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米国 電子たばこによる呼吸器障害で死亡者

片瀬ケイ在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー
本当に、キケンです。(写真:ロイター/アフロ)

電子たばこでついに死亡被害

 米国イリノイ州の公衆衛生局は8月23日、電子たばこによる重篤な呼吸器障害で入院していた人が死亡したと発表した(注1)。同州では先週、電子たばこによる呼吸器障害のために緊急入院した人の数が倍増していた。

 発表時現在の入院患者は22人で、17歳から38歳。患者の症状は咳、息切れ、倦怠感など。また嘔吐、下痢を訴える人もいて、症状は入院前の数週間、あるいは入院後に悪化したという。イリノイ州公衆衛生局は、このほか12人についても、各自治体の保健当局とともに調査を進めている。

 電子たばこによる健康被害は全米で多発している。米疾病予防管理センター(CDC)では、8月22日午後5時現在で、電子たばこ製品の使用が原因と思われる重篤な肺疾患件数は、イリノイ州、ウィスコンシン州、カリフォルニア州、テキサス州など22州で合計193件にのぼったと発表した。数日前の発表では15州で149件だったことを考えると、健康被害が急速に広がっているのがわかる。(注2)

 イリノイ州公衆衛生局長は、「患者の呼吸器障害が深刻な状況であることを鑑みると、電子たばこの使用が危険であることを人々に広く訴える必要がある」というコメントを発表している。

激しい咳と嘔吐と動悸

 筆者の住むテキサス州でも被害がでており、先日、地元のテレビ局(WFAA)も電子たばこの使用が、いかに深刻な肺疾患をもたらすかを報道していた。

 フォートワース市のトリストン・ゾフィールド君は17歳で、高校を卒業したばかり。激しい咳、寒気、吐き気、心臓が飛び出るかと思うほどの激しい動悸を感じ、7月26日に同市のクック小児病院の集中治療室に運びこまれたという。医師が胸部レントゲンをとったところ、急性の閉塞性喚気障害を起こしていた。

 原因を特定するため、感染症や肺炎などの検査もしたが結果は陰性。その後、トリストン君は14歳の頃から、日常的に電子たばこを利用していたことがわかった。医師は電子たばこで吸引していた化学物質のために肺が異常なほど炎症を起こし、閉塞性喚気障害を生じたものと判断した。

 電子たばこの健康被害のため、トリストン君は医療行為によって10日間、昏睡状態におかれ、合計で18日間の入院を経て、やっと退院することができたという。入院中に11キロもやせてしまったため、現在はリハビリ中だが、同級生らに自分の体験を伝えることで、電子たばこの使用をやめるよう呼びかけている。

関連リンク

注1 電子たばこで呼吸器障害を起こしたイリノイ州住民が死亡 イリノイ州公衆衛生局 報道資料(英文リンク)

注2 CDC、複数州が電子たばこ使用者における深刻な肺疾患を調査(英文リンク)

在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー

 東京生まれ。日本での記者職を経て、1995年より米国在住。米国の政治社会、医療事情などを日本のメディアに寄稿している。2008年、43歳で卵巣がんの診断を受け、米国での手術、化学療法を経てがんサバイバーに。のちの遺伝子検査で、大腸がんや婦人科がん等の発症リスクが高くなるリンチ症候群であることが判明。翻訳書に『ファック・キャンサー』(筑摩書房)、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)、『夫婦別姓』(ちくま新書)、共訳書に『RPMで自閉症を理解する』(エスコアール)がある。なお、私は医療従事者ではありません。病気の診断、治療については必ず医師にご相談下さい。

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