阪神百貨店の名古屋めしフェアがまさかの大人気! 「わたしの愛する名古屋めし」仕掛け人にインタビュー
大阪の百貨店では異例の名古屋めし物産展
阪神梅田本店(大阪市北区)で「第2回わたしの愛する名古屋めし」が2024年1月24日(水)~29日(月)に開催されます。
大阪の百貨店での名古屋グルメの催事はきわめて異例。しかも、かき入れ時のバレンタインシーズンにぶつけてくるとは…! よほどの自信があるのか? それともライバル店の裏をかく変化球なのか? よもや茶色いチョコと勘違いさせて茶色い名古屋めしを買ってもらおうという戦略なのか? そもそも大阪人の口に名古屋めしは合うのか…?
様々な疑問を抱きつつ、仕掛け人にフェアの開催までの経緯、狙い、内容などをお聞きしました。
「新幹線で1時間の名古屋で集客できるのか?」と当初は期待感ゼロ
――大阪の阪神百貨店で名古屋めしフェアを開催することになったきっかけは?
「食祭テラス」ナビゲーター・服部さん(以下、服部)「百貨店の催事はどこも『沖縄物産』『北海道物産』しかやっておらず、名古屋は物産展をやるのに十分すぎる食のラインナップがあるのにどこもフォーカスしていなくてもったいないなぁ、と思っていました」
――服部さんは名古屋出身なんですか?
服部「名古屋生まれで高校卒業まで名古屋で育ちました。でも住んでいる時は“名古屋は何もない、大嫌い!”と思っていて、京都の大学に進学し、大阪で就職しました。でも離れてみると名古屋のよさに気づくようになって、ほどよい都会感、ダサくてかわいげのない名古屋弁、そしておいしいごはん…意外と魅力いっぱい(笑)」
――そんな名古屋の魅力を伝えたいとフェアを発案したわけですか?
服部「関西の人にはよく“名古屋は何もない”といわれてしまうので、確かにそうかもしれないけどごはんだけは格段においしい!と伝えたいという思いで企画しました」
――当初の周囲の反応は?
服部「薄味文化の関西で、味が濃い名古屋めしを受け入れてもらえるか? 不安の中プレゼンしました。上司らの反応はとても薄く、“新幹線で1時間もかからない名古屋のものを集めて集客できるのか?”そんな冷ややかな感じでした。期待されていない感満載で、今思い出しても辛い…(涙)」
――名古屋の出店者の反応は?
服部「出店者側も“大阪で催事をやって売れるのか?”と懐疑的な声が多く、交渉には苦労しました。何十社と断られ続けて途中であきらめかけたことも…。でも、ある出店者様に“名古屋のお店は外に出るのが苦手。服部さんのような人が大阪で企画をして名古屋の飲食を盛り上げてくれるのはすごくうれしい”とおっしゃってくれて、頑張ろう!と思いました」
2023年開催の第1回は2時間待ちの行列も。売上年間トップクラスに!
――そうして開催にこぎつけた第1回(2023年3月16~21日)の反響は?
服部「開店と同時に四方八方からお客様が流れ込み、アッという間に各所に行列ができました! 特にぴよりんの売り場には朝4時からお客様が並ぶ事態に。喫茶店の『BUCYO COFFEE』には2時間待ちの行列ができました。最終的にこれまでのイベントの中でも上位に入るほどの売上で、“正直、名古屋がここまで人気とは…”と企画した私自身びっくりでした」
――その成功があったからこその第2回の開催なのですね。
服部「第1回はおそらく上司が“若手がそこまでいうのならやらせてやろう”ぐらいの気持ちだったのでしょう。イレギュラーな企画だったので、2024年の年間スケジュールの中に『名古屋』の文字は入っていなかったんです。ところが結果的にスゴい人気だったので急きょ今年も開催することになり、百貨店催事の中で一番重要なバレンタインを一週削っての開催となりました。まわりの百貨店がバレンタインをやっているさ中に名古屋めしを特集する、面白い百貨店と思っていただけたらうれしいです(笑)」
イベント初出店の名店も。名古屋めしは大阪人の口に合う?
――第2回の新たな取り組み、魅力は?
服部「今年はちょっとニッチなメニューも入れてみようと。名古屋のビジネスマンのランチルーティーンでもあるあんかけスパは、関西人にとっては“ザ・独特”な食文化。大阪の人たちがどれくらい知っているかは未知数ですが是非食べていただきたい。また、ぴよりんの先輩的存在のシャチボン、名古屋銘菓の鬼まんじゅうなど、企画名にもある“わたしの愛する”によりフォーカスしました!」
――企画名の「わたしの愛する」はまさに「服部さんの愛する」なのですね! 出店交渉に関して苦労はありましたか?
服部「味噌煮込みうどんの山本屋本店さんとの交渉です。過去に催事の出店経験はなく、その理由が百貨店ではガス火が使えないから。味噌煮込みうどんにとって何より重要な“土鍋でぐつぐつ”を再現できないという壁がありました。そこで、IH対応の土鍋を何種類も用意して名古屋の本店へお送りしました。山本屋本店さんも、沸騰までの時間を計ったり麺の固さを比べたりと、お店の味を再現できないかと何度も実験してくださいました。私たちも名古屋のお店と同様に土鍋のふたを器にして食べてもらいたいので、ふたに合うサイズの土鍋をあちこち手を尽くして探し出しました。わざわざ大阪まで出向いて何度も実験を重ねていただき何とかご出店にいたりました。地元の名古屋、愛知でも催事出店はなかったことなので、本当に感謝しています」
――そうして大阪に集結する名古屋めし。ズバリ、名古屋めしは大阪人の口に合う?
服部「正直、わからないです! ただ、私がつくる味噌汁は濃すぎるとよく怒られます(笑)」
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阪神梅田本店の「第2回 わたしの愛する名古屋めし」にはこんな名古屋愛あふれる服部さんがセレクトしたグルメがズラリ。味噌煮込みうどん、ひつまぶし、手羽先、あんかけスパ、名古屋コーチン親子丼、喫茶店のモーニングセット、鉄板小倉トースト、ぴよりん、シャチボン、ケロトッツォ、鬼まんじゅうなど…。さらに名古屋おもてなし武将隊の演武やトークショー、なごやめしグッズのプレゼントとお楽しみ企画も盛りだくさんとなっています。
関西の食は薄味文化で、何かと濃い名古屋の食とはいわば真逆。それだけに、このフェアでは日ごろ慣れ親しんでいる食事とは異なるインパクトや面白さも体感してもらえるのではないでしょうか。この機会に大阪の皆さんにも名古屋めしの魅力にふれていただき、さらには本場で名古屋めしを味わうために、名古屋に足を運ぶきっかけにしていただければと思います。
※写真提供/阪神梅田本店