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自民党総裁選2024、72名の議員がすでに態度を明らかに

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
自民党総裁選2024公式ホームページより引用

自民党国会議員367名のうち、72名の議員が態度を明らかに

 自民党総裁選2024が9月12日〜27日の日程で決定しました。告示日までまだ3週間あまりありますが、8月24日時点で12名が立候補を検討しているとされています。これだけ多くの立候補予定者が噂されるのは初めてのことで、党員党友票の行方と同時に、議員票の行方や推薦人確保の状況に注目が集まっています。

筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用
筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用

 筆者は、3年前と同様、自民党国会議員の総裁選における支持候補(予定)者の情勢を探るため、議員本人のホームページやSNS、YouTubeなどのコメントをはじめ、全国紙やテレビ、地方テレビ局や地方紙への意向表明を可能な限りモニタリングして、これらの情報を情報源のリンク付きでGoogleスプレッドシート「自民党総裁選2024 議員票動向」にまとめ、日々更新しています。

 このスプレッドシートで公開している情報はいずれも信頼できる情報源をもとに公開されている情報を集約する「オープンソース・インテリジェンス」の手法でまとめているもので、誰でも、そのソース(情報源)を確かめることができます。

 24日朝現在、72名の党所属国会議員が態度を自ら表明するか、支持の意向が報道されています。

 まだ自民党所属国会議員全体のうちわずか1割強が表明しているに過ぎませんし、今後総裁選への立候補を断念する者も出てくるとの予測もありますが、支持している議員の名前からは傾向も見えてきましたので、簡単に解説をしたいと思います(五十音順、敬称略)。

筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用
筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用

青山繁晴

 かねてから総裁選挙への出馬を訴えていました。日本の尊厳と国益を護る会の代表として保守層のアイコン的存在でもあり、YouTubeの公式チャンネル登録者が59万人を超えるなど、ネットでの厚い支持層にも支えられています。一方、自民党総裁選が事実上、わが国の首相を選ぶ選挙であることから、参議院議員であることが足枷になっているとの見立てもあるほか、高市氏や小林氏などと保守層内で競合するとの見方が大勢で、推薦議員の確保もこれからであることを本人が認めています。

石破茂

 旧石破派のメンバーや旧知の個人的つながりの議員を含め、国会議員の推薦人確保は、見込みがついたとみられています。地方創生担当大臣であった過去の経歴などを含め、おもに地方における党員票の集票力が強みとされており、過去総裁選を何度も戦ったナレッジもあるとされています。ただし、今回の総裁選では若い候補者も多く出てきていることから、石破氏では世代交代感は打ち出せないとの見方もあります。今回が最後の総裁選と打ち出したことで、党員票の更なる上乗せができるかどうかにも注目です。

加藤勝信

 所属していた旧茂木派内では茂木幹事長も総裁選出馬を狙っているとされており、分裂含みです。閣僚経験が多いことから、閣僚を一緒に経験した元大臣らにくわえ、地元岡山でも支持するとされる議員票が見込まれています。官房長官での堅実な仕事ぶりなどが評価される一方、小石河連合のような知名度があるとは言いづらく、党員票がどこまで伸びるのかは未知数との見方もあります。

上川陽子

 旧岸田派からは上川陽子外務大臣と林芳正官房長官が出馬方向です。今年春頃には、岸田内閣不支持の高まりから「ピンチヒッターとしての初の女性首相」としての期待が高まり、一時期はポスト岸田の本命とまで言われる時期もありましたが、いざ総裁選となると、これだけ多い候補者のなかでどれだけ注目を集めることができるのかが鍵です。議員票に関しては、既に岸田内閣の閣僚や静岡選出議員が支持を表明しているほか、水面下では法務行政や議連関係で繋がりのある若手議員なども支持をしているとみられます。

小泉進次郎

 メディアが一番注目しているといえる総裁候補者でしょう。菅義偉元首相が支持を表明したことで、総裁選出馬経験者が陣営にいることは強みになります。すでに40人以上の議員が支持を表明との見方もあり、菅グループ(ガネーシャの会)にくわえ各派閥の若手が動いているとされています。党員投票でも1位は小泉ではないかとの見方が多い一方で、他候補との経験の比較から、一部では討論会での対応などを不安視する声もあります。

河野太郎

 前回の総裁選でも本命ないしは有力な対抗馬であったことから、今回も相応に注目されています。麻生太郎元首相も今回の河野氏の出馬には前向きとの報道があり、推薦人の確保は唯一派閥として残っている麻生派所属議員で満たすことができるだろうとの見立てです。知名度も高いことから党員票も見込めるとの見方がある一方、前回の総裁選で透けてみえた世論調査で「将来の総裁候補」としての期待値と、獲得した党員票とのギャップを指摘する声もあります。

筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用
筆者作成「自民党総裁選2024 議員票動向」(https://bit.ly/jimin2024)より引用

小林鷹之

 一番最初に立候補表明をしたことで先手必勝を狙った戦略をとり注目を集めている若手ホープです。小泉氏に次ぐ若手49歳であることや民間出身をアピールしており、既に議員票も20名以上を確保しており、記者会見も話題をよびました。出馬表明会見の同席議員の顔触れから、防衛族が多いとみられ、政治思想的には青山氏や高市氏と競合するとの見方もあります。

齋藤健

 複数の議員から出馬要請があったことを認め、出馬に向けて動いているとの見方があります。農林水産大臣、法務大臣、経済産業大臣と堅実な仕事ぶりを評価する声は多く、自民党が野党時代の国会演説や質疑などから演説上手・政策通との高い評価は党内である一方、知名度不足や推薦人確保の見通しを不安視する声があります。

高市早苗

 前回に続く出馬です。安倍元首相が亡くなったことで保守層がどこまで団結できるのかが鍵です。高市早苗氏を支持する母体は複数あり、根強い保守支持層による党員票の団結力も期待されます。すでに奈良県では集会を開くなどの動きはありますが、決選投票に残ることができるのか、また党の刷新感が出せるのかという見方もあります。

野田聖子

 同じく、前回に続く出馬です。初の女性首相誕生に向けての期待もあることから、個人的に親しい衆議院議員や閣僚経験者らを中心に今回も総裁選に挑戦する動きはある一方で、今回も複数の女性総裁候補が手を挙げる見込みであることなども含め、まだ出馬の状況は不透明です。

林芳正

 岸田派からは先述の上川外務大臣のほかに林官房長官も出馬の動きをみせています。参宏会(参議院宏池会=旧岸田派参議院議員)を中心に、衆議院当選1期生の会(正令の会)の一部からも支持する議員が集まっているとみられます。官房長官という立場から総裁選期間中も東京を離れることがやや難しく、15日間という長い選挙戦をどこまで戦い抜けるか心配をする声もあります。

茂木敏充

 現職幹事長が総裁選に出馬することとなりましたが、旧茂木派としては加藤勝信氏と分裂が見込まれており、派閥全体を議員票とみることはできなくなりました。梶山弘志議員など派閥外にも支持する声があることから、議員票をどれだけ獲得できるかに注目が集まっています。また、幹事長としての知名度も党員にはあるため、党員票の動向も注目されます。

 総裁選はまだ序盤戦。このあと、決選投票も見据えた駆け引きが活発化するとみられます。いずれにせよ、これだけ多くの候補が立候補する総裁選は前例がなく、派閥のしがらみもないなかでの議員票の動向から目が離せません。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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