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スーパーの惣菜が売れない!食環境の劇的な変化から?今後は・・・

池田恵里フードジャーナリスト
コンビニから一気にスーパーに流れているが惣菜は売上が芳しくない(写真:ロイター/アフロ)

「惣菜が売れない」スーパーの従業員からの声

スーパーの従業員の多くの声。

「生鮮はよろしいですけど、惣菜が売れないです」

「寿司もいまいち・・・」

といった声。

新型コロナ感染拡大後、スーパーでは買いだめで押し寄せた顧客に対応すべく、本部には従業員がいない状況が続き、現場での消毒、ばら売りをパックする作業などに追われていた。

スーパーの売上は良好

日本スーパーマーケット協会など食品スーパー業界3団体が5月21日に発表した4月の全国食品スーパー売上高(速報値、既存店ベース)。

前年同月比10.7%増と、前年実績を3カ月連続で上回った。

増加率は調査を開始した2010年4月以降で最高となった。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府による緊急事態宣言と外出自粛要請で惣菜は4.7%減った。

外出自粛で花見などの行楽需要が少なかった。

在宅勤務の拡大で自炊が増え、仕事帰りの購入が減少した。

保存ができる食品を中心に買い物1回あたりの買い上げ点数が増えた。全店の売上高は12.3%増の9830億円だった。

流通ニュースで全国主要スーパーマーケット23社の中で2020年4月の営業概況を抜粋しているのが以下のとおり。

マックスバリュ関東21.9%増、ベルク21.3%増、サミット20.4%増、ヤオコー18.8%増、いなげや18.5%増、マックスバリュ九州15.3%増、ライフコーポレーション15.0%増となり16社が2ケタ増となっている。

コンビニの惣菜が芳しくない、スーパーに流れているのか

一方、コンビニを見ると、売上低迷となっている。

これまで「近くて便利」ということから、2011年の震災後、一気にインフラとしての役割を果たしていたコンビニ。

しかしコロナでは通用しなかった。

都市部ではリモートワークから、客数の落ち込みがひどく、郊外において、何とかこれまで売上を挽回しようと試みた。

しかし、全体の売上はダウンしたのだ。コンビニの店舗内における約2500アイテムでは、顧客のまとめ買いを満たすだけの品揃えにならなかったのだ。そしてこれらの顧客は、一気にスーパーに押し寄せたのである。

「近くて便利」から、「生鮮三品が揃っている」スーパーが支持された。

3月の売上高が激減したコンビニ「大都市不振」で曲がり角に

日刊ゲンダイ4月24日

商品別売上高では、おにぎりや弁当などの日配食品が6・6%減、チケットなどサービス関係が19・8%減で、ともに過去最大のマイナス。非食品はマスクやトイレットペーパーなど衛生商品が売れ行き好調なものの、全体では3・3%減少した。客単価(来店客1人当たりの平均購買額)は巣ごもり消費による“買いだめ需要”もあって2・5%のプラスだった。

4月においても売上高は約1割減となっている。

JFAコンビニエンスストア統計調査月報

コンビニからスーパーに流れているはずの顧客は、惣菜を買わなかった

中食の売上の3割を占めるコンビニの低迷は、中食産業に携わっている人々にとって衝撃的であった。

これまで主要なる商品はいずれもレベルが高く、スーパーの追随を許さなかったからだ。

とはいえ、コンビニの顧客がスーパーに流れ、スーパーの惣菜にとって恩恵があるかといえば、そうではなかった。

蓋を開けると、スーパーでも惣菜の売上がコロナ後、次第に減少していったのである。

惣菜の売上がダウン(日本スーパーマーケット協会より作成)
惣菜の売上がダウン(日本スーパーマーケット協会より作成)

この図でもわかるように2月、3月、4月とみると、じわじわと売上構成比率が下がってきている。

2月から3月の売上構成の減少はわずか0.1%、それが4月には1.4%減の9%まで落ち込んでいる。

一般に惣菜は、生鮮三品、そして惣菜を含む4部門の中で荒利は35~40%と最も高い。

その惣菜が下がっている。このままの状況が続くと、たとえ売上はアップしたとしても全体の利益率は下がってしまう。

確かに内食に移行したのが主な原因であろう。

しかしそれだけなのであろうか。

コンビニとスーパーの現状を見るにつれ、方法によって挽回できるのではないかと思えたのだ。

そこで岡山で20店舗ほど展開しているスーパーの惣菜に従事しているIさんに取材をした。

Iさん曰く、

「売上は好調なんです。ロスも少なく、売上はキープ出来ています」

ちなみに唐揚げ、弁当に関しては本体価格398円が好調と言われる。

では何故、先の図のように、惣菜の売上構成比率が低下となったのか。

あらゆる視点で見てみたいと思う。

コンビニのFFカウンターを比較して

コンビニの売上低迷は顧客の食に対する変化から惣菜商品が軒並みダウンしている。

そんななか、スーパーと重なる商品として、FFカウンター惣菜(フライ物)がある。

唯一、FFカウンターの商品は、店舗内調理をして提供しているフライ商品なのだ。

品揃えを見ると、住宅街立地で何とか、売上を維持しようとしていると言われているが、住宅街立地のコンビニは行くたびにアイテム数がまばらな状況であった。

そこで、住宅街立地におけるコンビニの価格設定、並びにアイテム数を見てみよう。

なおこの図は、住宅街立地での調査である。

住宅街立地大手3社のフライ商品の品揃え(erica company 調査作成)
住宅街立地大手3社のフライ商品の品揃え(erica company 調査作成)

