藤田晋社長が町田のクラブ名に「ゼルビア残す」方針を明言。投票から”ファンサポーターの思い”を読み解く
FC町田ゼルビアの親会社であるサイバーエージェントの藤田晋社長はサポーターの要望により保留していた「FC町田トウキョウ」へのクラブ名変更を取りやめ、2020年は「FC町田ゼルビア」の名称とロゴのままJリーグで戦う方針を発表した。今後「ゼルビア」を残しながら「東京」を加えるプランを意見交換しながら模索して行くという。
先週の金曜日に行われたサポーターミーティングにおいて藤田社長は「東京のクラブ」であることを世間やスポンサーに認知させるリブランディング戦略の一環として「FC町田ゼルビア」から「FC町田トウキョウ」に改名することをJリーグに申請し、すでに承認されていることをサポーターとのミーティングで発表し、多くのサポーターから反発の声があがった。
「東京」を入れたクラブ名に変更すること自体に疑問や反対意見もあるが、今回は1997年に「FC町田トップ」から「FC町田ゼルビア」に変更してから親しまれて来た「ゼルビア」を外して「トウキョウ」を入れたこと、さらにクラブ名の変更という重大決定に関して事後報告だったこともサポーター軽視として反発の拡大に繋がった様だ。こうした反響を受けて藤田社長は一旦「保留」とすることを伝えていたが、変更は既定路線になるようにも思われた。
藤田社長の主張としてはいくつかあったが、1つは「ゼルビア」という名前が新規の顧客に浸透しにくいということだった。確かにゼルビアというカタカナ名は町田の市樹であるケヤキ「zelkova」(ゼルコヴァ)と市花であるサルビア「salvia」を合わせた造語であり、初めて耳にした時にパッとイメージしにくいが、すでに長年Jリーグの中では定着しており、もはや違和感のある人は少ないだろう。
また世間に伝わりにくい名前として「V・ファーレン長崎」を引き合いに出したことに多くの反発があり、藤田社長も謝罪したが、単純に「ゼルビア」を残して「東京」や「トウキョウ」を入れると名前が長くなるという主張もあった。
ただし、これに関しても「北海道コンサドーレ札幌」や「ジェフユナイテッド市原・千葉」と言った事例がJリーグにあり、それぞれネーミングの背景を抱えながらファン・サポーターから受け入れられている事実もある。その線で考えれば名前を長くしないために「ゼルビア」を外すことは理由としてかなり薄いと言わざるをえない。
とにかく藤田社長がクラブの成長のために「東京」をクラブ名に入れてリブランディングしたいという意図は伝わったが、藤田社長にサポーターを中心とした世論をなんとか伝えられないかと思い、個人のツイッターアカウント「@y_kawaji」にて投票方式のアンケートを実施した。「東京」をクラブに入れることを前提に藤田社長サイドの発表した「FC町田トウキョウ」と「FC町田ゼルビア東京」「町田ゼルビア東京」の三択だ。
もちろん「東京」を入れずに「FC町田ゼルビア」のままにしたいという意見もあるし、「東京」を町田の前に持ってくるとか、国際発信しやすいように「TOKYO」にするとか色んな意見が出たが、何よりまずは藤田氏に「ゼルビアを残したい」という思いが具体的な数字となって伝わることが優先事項と考えたので、あえて「その他」などは入れず、この三択にした。
1万を超える投票をいただいた結果は以下の通りとなった。
一番多かったのは「FC町田ゼルビア東京」で51%。元のクラブ名の語尾に「東京」を付けた形式だ。そして二番目が「町田ゼルビア東京」。「ゼルビア」が付く前からあった「FC」を外すことにも賛否両論はあるが「ゼルビア」を外すよりは受け入れる人が多いことがアンケートからは示されている。
そして「FC町田トウキョウ」は5%だった。今回は投票権を町田サポーターに限定している訳ではないので、もしかしたら外部のサッカーファンによる投票もあったかもしれないが、5%が支持したことは声として軽視できない。しかしながら、やはり圧倒的多数は「ゼルビア」を残すことを希望していることはわかる。
幸い、このアンケートを行っている最中に藤田社長がブログにて、あらためてサポーターとの話し合いを持つことを表明した。そのため本来の目的から少しそれることにはなったが、多くの人の協力により思いを認識することはできた。
今回の藤田社長の決断はいかなる経緯があっても責任ある立場の英断としてリスペクトしたい。今後、どういう流れでこの件の議論が進められて行くかは不明だが、現場のスタッフや選手はもちろんオーナー会社、スポンサー、サポーターが一体になるほどプロクラブは成長に向かうことは間違いなく、今回の経験を糧にFC町田ゼルビアが良い方に成長して行くことを願いながら、今後も注目して行きたい。