研究でモデル動物に用いられています。

その結果、フェレットは、新型コロナウイルスにも感染しやすいことが判明しました。新型コロナウイルスに感染したフェレットの症状は、発熱・気管支炎などを示しますが、インフルエンザウイルスほど症状が重篤化されにくいといわれています。

写真:Paylessimages/イメージマート

ビーグル犬に、新型コロナウイルスの感染実験を行った報告によりますと、他のビーグル犬はほとんど感染しませんでした。そして、症状がほとんど出ませんでした。

つまり犬は、猫やフェレットに比べて感染しにくいことがわかってきています。いまのところ、犬ー犬同士の感染も報告されていません。

豚、ニワトリ

中国の獣医学研究者が、猫、フェレット、犬、豚、ニワトリなどを対象に新型コロナウイルスの感染を研究しました。ビーグル犬と同じ方法で、豚、ニワトリの感染実験を行いました。豚、ニワトリはいまのところ新型コロナウイルスに感染しないといわれています。

飼い主のすべきこと

写真:PantherMedia/イメージマート

・なかなか難しいですが、飼い主が新型コロナウイルスに感染しないこと

ペットのお世話をする前後は、飼い主が手洗いをする

飼い主の体調が悪いときは、ペットのお世話は元気な人に代わってもらう

猫は、外に出さない(完全室内飼い)

猫を多頭飼育(個体密度が高いと感染のリスクが上がります)している場合は、猫同士で新型コロナウイルスに感染する可能性があるので部屋を分けて飼育する

ペットとの適当な距離を取る

まとめ

世界中で、新型コロナウイルスの感染が拡大しています。

そんな中、ヨーロッパや米国でも、多くのペットが飼われていますが、新型コロナウイルスに感染したという報告はまれにしかありません。そのことを頭に置いてくださいね。

ペットの中では、猫、犬、フェレットは、新型コロナウイルスの感染が報告されています。そのほとんどが、新型コロナウイルスに感染した飼い主から感染しています。その中でも犬は、猫やフェレットに比べて、新型コロナウイルスに感染することは、本当に稀です。犬同士の感染はありません。散歩中に他の犬に会っても犬からは感染はしません。

米国の動物園のゴリラが新型コロナウイルスに感染したというニュースが流れると飼い主は、「うちの子は、大丈夫かな?」と心配になると思います。新型コロナウイルスは少しずつわかってきたこともあります。飼い主は、ネット上のよくわからない情報に惑わされことなく、科学的なデータに基づいた知識をアップデートして、ペットたちを生涯飼育してください。いまやペットは家族の一員ですので、飼い主は、新型コロナウイルスに感染しないような行動をして、ペットを守りましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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