最新の核融合実験で人類初の偉業達成!生産エネルギーが投入エネルギーを上回る
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「最新の核融合実験で史上初の快挙を達成」というテーマで動画をお送りしていきます。
アメリカのローレンス・リバモア国立研究所は今月12月13日、国立点火施設(NIF)での実験によって核融合反応から大量のエネルギー生み出すことに成功し、人類初の偉業を達成したと発表しました。
今回はそんな話題を解説します。
●核融合反応とは?
まず簡単に核融合反応の仕組みを説明していきます。
核融合反応とは、物質を構成する原子核同士が衝突し、より大きな原子核が形成される反応のことです。
原子核には陽子や中性子が含まれています。
陽子は+の電荷をおびているため、原子核同士が接近するとクーロン力の反発が起き、簡単にはくっついて融合することができません。
このクーロン力の反発をかいくぐって核融合を起こすためには、原子核自体が非常に高速で移動していて高いエネルギーを持っている、つまり超高温の環境である必要があります。
さらに激しく飛び交う原子核を狭い空間にとどめておかないと衝突が起きないので、非常に高い圧力も必要になります。
このような超高温・超高圧の条件が揃うと、核融合反応が起こります。
太陽のように自ら光輝く天体である「恒星」は、地球の約318倍重い木星のさらに80倍程度の質量を少なくとも持っているため、中心部が強大な重力で圧縮され、核融合が起こるほどの高温・高圧な環境が実現しています。
核融合反応が起こると、質量の一部がエネルギーに変換され、膨大なエネルギーが生成されます。
そのため恒星はあのようにとてつもないエネルギーを放ち続けています。
また、質量が大きい恒星ほど中心の温度と圧力が高くなり、核融合が激しくなるため、放出エネルギーも大きくなります。
○核分裂との違い
原子力発電にも用いられている「核分裂反応」は、大きな原子核がより小さな原子核に分裂する反応なので、今回の主題である核融合とは反対の反応です。
自然界ではより安定な方に反応が進んでいきますが、最も安定な原子核は陽子が26個含まれた「鉄」です。
そのため鉄より小さい原子核は核融合して、鉄より大きい原子核は核分裂して、最終的に鉄に向かっていきます。
特に核分裂に絡むような巨大な原子核は、すぐに壊れて高エネルギーの粒子を放射する「放射性物質」が多いです。
原子力発電は大量の放射性物質を扱うため、その安全性が問題となることも少なくありません。
一方核融合は発生条件が厳しいものの、より効率的にエネルギーを取り出せる上、高エネルギー放射性物質を生成しにくい比較的クリーンな現象なので、人類はこの核融合をコントロールすべく、様々な研究を行ってきました。
●核融合実験で世界初の偉業を達成
そんな中、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所は今月12月13日、国立点火施設(NIF)での実験によって核融合反応から大量のエネルギー生み出すことに成功し、人類初の偉業を達成したと発表しました。
○NIFの仕組み
NIFはサッカー競技場3面分の大きさの巨大なレーザー実験装置です。研究チームは、装置内に配置された192本のレーザー光線を微小な一点に集中させ爆発的なエネルギーを生成しました。
周囲からレーザー光線を当てることで核融合を起こす物質の塊を非常に狭い領域に圧縮することができます。
その領域の大きさは約0.03ミリメートルで、人間の髪の毛の太さと同程度です。
物体がその場所に留まろうとする慣性のために、圧縮した燃料はほんの一瞬だけ高密度の状態を保ちます。
そこでこの方式は「慣性閉じ込め方式」と呼ばれています。
NIFでは、陽子1つに加えて中性子1つを持つ「重水素」と、中性子2つを持つ「三重水素」に、超高出力のレーザーを照射する慣性閉じ込め方式で、核融合での発電を実現しようと試みられてきました。
○何を達成したのか?
NIFの最新の実験では、2.05MJのエネルギーのレーザーが投入され、それに対してなんと3.15MJのエネルギーが核融合によって得られたそうです。
このように実際に核融合を起こすために投入されたエネルギーを、実際に核融合で生成されたエネルギーが上回ったのは、今回が史上初めてとのことです。
それが実際に達成されたのは、本当に目覚ましい進歩と言えます。
核融合で発生したエネルギーによって核融合の継続に必要な条件を保ち、追加の過熱をしなくても勝手に核融合が継続して起こるようになる条件は、「自己点火条件」といいます。
今回エネルギー生成量が投入量を上回ったことは、その何倍もの効率でのエネルギー生産、最終的には自己点火条件の達成に向けた偉大な進歩となります。
今後さらに核融合の効率が高まり、自己点火条件に達せば、飛躍的に人類のエネルギー問題が解決されるかもしれません。
●宇宙の極限環境を実験室で再現
極限的な密度・温度・圧力を作りだすNIFはまったく新しい未踏の科学の最前線を切り開きます。
それによって「実験室宇宙物理学」という新しい学問分野が誕生しています。
NIFは従来の実験室では不可能と思われていた極限状態を作りだすことができます。
その設計上、一千億気圧の圧力、1億度以上の温度、1000g/cm^3の密度が実現可能です。
このような極限環境は惑星や、惑星より重い褐色矮星、さらにはもっと重い恒星の内部に匹敵します。
そのため、NIFの実験によってそのような場所で何が起きているのかを調べることが可能になります。
さらに、通常の恒星よりも高密度な天体である「白色矮星」の性質を理解するのにも役立つと期待されています。
白色矮星とは、太陽の8倍未満の質量を持つ小中規模の恒星が進化の果てに到達する最終状態です。
例えば地球から最も近くにある白色矮星シリウスBは、地球とほぼ同等の大きさを持ちながらも、その質量は実に地球の30万倍にもなります。
そんな極端すぎる環境を持った白色矮星では、私たちの住む地球上の環境とは異なる状態で、物質が存在していると考えられています。
今後さらに技術が発展し、宇宙のより厳しい環境が再現できたり、安定した核融合発電が実現されるのが楽しみです。