福井3原発、噴火の影響見直しへ:規制委の判断は科学的に妥当か?
火山灰層の厚さは想定の3倍
関西電力は美浜、大飯、高浜の3原発について、原発から約200キロ離れた大山(鳥取県)が噴火した場合の降灰の厚さを、地質調査やシミュレーションなどをもとに、最大10センチ程度と想定していた。しかし2017年に、大山からの距離がこれらの原発とほぼ同じ京都市内で、約8万年前に大山が噴火したときの火山灰であるDNP(大山生竹火山灰)の厚さが30センチあったとの研究論文が発表された(図1)。
関西電力はこの火山灰層について、降り積もった火山灰に加えて周囲から流れ込んできた灰が混ざっている可能性があることから、「厚さは評価できない」と主張した。これに対し、規制委は現地調査を実施して火山灰層が25センチはあることを確認し、関西電力に対して再評価を求めたのだ。
新しく得られた知見を元に噴火に対する評価を行うことは当然であり、規制委の判断はその意味で妥当である。
6万年前に大山で起きた大噴火
今回問題となったDNP噴火は、約2立方キロメートル、東京ドーム1600杯のマグマを噴き上げた。しかし大山は、この噴火よりさらに大規模な噴火を起こした「札付き」の火山なのだ。約6万年前には、DNP噴火の5倍以上のマグマを噴出した大噴火を起こし、この噴火で噴き上げられた火山灰(DKP、大山倉吉火山灰)は中部地方でも地層中に残っている。このDKP火山灰は、若狭湾周辺では20センチ程度の厚さがあり、さらに風向きによっては50センチを超えた可能性が高い(図1)。原発の安全性を評価するには、このような大噴火を考慮すべきであろう。
大山火山以外も考慮すべき
日本列島には111、全世界の約1割の活火山が密集する。そしてこれらの火山の中には、超ド級の噴火、「巨大カルデラ噴火」を起こしてきたものが、少なくとも7つもある。そしてこのような噴火が今後100年以内に起きる確率は約1%である(「最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火」)。この一見低い確率は、じつは阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震や、熊本地震などの激甚災害の発生確率とほぼ同程度だ。つまり、巨大カルデラ噴火はいつ起きても不思議ではない。
巨大カルデラ火山が4つ以上密集する九州でこのような超巨大噴火が起きると、最悪の場合、北海道と沖縄を除く地域で10センチ以上の降灰を想定せねばならない(図2)。この領域では、ライフラインはほぼ完全にストッップする。規制委は、日本の原発の多くは、巨大カルデラ噴火による20センチ以上の降灰域にあることをきっちり認識する必要がある。