イドリブ県でトルコ軍を狙ったのはシリア軍ではなくロシア軍?!…シリア軍はアレッポ市北西を完全制圧
イドリブ県でトルコ軍を狙ったのは実はロシア軍戦闘機
トルコのイスラーム主義系日刊紙『イェニ・アキト』(2月16日付)は、10日にイドリブ県のタフタナーズ軍事基地でトルコ軍の車列が攻撃を受けた事件に関して、シリア軍地上部隊の砲撃ではなく、ロシア軍戦闘機の爆撃によるものだったと伝えた。
トルコ国防省は、シリア軍の砲撃で兵士5人が死亡、これに対する報復として、シリア政府側の標的115カ所を攻撃、戦車などを破壊し101人を殺害したと発表していた。
しかし、トルコ軍筋によると、被害の規模、攻撃発生時のレーダーの記録を調査した結果、攻撃はロシア軍戦闘機によるものだったことが確認されたという。
同トルコ軍筋は「攻撃の背後にロシアがいるという事実は、現下の戦略的状況を踏まえて公表できなかった。それゆえトルコ国防省はシリア軍による砲撃だと発表したのだ」と述べている。
シリア軍はアレッポ市北西を完全制圧、同市を反体制派の砲撃から解放
アレッポ県では、国営のシリア・アラブ通信(SANA)や英国で活動する反体制系のシリア人権監視団によると、シャーム解放機構、国民解放戦線(国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室が16日、シリア・ロシア軍の爆撃・砲撃による攻勢を受けて、アレッポ市北西の支配地域から撤退、シリア軍が同地を完全制圧した。
シリア軍が完全制圧したいのは以下の町村地区:
マアーッラト・アルティーク村、フライターン市、アナダーン市、ハイヤーン町、バヤーヌーン町、バービース村、カフルダーイル村、フータ村、ジャワーニーヤ村、フータト・バッラーニーヤ村、バシュナトラ村、バシュカーティーン村、カイルーン村、カフルハムラ村、シュワイフナ村、ナビー・ナアマーン丘、バイト・ガーズィー村、、ムサイビーン丘、カフルダーイル村アレッポ市北西部郊外の第2電力協会地区、製パン協会地区、アラブ連合協会地区、サマーフ協会地区、アーザール協会地区、マジーナ村、ファンナール協会地区、ハーディー協会地区、キリキア協会地区、退役軍人協会地区、ライラムーン地区、ダフラト・アブドゥラッブフ地区、裁判所地区、ナアナーイー住宅地区、ザフラー地区。
これらの町村地区は、アレッポ市北西に突出していた反体制派の支配地で、15日にシリア・ロシア軍が包囲・制圧に向けた攻撃を本格化させていた。
アレッポ市は、2012年半ば以降、反体制派にその一部を掌握され、2016年12月には東部地区がシリア政府によって奪還されたが、北部および西部郊外では反体制派の支配が続いていた。
今回の戦果によって、アレッポ市はその全域がシリア政府の支配下に復帰した。
シリア軍はトルコ軍監視所を砲撃、包囲
シリア軍はまた、アレッポ市北西のシャイフ・アキール山に設置されているトルコ軍監視所を砲撃し、トルコ軍兵士複数人が負傷した。
また、アナダーン市制圧により、シリア軍は同市に設置されているトルコ軍監視所を包囲した。
国内避難民は100万人を超える
シリア人権監視団は、2019年12月初め以降のイドリブ県、アレッポ県へのシリア・ロシア軍の進攻に伴う戦闘で国内避難民(IDPs)となった住民は、1,005,000人に達していると発表した。
うち、1月半ば以降IDPsとなった住民は62万人以上、1月24日以降は41万人以上に達しているという。
なお、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は14日、2019年12月1日以降の戦闘で80万人以上がIDPsとなり、うち少なくとも60%が子どもだと発表している。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)