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ソニーのゲーム事業 PS5の出荷数は前年同期比減 ソフト出荷数も減 でも増収増益ーーなぜ?

河村鳴紘サブカル専門ライター
プレイステーション5=SIE提供

 ソニーグループの2025年3月期(2024年度)の第1四半期(4~6月)連結決算が発表されました。ゲーム事業(ゲーム&ネットワークサービス分野)は、増収増益。しかしPS5本体、ソフト(PS4含む)の出荷数は、いずれも前年同期と比べて下回っています。なぜでしょう?

 ソニーグループの売上高は約3兆116億円(前年同期比1.6%増)、本業のもうけを示す営業利益は約2791億円(同10.3%増)で増収増益。世間的には、米メディア大手「パラマウント・グローバル」の買収断念に注目が集まりました。

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 そしてグループの3割前後の売上高・営業利益を占める、稼ぎ頭のゲーム事業ですが、売上高は約8649億円(前年同期比12%増)、営業利益は約652億円(同33%増)。為替の影響だけで売上高で855億円、営業利益で14億円のプラス効果がありました。ただし営業利益の大幅像を考えると、為替以外の要因があるわけです。

 PS5本体の四半期の出荷数は約240万台で、前年同期と比べて約90万台減少。ゲームソフトの出荷数も約600万本で、約60万本減少。しかし、ゲームソフトの売上高だけを見ると約4864億円で、前年同期から約2割も増えています。理由は、ゲーム内通貨やアイテム、拡張パッケージなどの「アドオンコンテンツ」が好調で、前年同期と比べて800億円も増加したためです。

 さらに今後に期待できる分野もあります。プレイステーション・プラットフォーム以外での売り上げを指す「Other Software」で、売上高は約331億円でした。規模は小さいながらも、前年同期から2倍以上増えています。今後は、PCやニンテンドースイッチでも有力ソフト(レゴ ホライゾン アドベンチャー)が出てくるわけで、引き続き注目したいところです。

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 最近ゲームファンの間でうわさになっているPS5の強化版も、仮に出れば売れるでしょう。ですが、ビジネスの先を考えると、「Other Software」の動向の方が大きな意味を持つかもしれません。

 そして侮れないのは、有料サービス「PlayStation Plus」と広告収入を指す「ネットワーク」でしょうか。四半期の売上高は約1593億円で、前年同期と比べて3割近く増加。このまま順調に行けば年間で6000億円以上を稼ぐ見通しです(前年度=2023年度は約5455億円)。ゲームソフト抜きで、これだけ稼げるのは強みになります。

 ヒット作の有無で業績が大きく変動するのが、ゲームビジネスの特徴ですが、経営的には不安定要因にもなりえます。しかし「ネットワーク」のビジネスは安定している分、その“振れ”を軽減してくれるのが強みです。なお通期(2024年度)の業績予想も上方修正(売上高4兆3200億円、営業利益3200億円)しています。

 気になるのは、春に発表したゲーム事業のリストラが、中長期的にどう影響するかでしょう。コスト削減はできるにしても、将来的なゲームソフトの開発に悪い影響がなければよいのですが。注視したいと思います。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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