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インバウンドで我が街を盛り上げたい全ての自治体も参考になる京都が世界一の観光地であり続けるための条件

にしゃんた社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)
photo DOD EMP ERIC ARMSTRONG

観光客誘致により地域の活性化をはかりたいと考えている自治体はほとんどである。そんな中、世界で最も影響力があるとされる米大手旅行雑誌「トラベル+レジャー」が発表した読者投票による2015年の世界の人気観光都市ランキングで、京都市が昨年に続き2年連続で世界一に選ばれた。

全国の自治体が観光客誘致で盛り上がるためにも、京都は世界一の観光地であり続けるためにも何が必要なのかを世界一の京都を事例に考えた。

■  「全員」でかかわる!

「京都観光」は現状、いろんな意味で「一部の人」だけのものになっているが、ストレスレスで持続可能性の観点で考えた場合、今後はそこに「全員」が求められる。「お客さん」にとっては、観光客を対象に商いをしている人とそうではない人の区別はない。京都に住む人、道を歩いている人、犬に散歩させている人に、お地蔵までもが、京都の大事な形成員である。一部の人だけではなく全員が観光に関わることの自覚をもつことが望ましい。

■  しっかり歓迎する!

「京都人」は、本当に観光客を歓迎しているのか些か怪しい。この街が「観光」を意識するなら各々が横柄な態度をとらず「お客さん」を全員で歓迎する必要があろう。この街には「京都人は、学生さんと外国人に優しい」という有名な言葉がある。個人としても確かに実感がある。あまり大きな声では言えないが、実は優しいのは、彼らはいずれ京都から出ていくことが前提になっているからだと言われている。観光客の京都滞在は学生よりもはるかに短い。少なくとも観光客に優しく出来るDNAは京都人の中にある。短期滞在者を歓迎する京都人気質をしっかり発揮しよう。

■ 京都人にもメリット!

全員力での観光誘致に向けて、まずは京都のリーダ達には、民衆に向けて民衆にとってのメリットは何かを説明する必要がある。京都人の中には観光は自分たちにとって利点があるとの実感がない者が多い。京都の赤字財政の解消、税負担の軽減やサービス増に繋がるなどのメリットがあるのならそのことを示す必要があろう。高いエンゲル係数など京都人がここに住んで良かったという喜びが本当にあるのか。世界遺産に囲まれて住んでいたとしても高い拝観料を払わないと見られない。「京都人で良かった」との実感を抱かせることが先決ではないか。例えば、京都市民は、仏閣の入場料無料や半額などの画期的な制度導入などはどうか。京都への愛着が増し、京都を学ぶ機会が増え、京都人全員が観光大使として励む力が湧いてくるに違いない。

■  全員が「京都観光大使」!

現状の数限られた、京都観光大使の称号を京都に住民や外国人登録をしている全員に配布しては如何でしょうか。京都の全員が自由に名刺などで「京都観光大使」を名乗るのも許可する。みんなが京都人であることを自覚し、京都のあり方について議論し、全員力を発揮する良い機会にする必要があろう。

■  京都人のための京都学!

京都人は京都をどこまで知っているのだろうか。回りから煽てられていることもあり、「ええとこや」となんとなく思っているに過ぎないのではないか。中には、何代前からここに住んでいたのだと熱く語っても、それに比例して、京都や京都の心を語らない限り、発言内容は何の付加価値もない。後から京都にやって来た新京都人や、次世代の京都人も先輩京都人に教えてもらうこと多々あろう。そして京都を知らないならば、老若男女や京都歴を問わず京都を学び、力にする良いチャンスではないか。もちろん、教育現場での教科としての導入も歓迎すべきである。

■ マニュアルを超えたオモテナシ!

グローバル化に流されない、東京化に流されない、京都らしさを改めて学び、発信し、継承していくことが一段と求められよう。今の日本は、かつて存在していた循環性、多様性、関係性が弱まり、それに変わってスループット(使い捨て)、単一性や非人格(過剰な商品化)が進んでいる。この方向性が加速すると思われるなか、有限な資源を大事にする始末文化、案件に応じた決め細やかさ、関係性を大事にするモテナシ文化などの京都の叡知を発揮、発信してはどうか。接客も機械化されており、マニュアルが進み過ぎ、「温もり」は欠けているのではないか。マニュアルの行間こそが京都のおもてなし文化なのではないか。記述化出来ないDNAに染み込んだオモテナシの出番であろう。

■ 多様性を意識する!

海外から京都に遊びに来た友人に質問をだされたことがある。二つの言語をなんと言うのだ?「バイリンガル」。では三つの言語を操れる人は?「トライリンガル」。では一つの言語は?「モノリンガル」?「いいえ。日本(人)です」(笑)って教えられたことがある。もちろん冗談ですが、それほどこの国には日本語しかない印象が強かったそうです。海外のお客さんの誘致及び快適な滞在を考えた際には、言語の多様化が必要になる。観光に直接関係のあるものから、緊急時の応対含め京都の多言語化が求められる。多様性を意識することが求められるのは言語だけではない。国内外に関わらず観光客のニーズが多様化しております。ホストとしての京都人には、大枠でではなく観光客一人一人にあったきめ細やかさが求められる。

■ 民際交流の促進!

観光客にとって、京都人とのぬくもりのある交流が何よりのご馳走である。そのことがリピーター創出にも最も効果的である。京都人にとっても世界中からお客さんが京都まで来てくれて交流できたらこんな嬉しいことはない。この際、京都のことを教えると同時に外国からも学ぼう。京都は多くの外部の文化を取り入れ進化してきた。引き続き外からの良い文化に対し受信力をもって接し、成長を止めることなく、京都を完成させることなく進化続ける必要があろう。そして鏡現象の元で京都を再認識できると良い。

■ オモテナシの心を日々の生活にも!

京都人が観光客を迎える意識の中で、相手に思いをはせる気持ちは日ごろから養える。そのことで対象が観光客から地域住民にも広がることを期待する。すると、京都の乗り物には、シルバーシートなどは必要なくなる。わざわざ書かなくても自然と席を譲れる美意識が京都に生まれるはずである。京都からシルバーシートを一掃するなど如何だろうか。歩きタバコや暴走自転車などの他者を考えない言動はもっての他ということになってくる。京都全域の公共の場でのタバコなどは啓発に留めることなく罰則でしっかり他者を思いやる文化を補強しよう。

京都をより素敵な街にし、観光地としてさらに成功するには、私たちが打ち壊さないといけない「壁」がある。それは、コミュニケーション不足などの「言葉の壁」、法律、条例、ルールなどの「制度の壁」、そして思い込み、偏見、決めつけ、過信や無関心などの「こころの壁」である。壁を知り、改善し、乗り越える努力を日々続ける必要がある。

京都が「世界一」を守るために、そして全国それぞれの自治体は自らが「世界一」になるために、現状に満足することなくこれからも進化続けることに期待したい。

(注)この記事は、筆者が「京福電鉄(嵐電)開業100周年」記念誌に向けて2010年に執筆した原稿に手を加えたものである。

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社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、経営者、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「ミスターダイバーシティ」と言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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