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ポルノではない「普通のセックス」をノルウェー国営放送局が放送

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
つくられていない、リアルな身体やセックスなどを考える番組開始 Photo:NRK

ネットポルノで見るセックスは、「普通のセックス」ではない。演技が入った不自然なセックスを真似したり、俳優たちのつくられた身体を自分の身体と比べる必要はない。

ノルウェー国営放送局NRKは、セックスに興味のある若者たちが、誰にも相談できずにネットポルノを「教科書」にしていることはおかしいとし、一般市民の普通のセックスを放送した。

『リーネが、からだをなおす』という番組では、多種多様なサイズや形の身体や性器など、若者が悩むタブーを特集。

現地では有名な芸能人、ピンク色のヘアスタイルが特徴的なリーネさんが司会をしている。

今年の夏、番組の詳細が公になる前に、「NRKがカメラ前でセックスするカップルを一般募集している!」と話題を集めていた。

そのセックスとオナニーを特集した回は今週放送された。

大学生のイングリさん(20)とアクセルさん(20)は、自宅の部屋でのセックスをカメラ前で公開。

「ポルノ産業は若者に虚像のセックスと身体を見せている。自分たちに何かできることがあるなら協力したかった」と、局の募集に応募した40組の1組だった。

NRKの記事でアクセルさんは、自分は小学生の時からポルノを見て育ち、自分のペニスは小さいものだと思い込んでいたと語る。「ポルノ映画のようにセックスしないといけないのか?無理だ!」と思っていたそうだ。

アクセルさんは、母親に「ポルノはちゃんとしたセックスじゃないと、覚えておきなさい」と言われたそうだ。

イングリさんは、「本当のセックスは、ポルノほど暴力的ではない」と話す。

メディア管理局によると、ノルウェーの中学生の20%は週に最低でも1回はポルノを見ているとされる。

番組は15才以上向けの現代のネット時代を生きる若者。

SNSやコメント欄では様々な反応がある。「いい番組を作っているね!」と好意的な声もあれば、「みんな違うのだから、何がいいかをテレビ局が決めないで」、「もっといろいろなセックスがあるよ。これだけが普通のセックスではないよ」と批判する声も。一方で、批判する人の中には番組のターゲットグループから外れている大人も多い。

現代の若者はインターネットと育ち、SNSでの人間関係、ネットからの溢れる情報に囲まれ、今の大人たちが体験しなかった種類のストレスにさらされているとされる。ノルウェー国営放送局は、このようなネット時代に生きる若者をターゲットに、以前からあえて議論を醸す番組を提供する傾向がある。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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