広告非表示の「YouTube Premium」が拡大しても広告事業は伸び続ける?
日本で18歳以上の月間利用者数が6900万人に成長したYouTube。運営元のグーグルは広告事業に注力する一方で、広告非表示をうたう有料サービス「YouTube Premium」の拡大にも余念がありません。なぜ矛盾したことをしているのでしょうか。
10月6日にグーグルは広告業界向けのイベント「Brandcast JAPAN 2021」を開催し、YouTube広告の最新動向を発表しました。
その中でグーグルは、ニールセンによる調査として「YouTubeの広告はテレビ広告より3.3倍、効果が高い」とのデータを示しました。これは2017年から2020年の間に、71の消費財ブランドにおける売上増分効果が平均3.3倍、YouTubeのほうが高かったというものです。
最近のトレンドとしてはテレビ画面でインターネット動画を見る「コネクテッドテレビ」を挙げています。日本の利用者は2021年3月時点で2000万人以上。最近ではテレビタレントのYouTube参入が相次ぐ中、3分の1以上の人が「YouTubeはテレビ」と考えているなど、テレビとYouTubeの境目はなくなりつつあります。
そこで注目されるのがコネクテッドテレビ向けの広告です。テレビ画面に表示された広告のURLをスマホに送る機能や、他社の動画配信サービスの広告枠にも配信できる「ディスプレイ&ビデオ360」をコネクテッドテレビに対応させるなど、グーグルは新機能を発表しています(YouTube Advertisersによる動画)。
Premiumが拡大、しかしYouTube全体も拡大中
このようにグーグルがYouTubeの広告事業に注力しているのは分かりましたが、そうなると気になってくるのが有料プラン「YouTube Premium」との関係です。
月額1180円を支払って加入すると、動画再生時に広告が一切表示されなくなるほか、動画のオフライン再生、バックグラウンド再生、聞き放題の音楽サービスも利用できます。日本での契約数は非公表ですが、全世界では5000万人としています。
筆者の仕事でもYouTube動画をチェックする機会が増えているのですが、YouTube Premiumは非常に快適です。広告で中断されるストレスがなく、つい多くの動画を見てしまう人も多いのではないでしょうか。
そして注目すべきは、グーグル自身も「広告なしで動画が途切れない」とアピールしている点です(YouTube Japan 公式チャンネルの動画)。一見したところ矛盾したメッセージに感じますが、グーグルは「ユーザー様に選択肢があることが重要だ」と説明します。
「多くの場合、いますぐに広告の視聴者数が大きく減るとはまったく考えていません。YouTube Premiumも、YouTube全体も、広告視聴で見ている方も非常に伸びています」(グーグル YouTube Ads Marketing統括の中村全信氏)
広告事業は景気に左右される面が大きく、2020年にはコロナ禍で売上が低迷した時期もありました。広告の価値を高めつつも、有料のサブスクで安定収益を確保したいというのがグーグルの思惑でしょうか。