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ノルウェー人気インスタグラマー、女性の見た目重視の社会にNO!「価値を決めるのはあなた自身」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
話題のインスタグラムの女性とは? Photo: @ulrikkefalch

「最近、インスタグラムに疲れてきた」、「SNSにはキラキラした写真が多くて、いいなぁとは思うけれど、なんだか疲れる」、「女性の理想像の押し付けが多くて、加工写真ばかりに疑問を感じる」。

そんなことを感じていたら、ノルウェーで今話題となっている女性、ウルリッケ・ファルクさんのアカウント(Ulrikke Falch)をチェックしてみては?英語の勉強にもなります。

ファルクさんは、ノルウェーで爆発的な人気を誇った高校生ドラマ『スカム』で、ヴィルデ役を演じた女性。

当初は、恋愛に夢中な女子高生ヴィルデの印象だけが強かったのですが、ファルクさんの個人アカウントが「見たほうがいい!」と次第に話題となりました。

ドラマが終わる頃には、すでにヴィルデ役としてよりも、ファルクさん個人に注目が集まるように。彼女の言動は、ノルウェーの新聞紙やテレビなどで何度も紹介されています。

彼女が疑問視しているのは、現代社会の問題、若者が抱える悩み。そして、大企業やメディアなどが若い女性たちに押し付けてくる「完璧な女性像」、「男性のための女性像」、「商品としての女性像」、「完璧な毎日」など。

ファルクさんは、すっぴんで顔写真を投稿、お腹やお尻のふくよかなお肉は隠さずに、いつもの自分をみんなに公開。

ベッドの中でダラダラして、フォトショップで加工されたモデルの写真と自分の写真を比べて、「現実、こんな風になんてなれないけどね!」と、「社会が提示してくる非現実的な女性像なんか、気にすることないよ」とメッセージを投げかけます。

話題となった投稿は数多いのですが、ひとつがこちら。

「かわいいお姫様」の定義を自分たちで決めよう

Instagram @ulrikkefalch
Instagram @ulrikkefalch

みんな、私と一緒にとあるプロジェクトをしない?私はあなたに、自分のことを大事にしてもらいたいの。#prettyprincess と写真にハッシュタグを付けて投稿して、あなたにとって「女の子であることは、どういうことか」を私に教えて。

わたしは#prettyprincess。だって私は面白くて、強いから。

あなたはどう? 

私たちで“かわいいお姫様”の本当の意味を定義しようよ

出典:Instagram @ulrikkefalch

インスタグラムで#prettyprincessと検索すると、バービー人形やミスコンに参加する女の子の写真などがでてきがち。でも、社会が求める女性像になろうとするのではなく、自分たちらしくあり、自分をもっと大事にしよう、インスタに溢れた理想像のイメージをみんなで変えようと提案しました。この企画には多くのフォロワーが参加。

レイプされた女性を責める社会って変

次はこちら。女性がレイプされた時、悪いのはレイプした人でしょうか。それとも薄着で化粧をして、相手を誘惑したかもしれない女性でしょうか。世間や社会は、「レイプされた女性にも責任があった」と考えることにエネルギーを費やすのではなく、彼女たちをサポートして信じるべきではないでしょうか。

Instagram @ulrikkefalch
Instagram @ulrikkefalch

「こんな社会の傾向はまるでジョークみたい。被害者をそのように扱うひどい社会を、私はこうしてからかいます」。

動画でどんどん洋服を着て肌を隠す彼女に、動画の「社会の声」はこう語りかけます。

レイプをさける方法。おっぱいを隠すために、スポーツブラをしましょう。それによって、セックスしたくないのだと相手に教えることができます。肌を隠すために服をたくさん着ましょう。できるだけ体臭がきつい人でいましょう。注目はできるだけ集めないように。レイプされたら、あなたに責任があるのですから

出典:Instagram @ulrikkefalch

Instagram @ulrikkefalch
Instagram @ulrikkefalch

まるで集団レイプみたいね。こういう業界が「何が普通か」を定義してくることに気を付けて。メディアに隠れている力関係に気を付けて

出典:Instagram @ulrikkefalch

理想と現実 Instagram @ulrikkefalch
理想と現実 Instagram @ulrikkefalch
これは力強い脚 Instagram @ulrikkefalch
これは力強い脚 Instagram @ulrikkefalch

子どもの頃に、馬みたいな脚だっていじめられた。今、私はこの脚をライオンの脚って呼んでるの。強くてパワフルなのよ

出典:Instagram @ulrikkefalch

良妻賢母となる方法を彼女に教えてあげよう

Instagram @ulrikkefalch
Instagram @ulrikkefalch

社会からの言葉「彼女に、優しい女の子で良妻賢母である方法を教えてあげよう。彼女にどう成功できるかを教えてあげよう。でも上司のような自立した女性ではないようにと」

出典:Instagram @ulrikkefalch

話題となったポストイット運動、自分たちを褒めあおう

Instagram @ulrikkefalch
Instagram @ulrikkefalch

みなさんをポストイット運動にご招待します!私たちの自尊心に影響を与える商業界やメディアについて考えるために。身体についてポジティブなことを書いたメッセージをポストイットに書いて、いろいろな所に貼ってみて! 写真に #postitgeriljaen  とハッシュタグをつけてね

出典:Instagram @ulrikkefalch

このポストイット運動はノルウェー国外でも話題となり、他国へと広まりました。ノルウェーの次期首相候補であるストーレ労働党党首も参加!

摂食障害に悩んでいたことを語る

ドラマ『スカム』のヴィルデと、ファルクさんには共通点があります。ふたりとも摂食障害に悩んでいたのです。

ノルウェー国営放送局のトークショー、3月に放送されたLindmoでファルクさんは当時のことを振り返ります。

「もっとよりよい自分になりたいと思っていて、それに似合うプロジェクトを探していました。結果は、自分の中身ではなくて、自分の外見にこだわること。体重がどれだけ減ったかを他の人に見せて、病人のようになり、それを誇りに思っていました。数年語に、身体に痛みを覚え始めて、学校に行けなくなりました。その時に、もうやめようと思えたのです」。

「今の社会には、恋愛や学校などで色々なストレスが交錯しています。努力すれば、もっとよくなれると教えられます」。

「頑張らなければいけない」と頭に叩き込まれる環境に、ファルクさんは気を付けなければいけないと話し、インスタグラムでの投稿の理由を話しました。

「私たちはなりたいと思う人間像を見ます。でも私は、ありのままの私たちの写真を届けたいです」

「外見は、私たちの価値を決めない。私たちが決めるの」 @ulrikkefalch
「外見は、私たちの価値を決めない。私たちが決めるの」 @ulrikkefalch

※ウルリッケ・ファルクさん側から許可を得て、インスタグラムのアカウント@ulrikkefalchから写真を掲載しました。

All photos credit to @ulrikkefalch

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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