ドラマ『スカム』終了、ノルウェー首相も絶賛、世界中から「ありがとう」の言葉が届く

口コミで世界中でファンを増やした『SKAM』 Photo: NRK

24日、ノルウェーの高校生ドラマ『SKAM』が最終回を迎えた。

4シーズンに渡り、異なる高校生たちが主人公となった作品は、ノルウェーの若者向けに国営放送局NRKによって低予算で作られた。

若者の悩みや現代社会のリアルを鮮明に描き出していること、また公式HPで毎日少しずつストーリーが更新される作りなどが、これまでのテレビの常識を覆したとして、世界各国でファンを増やした。

未編集で鉄道などの車窓シーンを延々と放送し続ける「スローテレビ」も、「テレビの当たり前を変えた」として国際的に評価されていたが、NRKによるスカムはそれ以上の成功をおさめた。「ノルウェーテレビの過去最大の成功」と称えられ、テレビ革命、北欧各国の文化交流などにおいて数々の賞が授与された。

最終話が放送された土曜部から日曜日の夜までには、20万人が視聴。日曜夜までにドラマの公式HPで最終話を見た人は16万2千人。1週間分をまとめた最終エピソードをNRKの公式HPで視聴した人数は3万3千人とNRKは発表。後からドラマをネットで視聴する人も多いため、視聴者数はこれからも上がるとみられている。ノルウェーの人口は520万人。

スカムはこれまで、恋愛、同性愛、宗教、レイプ、いじめ、女子高生が抱える外見へのコンプレックス、SNSと切っても切れない日常生活など、ノルウェーの若者が現実でぶつかる社会問題をいくつも取り上げた。一部の放送回は政治家、警察、同性愛者団体などに絶賛される。

ノルウェー在住の高校生をターゲットにしたはずのネットドラマだったが、世代や国籍を問わず、国境を越えてファンを増やした。

国外に住むファンたちはノルウェー語を一生懸命に理解しようと試み、字幕付きの動画がネットに溢れる。FacebookやTwitterでは世界中のファンたちが交流しあい、スカムワールドが築き上げられていた。

ドラマは「教材としても最適だ」と指摘されており、高校では試験問題のテーマとなり、オスロ大学ではメディアや宗教の学科で分析されることになった。

シーズン4ではイスラム教徒である女子高生サナが主役に。人気の登場人物で、高い視聴率を記録することが期待されていたが、これまでのシリーズと比較すると単調な流れだとして、一時ファンはドラマから離れる時期もあった。

一方で、イスラム教徒がドラマの主人公になることがなかったノルウェーでは、宗教理解のきっかけと、ムスリムとして暮らす現地の人々にとってロールモデルとなるようにという思いが込められた。サナ役の女性イマ―ン・メスキニ(Iman Meskini)は自身もムスリムであり、ドラマをきっかけに脅迫を受けることもあった。

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最終回が近づいた最後の2週間では、これまでの登場人物たちが集合し、今まで主役とならなかったキャラクターにも光が当てられた。

「時間がなくて全部は見ていないけれど、ドラマは見ていました」とノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相はNRKに答える。「さまざまな背景の人々が暮らす国で、ノルウェー社会とはどういうものかを、人々が記憶にとどめることになった作品」と述べた。また、首相は自身のFacebookでも「スカムは終わりました。リアルな問題提起をしたノルウェーの若者文化。私たちの国では、若い人々はそれぞれが異なった背景をもっています。みんなに居場所がある社会でありましょう」とドラマのこれまでの貢献を絶賛した。

先日発売されたばかりのノルウェー誌Kapitalでは、「ノルウェーで最も影響力がある女性」に、スカムの産みの親であるユリエ・アンデム監督(34)が100位に輝いた。

最終回を受けて、SNSなどには「ありがとうスカム」 #ThankYouSKAM というハッシュタグが溢れ続けた。

筆者はオスロ大学と大学院でメディア学を専攻していたため、デジタル化するメディア、SNSの使用方法、社会議論の進め方、国営放送局NRKの役割を分析をするうえで、このドラマは見ごたえがあった。

日本のNHKが放送記念日特集「今 テレビはどう見られているか」で、スカムをテーマにオスロに撮影にこられた時は、一部でお手伝いもさせていただいた。テレビの楽しみ方を考え直すきっかけとして、多くの作り手がこのドラマから参考になることを見出せるのではないかと感じる。

また、「北欧」といえば理想的なライフスタイルの国々として見られやすいが、日本のメディアなどがこれまであまり伝えてこなかった「社会問題や悩み」でこのドラマは溢れている。「北欧」や、フィヨルドやオーロラのイメージで偏りがちな「ノルウェー」の印象を大きく変えるのではないかと思う。

「北欧」という世界観に興味がある方は、ひとつの資料として、このドラマをチェックしてみるとよいかもしれない。

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Text: Asaki Abumi