Yahoo!ニュース

30本塁打の三塁手と21本塁打の二塁手がオプションを行使される。彼らがFA市場に出ない影響は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
エウヘニオ・スアレス(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Jun 8, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エウヘニオ・スアレス(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)とブランドン・ラウ(タンパベイ・レイズ)は、今オフのFA市場に出る可能性があった。それぞれの契約は、7年6600万ドル(2018~24年)と6年2400万ドル(2019~24年)だった。

 だが、2人とも、今オフはFAにならない。彼らの契約には、球団オプションがついていた。スアレスのオプションが2025年の年俸1500万ドル(解約金200万ドル)、ラウのオプションは2025年の年俸1050万ドル(解約金100万ドル)と2026年の年俸1150万ドル(解約金50万ドル)だ。ダイヤモンドバックスもレイズも、2025年のオプションを行使した。

 スアレスは、33歳の三塁手だ。今シーズンは、打率.256と出塁率.319、30本塁打、OPS.788を記録した。2018年以降の7シーズン中、30本塁打に届かなかったのは、2020年(15本)と2023年(22本)の2度。2020年は1チーム60試合の短縮シーズンだったので、実質的には1度だ。2019年は、50本塁打まであと1本に迫った。2024年の前半は、93試合で打率.216と出塁率.303、10本塁打、OPS.668と低迷したものの、後半に入ってからは、65試合で打率.307と出塁率.341、20本塁打、OPS.942とよく打った。

 2024年の後半に20本塁打以上の選手は、25本塁打の大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)と24本塁打のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)に、20本塁打のアンソニー・サンタンデア(ボルティモア・オリオールズ/現FA)とスアレスしかいない。

 ラウは、30歳の二塁手だ。今シーズンは、打率.244と出塁率.311、21本塁打、OPS.783。2021年に39本のホームランを打ち、ここ2シーズン続けて21本塁打を記録している。

 今オフのFA市場は、三塁手も二塁手も、層が薄い。スアレスとラウがFAにならなかったことで、どちらの層も、さらに薄くなった。

 ポストシーズン進出をめざすチームがレギュラーとして欲しがりそうな三塁手は、ヒューストン・アストロズからFAになったアレックス・ブレグマンだけ、と言っていいだろう。二塁手も、不動のレギュラーとなると、ニューヨーク・ヤンキースからFAのグレイバー・トーレスと、サンディエゴ・パドレスで遊撃を守っていたハソン・キム――相互オプションをキムから破棄してFAになった――くらいしか見当たらない。キムは、二塁手としてプレーしたこともある。

 あとは、三塁と二塁のどちらを守るのかはさておき、ホルヘ・ポランコポール・デヨングブランドン・ドゥルーリーホゼ・イグレシアスキーケー・ヘルナンデスジオ・アーシェラアダム・フレイジャー……といったところだろう。

 もしかすると、ポランコあたりが、層の薄さの「恩恵」に与るかもしれない。2023年はOPS.789ながら80試合しか出場できず、2024年は118試合で自己ワーストのOPS.651に終わり、シアトル・マリナーズに年俸1200万ドル(解約金75万ドル)の球団オプションを破棄された。けれども、2019年は22本塁打とOPS.841、2021年は33本塁打とOPS.826を記録した。年齢は31歳だ。もともとは遊撃手だったが、2021年以降は主に二塁を守っている。

 ESPNのジェフ・パッサンによると、先月、ポランコは、左膝の手術を受けたという。健康を取り戻せば復活の可能性あり――近年の不振は膝が要因――と見る球団がいくつかあっても、おかしくはない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事