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別居と離婚に決定的な理由なし。遊びも仕事も勝手に決めたい私は結婚不適合者~スナック大宮問答集65~

大宮冬洋フリーライター
愛知・豊橋のワインバーにて。参加者の一人と改めて対談。左端は筆者(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***ユリさん(仮名。バツイチ、53歳)との対話***

2人の息子は巣立ちました。いつ寂しくなるんだろう?と思いながら暮らしています

――スナック大宮は初参加でしたね。参加してみようと思った理由から教えてください。

 今回は私が住んでいる愛知県内での開催で、お酒を飲むことを純粋に楽しめそうな会だなと思ったからです! 年齢層が若い人ばかりだと男女の出会いが主目的になりそうで場違いかなと思っています。スナック大宮も最初だけ緊張しましたが、すぐに馴染んでたわいもない会話を楽しめました。年齢層も性別もバラバラだけどみなさんきさくに話しかけてくださって、その中に蒲郡在住の大宮さんもいらっしゃる。アウェイな感じはまったくありませんでした。

――ちょっとプライベートなことをお聞きしますが、ユリさんは確かバツイチでしたよね?

 はい。気楽な一人暮らしです(笑)。2人の息子はそれぞれ成人して巣立ちました。友だちからは「急に寂しくなるわよ」と言われていますが、いつ寂しくなるんだろうと不思議になるほど勝手に暮らしています。

法人営業や福祉関連施設での夜勤など仕事を4つもかけもちしていますし、一人でちょこちょこと出かけることも好きです。週に1回は必ず飲みに出かけています。スナック大宮があった日も豊橋駅前のホテルで宿泊し、翌日はそのまま職場に行きました。

――パワフルに暮らしていますね……。離婚の理由を聞いてもいいですか?

 離婚したのは5年前ですけど、その前から10年以上別居していました。浮気などの決定的な理由はありません。私が結婚不適合者なのだと思っています。子ども以外の他人に生活を合わせられないからです。飲みに行くとか仕事をするとか、思い立ったときに決めて行動しちゃいますから。勝手なことをしているので、夫との心の距離が離れていきました。

ワインバーvitisが提供してくれた前菜盛り合わせの一部。料理が美味しいとお酒もすすみ、会話も弾みやすくなります。(参加者提供)
ワインバーvitisが提供してくれた前菜盛り合わせの一部。料理が美味しいとお酒もすすみ、会話も弾みやすくなります。(参加者提供)

婚活パーティーでマッチングした男性たち。「また会いたい」とは思えませんでした

――再婚したいと思ったことはありますか?

 コロナがかなり重くて2週間ほど寝ていたときは気持ちが落ちて、老後がとても不安になりました。賃貸アパート暮らしなので、働けなくなって家賃が払えなくなったらどうしよう、とか。
 体調が回復した後、友だちにすすめられて婚活パーティーに3回参加しました。それぞれ50代60代の男性とマッチングしたのですが、デートをしてもときめきがなく、「また会いたい」とは思えなかったのです。清潔感があってお金もある人たちだったのですが、「明日も仕事だから早く帰りたい」と思ってしまいました。

――「また会いたい」と「早く帰りたい」は大違いですね……。最近はどのような心持ちですか?

 婚活はやめて、一人で暮らしていくことを覚悟しています。良さそうな老人ホームに入るお金は稼いでおかなければならないので、飲み過ぎに注意して健康第一で仕事をがんばります。できるだけ働いていたほうが頭も見た目も若々しくいられますからね。

――スナック大宮は周りが楽しくなるような飲み方でしたが、お酒の失敗は多いんですか?

 はい。他人に絡んだりはしませんが、40代半ばぐらいまではよく泥酔していました。最も記憶に残る大失敗は、外食してベロンベロンに酔った状態で土手の上のガードレールに腰かけて電話していたら、ひっくり返って下の川にまで転げ落ちてしまったことです。電話の相手が駆けつけて救急車を呼んでくれました。打撲で済んだけど死んでいたかもしれないよ、とお医者さんに叱られました……。そんな迷惑な死に方はしたくないので、その後は気を付けています。

カウンター裏から食事を提供している女性は手伝ってくれた参加者。給食当番みたいに活躍してくれました。(参加者提供)
カウンター裏から食事を提供している女性は手伝ってくれた参加者。給食当番みたいに活躍してくれました。(参加者提供)

*****

酔うほどに上機嫌になって寛容になる。周囲が楽しくなる飲み方について

 以上がユリさんとの対話だ。実は人見知りな性格で、スナック大宮の会場だったワインバーの入口で「帰ろうかな」と思ったほど緊張したらしい。10分後には周りの人と朗らかに飲み交わしていたので、勇気を出して中に入って来てくれて良かったと思う。
 個人的にはユリさんの飲みっぷりというか酔いっぷりがいいな、と思った。飲めば飲むほど上機嫌になって寛容になっていく。清潔感のある身だしなみで、食べ散らかしたりはしない。だから、かなり酔っても見苦しくない。近くに座った人の話に耳を傾けて、好きなことを言い合える雰囲気を作ってくれていた。
 初対面の人たちが集まって楽しく飲むのは意外と難しい。誰か一人だけはしゃいでいても、そのすぐ隣の人は迷惑に感じていることが少なくない。また、会話に全く入れずに疎外感を覚えることもある。
 参加者全員に居場所のようなものを確保すること。それが食事会などを主催する人の責任だと筆者は思っている。今後もユリさんのような参加者に支えてもらいながら、最低限の基準は満たす宴会を開いていきたい。

全国各地のご縁がある場所の良き飲食店で開いているスナック大宮。今月は東京都杉並区のアジア食堂で開催予定(ありがたいことに満席)。来月は横浜市青葉台で開催します。(参加者提供)
全国各地のご縁がある場所の良き飲食店で開いているスナック大宮。今月は東京都杉並区のアジア食堂で開催予定(ありがたいことに満席)。来月は横浜市青葉台で開催します。(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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