1日24時間働くのと、1年360日働くのと、どっちがいい?~残業代ゼロ制度の笑えない「健康確保措置」
またまた「残業代ゼロ」制度(「定額¥働かせ放題」制度)のお話です。
今回は「残業代ゼロ」制度の健康確保措置を少し注意深く見てみましょう。
前回、八代尚宏先生の署名記事を批判した拙稿(過労死を促進させる「残業代ゼロ」法案を「過労死防止法案」と呼ぶべきとする珍論について)でも指摘しましたが、「残業代ゼロ」制度には、健康確保措置というものがあります。
健康確保措置
内容は、次のとおり。
これを見ると分かる通り、(1)~(3)のどれか1つを導入すればOKということになります。
「そっかぁ、どれか1つ取ってくれるのなら、ま、いっかぁ(^~^)モグモグ」
と、のんきに思っている場合ではないんですね。
これは労基法の一部の適用を除外する制度
そもそも、「残業代ゼロ」制度=「定額¥働かせ放題」制度は、報告書で次の法的効果を持つと記載されています。
これは、どういうことかと言いますと、
という1日8時間、週40時間という労働時間制限の規制や、
という6時間を超えて働かせる場合の45分の休憩、8時間を超えて働かせる場合の1時間の休憩を取らせなければいけないという規制や、
という週1回の休日や4週4回の休日に関する規制、
こういった規制の全部が適用除外されるということです。
もちろん、「残業代ゼロ」制度と呼んでいますとおり、割増賃金に関する条文(労基法37条)も適用除外です。
そうなるとどういうことになるか
ここで民主党の山井衆院議員のツイッターを見てみましょう。
はい。こういうことになります。
先ほどの健康確保措置のうち、
(1) 労働者に24 時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えるものとし、かつ、1か月について深夜業は一定の回数以内とすること。
これを選択します。
たとえば、この「一定の時間」が8時間だったとします。
すると、規制としては、仕事の終業時刻から次の仕事の始業時刻まで8時間を空ければいいわけですので、最大1日16時間まで働かせることが可能となります。
そして、あとはフリーとなります。何の規制もございません。
となれば、使用者が労働者に有給休暇を最低限5日は取らせることが義務化されたと仮定したとしても、
1日16時間、360日連続勤務も合法となるわけです。
これがこの制度の破壊力です。
他には?
他にもこういうパターンが考えられます。
先ほども3つのうち、
(3) 4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104 日以上の休日を与えることとすること。
を選択したとします。
そして、あとはフリーとなります。何の規制もございません(2回目)
従いまして、1日24時間働かせても何ら問題ございません。
まぁ、24時間は極端だから、少なく見積もって、その半分の12時間くらいにしてみましょうか?
そうすると、
365日-(104日+5日)=256日
256日×12時間=3072時間
1カ月あたり256時間労働。労基法の規制があれば、これはおよそ月間80時間の時間外労働となります。
はい。そうです。過労死基準突破ですね。
おわりに
以上が、「残業代ゼロ」制度=「定額¥働かせ放題」の健康確保措置の正体です。
1日24時間働くのと、1年360日働くのと、どっちがいいですか?
と言われても、どっちも嫌ですよね。
しかも、これが健康確保措置だと言われたら笑うしかないかもしれません。
いや、笑えないですね。
悪い冗談にしか思えませんが、こんな制度が今、作られようとしているのです。