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コロナ禍で広がる子どもの「ゲーム障害」とは 正しく理解・予防するための基礎知識

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:アフロ)

子どものオンラインゲームを取り巻く現状

オンラインゲームとは、インターネットに接続された端末機器で行うゲームの総称です。ゲーム内でプレイヤー同士がコミュニケーションを取ったり、コミュニティを形成したり、ネット上で幅広いプレイヤーと交流できることが特徴であり、大きな魅力となっています。

2019年に久里浜医療センターが実施した10〜29歳を対象とした「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート」という実態調査によると、過去12ヶ月間にゲームをしていたと答えた人は85%でした。いわゆる若年層にとって、オンラインゲームは既に身近なものになっていることがわかります。

また、株式会社GameWithが実施した「新型コロナの影響によるゲームプレイに関する実態調査」によると、コロナの影響により約6割(59.8%)の人がゲーム時間が増えたと回答しています。年代別で見てみると、「10代」がトップで、約8割(83.6%)が「ゲーム時間が増えた」と回答。続いて「20代(62.0%)」、「30代(51.3%)」の順となっていました。新型コロナウイルス感染症による学校の休校、外出自粛などの影響から、オンラインゲームは一層日常生活に浸透した模様です。

さらに同調査によると、ストレス解消や気分転換、友人・家族とのコミュニケーションにも役立っているとの結果も出ていました。このように、ゲームは既に生活の中に定着している楽しみの一つであり、毎日を豊かにしてくれる存在となっているという一面があります。

ただその一方で、ゲームのやり過ぎによって、睡眠リズムの乱れや他の活動への興味の低下、イライラなど様々な問題を引き起こすこともあります。

そしてそれらの問題が生じても、自分でゲームの時間や頻度をコントロールできなくなるような場合は、ゲームへの依存状態である「ゲーム障害」が疑われます。

特に子どもでは、大人よりも自分でやりたい欲求をコントールすることが難しいため、依存への進行も早いと言われています。

そこで、コロナ禍でさらに広がりつつある、子どもの「ゲーム障害」についてネット・ゲーム専門心理師の立場から基本的な事項を紹介します。ゲームを過剰に恐れるのではなく、その危険性について正しく理解していただくことで、ゲームとの付き合い方を考えるヒントにしていただければと思います。

ゲーム障害とは

ゲーム障害(Gaming Disorder)は、世界保健機関(WHO)が作成する国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)に収載されることが決まった疾病です。この疾病分類は2022年に適用される予定です。

ICD-11におけるゲーム障害は下記のように定義されています。

【臨床的特徴】

ゲームのコントロールができない。

他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを選ぶほど、ゲームを優先。

問題が起きているがゲームを続ける、または、より多くゲームをする。

【重症度】

ゲーム行動パターンは重症で、個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において著しい障害を引き起こしている。

【期間】

上記4項目が、12ヵ月以上続く場合に診断する。しかし、4症状が存在し、しかも重症である場合には、それより短くとも診断可能。

診断基準にもあるとおり、「○時間ゲームをしていたらゲーム障害である」という明確な基準があるわけではありません。グラデーションのようなイメージです。

ご自身やお子さまがどの程度の依存度なのか知りたいという場合は、自分でチェックする形式のスクリーニングテストが参考になるでしょう。インターネット全般についてのスクリーニングテストであれば、IAT(インターネット依存度テスト)、ゲームに特化したものであればIGDT-10(10問版インターネットゲーム障害テスト)が挙げられます。私の所属する「MIRA-i」のサイトにも掲載されていますので、気になる方はご活用ください。

ただ、テストで「問題あり」という結果が出たとしても、即座にゲーム障害と認定される訳ではありません。正式な診断はあくまでも医師が行うものになりますので、ご注意ください。

ゲーム障害によって生じる問題

ゲーム障害によって生じる主な問題について、領域ごとにまとめると以下のようになります。

学業への影響:遅刻、欠席、成績低下

金銭管理:お小遣いを超えて課金、親の金を勝手に使う

精神面:イライラ、うつ状態

生活面:睡眠不足、朝起きられない、昼夜逆転、ひきこもり

身体面:運動不足、やせ・肥満、筋力低下、少食・過食

人間関係:家族との不和、友人との不和、孤立、家族の疲労・ストレス・不眠

行動面:暴言、ものに当たる、暴力、家出

もちろん、その人の行動特性やハマっているゲームの種類、置かれている環境などにより、どのような問題が生じるかは異なります。

また、生じている問題について「本人が怠けているから」など子どもの自己責任として捉えるのではなく、どうしたら問題を解決できるだろうかと一緒に考えていく姿勢が大切です。

治療・カウンセリングについて

依存症の治療は、一般的には心理療法を中心に行われています。中でも認知行動療法が、科学的エビデンスのある心理療法として最も多く適用されています。合併している精神障害などがある場合は必要な服薬を行います。

これはゲーム障害についても同様で、認知行動療法に基づくアプローチが効果的であることが多くの先行研究で明らかにされています。また、ケースバイケースではありますが、子どもの場合はゲームを完全に取り上げてしまうのではなく、まずは社会生活に支障が出ない範囲でゲームとうまく付き合う方法を模索するというアプローチを取る場合が多いです。

そして子ども本人だけでなく、子どもと多くの時間を過ごす家族の方への心理的支援も治療の過程では大切になります。

特に保護者は、子どものゲーム障害について不安を抱え、自身の養育態度に原因があったのではないかと自分を責めたり、周囲に相談できずに孤立したりと様々な問題を抱えています。そのため治療・カウンセリングの機関では、家族の悩みや不安に寄り添いながら、子どもへの関わり方などについての相談・助言を行っています。

予防方法について

まずはゲームに関しての家庭内でのルール作りが重要になります。子どもに任せるのではなく、どんな決まり事が良いのかを一緒に考え、子どもの気持ちや考えを尊重しながら、決めていきましょう。

ルールを決めた後も、少しでも守れたら十分に褒めるなど、最初から100%を目指すのではなく、スモールステップで「ルールを守る」ことが身に付けられるように後押ししていくことがポイントです。

ルール作りや決めたルールを守っていく過程において最も大切なのは、親子でのコミュニケーションです。

子どもの「ゲームが好きだ」、「ゲームをしたい」という気持ちを否定せず、受け止めながら、親としての考えも伝えていきます。こうしたやり取りを丁寧に重ねていくことで、家族の信頼関係につながっていきます。

依存が心配な場合の相談先

お住まいの地域にある保健所は身近な相談窓口です。依存症だけでなく、思春期問題やひきこもりなど幅広い相談に対応しています。

・厚生労働省 保健所管轄区域案内

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/

各都道府県・政令指定都市ごとに1か所ずつ(東京都は3カ所)ある精神保健福祉センターでも受け付けています。

・厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 全国の精神保健福祉センター 一覧

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html

依存症対策全国センターのホームページ内でも、全国の相談窓口・医療機関を探すことができます。

・依存症対策全国センター 全国の相談窓口・医療機関を探す

https://www.ncasa-japan.jp/you-do/treatment/treatment-map/

筆者の所属する会社で提供する回復支援サービスでもカウンセリング(有料)を受けることができます。

ネット・ゲーム依存回復支援サービスMIRA-i

https://mira-i.jp/

〈引用・参考文献〉

厚生労働省 依存症対策 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html

依存症対策全国センター

https://www.ncasa-japan.jp/

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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