大手3社では本体価格は50円から200円までにおさまっている。

あくまで自宅周辺の3社ではあるが、アイテム数は平均15アイテムとなった。

他の住宅街立地においても「品揃えが芳しくない」といった声が多々、聞かれるようになった。

単身者用への対応が遅れるスーパー

一方、スーパーはそのコンビニのFFカウンターに対しての対応が出来ているのであろうか。

スーパーのフライはばら売り販売されていた。しかしコロナによりパック販売している。

フライは惣菜売上の10位以内にランクインされる商品であり、人手不足の折「揚げるだけ」と簡易なことから、スーパーにとって欠かせない存在でもある。

2月から5月までのスーパーのフライのアイテム数、大手3社の調査である。

大手3社 フライ商品(ericacompany調査作成)
大手3社 フライ商品(ericacompany調査作成)

出来うる限り、品揃えを落とさないように、チャンスロスをなくす努力をしていることがアイテム数からうかがえる。

いずれの企業もコンビニよりアイテム数が多い。

しかしコンビニとかぶらない価格設定である200円以上を見ると、大手3社の全体のアイテム数はその半分を占めてはいるものの、その内容は、あくまで唐揚げを大中小とパックしたり、コロッケを3つパックしたりしており、単身者に対応できる商品設定ではない。

ばら売りからパック売りしたことで売れなくなったと言われているが、果たしてそれだけなのであろうか。コンビニの主要顧客は単身者であり、それをうまく取り込めていないと考える。

「家のみ」の常温の店舗内商品

次に差別化できうると考える常温でひと手間加えた「家のみ」需要のフライ以外の商品はどのようになっているのであろうか。

以前からつまみでもおかずでも使える汎用性のある商品提案が地方関係なく求められている。

これはコンビニでも置かれているところもあるが、賞味期間を長くした商品が多いため、店舗内で簡易ではあるがオペレーションに沿うようであれば、季節性も入れられ、企業において差別化につながる。

大手3社、常温「つまみ商品」の品揃え(erica company調査作成)
大手3社、常温「つまみ商品」の品揃え(erica company調査作成)

アイテム数を見ると、フライよりほぼ少ないアイテム数となっている。

売り場構成として、今、フライが売れなくなっているなか、つまみの需要に商機があるとされ、今後はこの分野を提案していくことが急務かもしれない。

弁当の品揃え、価格について

弁当の品揃え、並びに、価格も調査し、新商品投入もみた。多くの場合は500円、つまりワンコインで収まるような商品を提案しているスーパーが多く見受けられた。しかし新商品において600円以上の弁当を提案しているスーパーもあり、今の状況をみると、財布の紐は固いため、売れ残り、最終半値で売り切ることも出ているのではないだろうか。

弁当は家庭調査においても、比較する意味で二人以上世帯、単身者、四半期1月から3月は前年同月期でも増加しているため、顧客が求めている価格設定のなかで提案できたならば損切りは防げるのではないかと思う。

内食でも中食でもない惣菜キット化が売れていない

そんななか、惣菜キット化、つまり調理をしないわけではなく、たれと生野菜がセットされた惣菜の支出額が上がっていない。

家計調査を見てみると、二人以上世帯では月ごとの各食材の支出金額、そして単身者では月ごとは出ていないので、四半期で見ることにした。

内食に傾いているとはいえ、キッド化商品が芳しくない。

この図によると、単身者と二人以上世帯、いずれも前年と比較すると減少している。

2020年1月から3月二人以上世帯、単身者の四半期のそうざいセット(家計調査より作成)
2020年1月から3月二人以上世帯、単身者の四半期のそうざいセット(家計調査より作成)

月で見ても二人以上世帯の支出額は減少している。

二人以上世帯の2020年2月から4月(家計調査より作成)
二人以上世帯の2020年2月から4月(家計調査より作成)

そして二人以上世帯における月ごとを見ても、コロナ後も次第に減少しているのだ。

内食に流れてはいるものの、セットされた惣菜は支持されていないのである。

価格設定も500円以上が多いことから、値段を見て、手に取らないこと、セットされた商品は一つの料理として完成してしまう。つまり野菜、たれの汎用性がない。

例えばキャベツを購入した場合、今日はお好み焼き、翌日は千切りしたキャベツにしてコロッケに添えてといったようにいろいろな料理が出来るのだ。

調味料では麺つゆが予てより売上好調と言われている。そしてコロナによってさらに売上が良い。メーカー曰く、麺つゆを使っていろいろな料理を作っているとのこと。

顧客層への柔軟な対応

5月の売上もスーパー関係者から聞くと惣菜の売上は芳しくないと聞かれる。

実際、販売時点情報管理、いわゆるPOSデーターで5月11日から17日では前年同月比の調味料の販売増加率は加工食品、つまり惣菜より上回ったのである。つまり内食で使われいることを意味する。

これまでスーパーはイートインによって、外食から奪取する試み、コンビニに対してはファミリー層の提案、そして催事を使って売上を維持してきた。しかし今後は、商品ごとにこれまで掬いとれていない客層の見直し、家庭の調理では面倒な料理をこれまで以上に提案していく必要がある。勿論、店側において簡易なオペレーションも考慮しなければならず、開発にとって難しい提案が求められてくるように思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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