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パリのニューフェース 才色兼備のエピスリー

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
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サンジェルマン地区といえば、パリのなかでも人気の高いエリア。ここに昨年11月、新しい食料品店がお目見えした。名前は「Ma Collection(マ・コレクション=わたしのコレクション)」。小さい間口ながら目をひくウィンドーの雰囲気からは、しゃれた雑貨の店かなにかのように思えるが、「Marchande de Saveurs(味の商人)」の文字から、ここが食べ物屋さんだと分かる。店主はVarelie Bloch(ヴァレリー・ブロック)さん。つまり彼女がセレクトした美味しいものを集めたブティックなのだ。

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「3年間、農業見本市やあらゆる機会に足を運んでテイスティングを繰り返したわ」と胸を張るラインナップは、ジャム、はちみつ、オリーブオイル、パテ、チョコレート、キャラメル、ビスケット、スープ、マスタード……。甘辛取り混ぜてありとあらゆる食料品があるが、いずれも彼女自身が惚れ込むクオリティのものばかり。MOF(フランス最優秀職人章)のパティシエのお菓子もあれば、エリゼ宮(大統領府)御用達にもなっている手作りジャム、天然物の魚の味がしっかりと感じられるパテなど、一口味わえば違いは歴然。しかもそのすべてがメイド・イン・フランス。さらに言うなら、「BEAU et BON」(ボー・エ・ボン=美しくて美味しい)。これが店のコンセプトを端的に表現する言葉。つまり、ただ美味しいだけじゃなく、見た目が大事というのが、ヴァレリーさんのこだわりなのだ。

ところでこのヴァレリーさんのもともとの仕事はランジェリーのデザイナー。このブティックを開店させたからには、もちろんこちらのほうに重心を置いているが、中国、台湾、トルコなどのランジェリーメーカーのコンサルタント業は継続している。そう聞くと、ビジュアルへのこだわりもなるほど、と納得する。

「有名シェフが作るお料理は盛りつけもとてもアーティスティック。つまり食の世界でも、見た目の美しさは大事な要素よね。それはなにもプロの仕事だけじゃなくて、家の中でも同じことだと思うの。たとえばパテの器がしゃれていたら、わざわざ別のお皿に移し替えずにそのままテーブルに出したいと思うし、調味料のボトルが素敵なら、戸棚のなかにしまわずに、それを台所のデコレーションにしたくなるでしょう。」

そういう彼女の“コレクション”には、香水のボトルさながらのオリーブオイル、葉巻形のケースに入ったアルコール、コスメティックのパッケージを思わせるマスタードなどものあったりして、味わう前から目に喜びをくれる。プレゼントするにしても、ちょっとしたサプライズというスパイスを添えられそうだ。

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「色の印象ってほんとうに大事」ともヴァレリーさんは言う。

「フランスのブランドでもたとえば、CHANELみたいな有名なところだったら、ごくシンプルな白や黒のショッピングバッグでもロゴがあることによって差別化できる。けれど、たとえば道ですれ違ったり、カフェで隣り合わせた人の持っている紙袋の色そのものがとても印象的だったら、“あれなにかしら?”って思うでしょう? そのいい例がLADUREEの独特のグリーンの袋。色がブランドイメージとして定着したと言えるわね」

その点、彼女が選んだオレンジは、アイキャッチのパワー満点。ヴァレリーさんの表現を借りれば「ビタミンを感じる色」でもある。

オープンして間もないが、「パリのお土産にしたいから、その袋をたくさん入れて下さる?」と、大人買いの常連もすでにいる。なんでも、年に3、4回、2週間ほど近くの5つ星ホテルに投宿するという裕福なアルゼンチンカップルが、前回の滞在中に3回も来店して、友人、家族、孫たちの分もとショッピングを楽しんでいかれた由。

“BEAU” と” BON”。

フランスのマーケティングの二枚看板は、目下こんなふうに進化を遂げながら世界のファンを心をつかんでいる。

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Ma Collection Marchande de Saveurs

33 rue Mazarine 75006 Paris FRANCE

営業時間●11:30-20:30 (日曜は13:00-19:00)

定休日●月曜(3月からは月曜も営業予定13:00-20:30)

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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