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地球はなぜこんなに暑いのか #専門家のまとめ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:イメージマート)

「温暖化」ならぬ「沸騰化」と形容されるほど、地球は12万年間さかのぼっても類を見ない高温に直面しています。

地球の平均気温は昨年6月から12か月連続で各月の最高気温を更新し、今後7月も8月もこれまでの記録を塗り替えると予想されています。しかも、その気温上昇のペースが専門家も驚くほどの規模なのです。

その要因としてこれまで続いていたエルニーニョや、人為起源の温暖化の影響がよく挙げられますが、意外なことに大気汚染対策が関わっているとの指摘もあります。これに関する記事を紹介したいと思います。

ココがポイント

▼2020年に船舶からの二酸化硫黄排出量が8割削減されたことが、大気を温めている可能性

・気候変動:船舶用燃料油の硫黄含有量の上限引き下げが海洋上の大気の温暖化に関連している (ネイチャーアジア)

▼二酸化硫黄の量を減らしたことで太陽光の反射が減り温暖化を加速させた可能性

・大気汚染の減少で温暖化が加速、解決策は地球工学? (MIT テクノロジーレビュー)

▼船舶が低硫黄燃料に変えたことで「航跡雲」が減少し温暖化が進行

・船の排ガス規制で温暖化が進む!? 鍵は「航跡雲」の減少にあり:研究結果 (Wired)

エキスパートの補足・見解

大気汚染自体は呼吸器疾患を引き起こし、早産のリスクを高めたり、寿命を縮めたりする恐れがあることが知られています。

迷惑一辺倒と思われている汚染物質ですが、その実、太陽光を反射させ地球を冷やす効果も持っています。空気の浄化という目的で急に取り除かれたため、地球は一気に加熱してしまったのではないかというわけです。

良かれと思ってしたことが、一方では望ましくない結果をもたらしてしまったということのようです。人間が引き起こした環境問題と温暖化問題は、危険なパラドックスをはらんでいます。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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