大谷翔平は球宴でも二刀流をプレーできるのか? いまさら聞けない指名打者の基礎知識
指名打者としてMLBのオールスターゲームに先発出場することが決まった大谷翔平。ファンとしては、大谷が球宴で豪快なホームランを打つのはもちろんのこと、投手としても登板して、二刀流として夢の舞台に立つことを望んでいる。
果たして、大谷はMLBのオールスターゲームで二刀流を務めることは可能なのだろうか?
知ってるようで、実は知らない指名打者の基礎知識を学びながら、大谷がオールスターで二刀流としてプレーする方法を探ってみたい。
そもそも指名打者ってなに?
指名打者は英語だと「Designated Hitter」で「DH」と略され、投手の代わりに打つ、打撃専門の選手のこと。メジャーリーグでは1973年からアメリカン・リーグで採用され、ナショナル・リーグでは使われていない。日本でも1975年からパシフィック・リーグが採用しているが、セントラル・リーグは使っていない。
インターリーグ(日本では交流戦)の試合では、ア・リーグ(パ・リーグ)のホームゲームでのみ指名打者制が採用され、ナ・リーグ(セ・リーグ)のホームゲームでは指名打者制は使われない。
オールスターでの指名打者制
メジャーリーグでは1989年からア・リーグの本拠地球場で球宴が開催される場合のみ指名打者制が採用されていたが、2010年からは開催球場に関係なく、オールスターゲームでは指名打者制が採用されている。
オールスターでは必ず指名打者を起用しないといけないの?
指名打者を使うか使わないかは、試合前に決めないといけないが、指名打者を使わないという選択も可能。ただし、試合の途中から指名打者を起用することはできない。
ア・リーグでは指名打者もファン投票で選ばれているので、投票で選ばれた選手をあえて外すことは、ルール的には可能だが、常識的に考えられない。
唯一の例外が指名打者の選手を投手として、二刀流で起用する場合。MLBのオールスターでは投手はファン投票では選ばれず、投手は「選手間投票」と「コミッショナー事務局選出」の2通りの方法で選ばれる。
選ばれた投手の中から監督が先発投手を指名するが、ここで投手として選ばれていない大谷を先発投手として指名することは可能である。
大谷を先発投手として起用する場合には、ア・リーグは指名打者制を使わないで試合に臨むことになる。オールスターでは頻繁に投手交代、選手交代が行われるので、指名打者を使わないデメリットはあまりない。
大谷を先発投手として起用する場合の問題点は、投手としての大谷の成績がオールスターの先発を務めるには物足りないこと。メジャーの投手にとって、オールスターの先発マウンドを任されることは栄誉であり、大谷を先発として起用すれば、その栄誉を奪われてしまう投手が出てきてしまう。
指名打者として先発出場後、投手として登板できる?
ルール的には指名打者を守備に就かせることは可能だが、指名打者が守備に就いた時点で指名打者制は解除され、それ以降は指名打者は使えなくなる。
日本では2016年のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第5戦で、指名打者として試合に出場していた大谷が、9回から登板してセーブを挙げている。
オールスターゲームでも大谷を指名打者として2打席打たせてから、投手として登板させることは可能。この場合の問題点は、指名打者が登板に備えて、試合中にブルペンでウォームアップができないこと。
また、指名打者が試合途中で交代して退いた場合、再び試合に出場することはできないので、大谷が指名打者から投手として登板するためには、他の選手と指名打者を交代する前でなくてはならない。
指名打者として先発出場せずに、投手として登板後、打席にも立つ
現行のルールで認められる範囲内で、球宴でも二刀流としてプレーさせのであれば、先発指名打者の座は他の選手に譲り、大谷を試合途中から投手として登板させる方法もある。登板した次のイニングの攻撃で、指名打者に代わって打席に入る。この場合、オールスターゲームの特性から考えると、大谷が打席に立てるのは1度だけ(ルール上は何度でも可能)。投手としては複数イニングを投げることができるが、オールスターで中継ぎ投手が2.1イニング以上を投げることはまずないし、そもそも投手として選出されていない大谷が投げたとしても最大で1イニングだろう。
もしくはこの逆で、ブルペンでウォームアップをしてから代打として打席に立ち、そのまま投手として登板する選択肢も考えられる。
いずれにしろ、ファン投票で選ばれた選手が先発を外れるという異例の起用方法になるが、大谷が二刀流でプレーするのであれば、大谷に投票したファンも許してくれるはずだ。
米メディアからも「大谷ルール」を望む声が上がっている
オールスターゲームで大谷が投打の二刀流で出場できるように、ルールを変えるように要望する声が複数の米メディアからも上がっている。
だが、その声のほとんどが「DH途中解除」に関するもの。DHの大谷が投手として登板することで、指名打者制が解除され、大谷降板後は投手が打席に立たなくてはならないというものだ。
しかし、選手を頻繁に入れ替えるオールスターであれば、この問題は割と簡単に解決できる。オールスターの野手は20名前後になり、公式戦のベンチ入りよりも人数が多い。選手交代のタイミングをうまく調整して、投手に打順が回ってきたときに控え野手を代打に起用してから守備に就かせるようにすれば、DHを途中解除しても何も問題はない。
それよりも変えるべきルールは、野球規則 5.11(a)(15)の指名打者がブルペンに入れないルール。ここを「大谷ルール」として変更すれば、指名打者として先発出場した大谷は、試合途中にスムーズに投手として登板できるようになる。