パソコン9年ぶり高水準も足元で成長鈍化、背景にサプライチェーン停滞や物流逼迫
米調査会社のIDCによると、2021年のパソコン世界出荷台数は前年比14.8%増の3億4880万台だった。在宅勤務の広がりなどで需要が増加し、2012年以来9年ぶりの高水準になった。
「21年は原点回帰の年」
IDCの担当者は「21年はパソコン市場にとってまさに原点回帰の年だった」と指摘。新興国市場の個人向け需要が増加したほか、世界的に法人向けが好調を維持しているという。
別の調査会社である米ガートナーもパソコン出荷統計を公表した。それによると、21年の世界出荷台数は前年比9.9%増の3億3976万台だった。
10~12月期に成長鈍化、米国24%減
一方、足元では成長が鈍化している。物流の逼迫(ひっぱく)や半導体など部品のサプライチェーン(供給網)の停滞が要因という。IDCによると、21年10~12月期の出荷台数は前年同期比1%増にとどまった。ガートナーは同5%減少したとみている。
IDCの担当者は「21年は物流や供給制約の影響を受けており、これがなければ市場はより成長していた可能性がある」と指摘。
ガートナーによると、10~12月期におけるマイナス成長の大きな要因は米国市場の低迷。同四半期の米国パソコン出荷台数は約2065万台で前年同期比24.2%減少した。サプライチェーンの停滞が主な要因だという。「多くの人が、注文したパソコンを手にすることなく1年を終えた」(IDCの担当者)
年末商戦、消費額増加 要因は物価上昇
一方、米アドビによると、21年の年末商戦における米国ネット通販支出額は2045億ドル(約23兆4400億円)で、前年同期から8.6%増加した(ロイターの記事)。ただし、これはアドビが事前に予測していた2070億ドルを下回っている。21年は同社が統計を取り始めた14年以降で最も伸びが低かったという。
アドビはその理由として、(1)大手が年末セールを前倒して実施したことによる消費行動の分散、(2)物流逼迫、(3)サプライチェーン停滞、を挙げている。「ブラックフライデーやブラックフライデーのような大型セールがあまり注目されなかったのは初めてだ」(アドビ)
米国では多くの小売業者がサプライチェーン問題に直面している。要因は、コンテナ輸送コストの急騰やコンテナ不足、積み出し港における新型コロナの感染拡大、積み降ろし港や物流倉庫における人手不足だとみられている。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは昨年、米西海岸に運ばれてきたコンテナが荷下ろしされず大量に積み上がっていると報じた。数万ものコンテナがロサンゼルス港とロングビーチ港にとどまり、大量の貨物船が入港待ちの状態だった。両港は、米国の輸入量の4割以上をさばいている。また、専門家は21年11月、ロサンゼルス港の沖合で79隻の貨物船が停泊しており、入港までに最大45日かかると指摘していた。
アドビによると、米国ネット通販商品の価格は21年12月に平均3.1%上昇、19カ月連続の上昇を記録した。在庫不足や旺盛な消費者需要を背景に小売大手が大幅値引きを行わなかったことが要因だ。
21年の年末商戦における消費額の増加は物価上昇によるところが大きいという。米セールスフォース・ドットコムのリテール部門ゼネラルマネジャー、ロブ・ガーフ氏は「消費者は昨年末、より少ない商品をより高値で購入した。利用した店舗の数も例年に比べ少なかった」と指摘している。
- (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2022年1月14日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです