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台風発生域が東進するなかで発生した10月5個目の台風18号

饒村曜気象予報士
フィリピンを襲う台風18号の雲(10月25日15時)

関東から西日本で続く晴天

 大きな高気圧が大陸から日本付近を覆い始め、西日本から晴天域が広がってきました。

 西高東低の冬型の気圧配置で、曇りや雨の天気だった北日本や北陸地方も晴れ間が出るようになってきました(図1)。

図1 冬型の気圧配置から高気圧の張り出しへ(10月25日18時の地上天気図と衛星画像)
図1 冬型の気圧配置から高気圧の張り出しへ(10月25日18時の地上天気図と衛星画像)

 週間天気予報をみると、関東から西日本は晴れの天気が続く予報となっています。

 放射冷却によって朝晩は冷え込みますが、それでも日中の最高気温は20度以上の日が続き、かといって30度以上の真夏日になることもありませんので、屋外活動に適した秋本番になっています(図2)。

図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 そんな中、フィリピンの東海上では10月25日3時に台風18号が発生しました。

 日本の南海上では夏は終わっていません。

 日本列島は冬に向かっていますが、フィリピンの東海上の海面水温は、未だに台風が発達する目安とされる27度を大きく上回っています。

10月で5個目の台風

 台風18号は、台風17号のあとを追うように、西進を続け、フィリピンを通過後に南シナ海で発達する見込みです(図3)。

図3 台風18号の進路予報(10月26日0時)
図3 台風18号の進路予報(10月26日0時)

 台風予報は最新のものをお使いください

 令和2年(2020年)は、台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、初めて7月の発生数がゼロとなるなど、7月までは台風の発生が少なかったのですが、8月以降は、発生ペースがあがっています(表)。

表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数および台風の平年値
表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数および台風の平年値

 台風18号は、令和2年(2020年)10月の5個目の台風でした。

 台風15号は、10月5日9時に10月の台風としてはやや北の小笠原近海で発生し、北上して本州沿岸を通過しました。

 少し古い資料ですが、10月に発生する台風は、ほとんどが北緯10度から20度の間です(図4)。

図4 台風の月別・緯度別発生数(昭和26年(1951年)~52年(1977年)、図中のOの太線が10月)
図4 台風の月別・緯度別発生数(昭和26年(1951年)~52年(1977年)、図中のOの太線が10月)

 従って、台風14号は、10月としては高緯度での発生となります。

 しかし、台風15号から18号は、10月の台風が良く発生する北緯10度から20度で発生し、発生位置が次第に東へ移動しています(図5)。

図5 令和2年(2020年)10月に台風が発生した場所(台風14号から台風18号)
図5 令和2年(2020年)10月に台風が発生した場所(台風14号から台風18号)

 ひょっとしたら、昭和47年(1972年)にマッデンRoland A. MaddenとジュリアンPaul R. Julianによって赤道上の風と気圧に40~50日の周期性があることが発見された、「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」がおきているのかもしれません。

今年の冬は?

 「マッデン・ジュリアン振動」は、おもにインド洋で発生する数千キロメートルスケールの巨大雲群が赤道に沿って毎秒5メートル程度の速度で東へ進み、多くは太平洋の日付変更線付近で雲が消滅する現象です。

 「マッデン・ジュリアン振動」に伴う対流活動の活発な領域では、熱帯低気圧の発生が促進されるという研究もあり、熱帯の天候と密接な関係を持っています。

 また、偏西風やジェット気流の異常やブロッキング現象などを通じて、日本に異常気象と呼ばれるような天候をもたらす間接的要因ともなっています。

 現在、東部太平洋の赤道域でも、海面水温が平年より高くなる「ラニーニャ現象」が発生し、異常気象が発生しやすくなっています。

 気象庁が10月23日に発表した3か月予報(11月から1月)では、北日本の気温は平年並みまたは高く、その他の地方は平年並みとなっていますが、いろいろな要素が重なっての平年並みです(図6)。

図6 予想される海洋と大気の特徴(11月~1月)
図6 予想される海洋と大気の特徴(11月~1月)

 そして、次のような注釈がついています。

 この時期の天候に影響の大きな北極振動の予想は難しく、現時点では考慮できていませんので、予報には不確実性があります。常に、最新の1か月予報等をご覧ください。

 つまり、令和2年から3年(2020年から2021年)の冬は、予報が非常に難しい冬ですので、常に最新の予報でのカバーが必要です。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

図5の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図6、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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