日本語アップデート!「敬語」を学び直してみよう【尊敬語編】
お読みくださってありがとうございます!日本語と日本酒の日本(二本)柱で生計を立てる、日本唯一(かもしれない)日本語教師の高橋亜理香です。
外国人にはもとより、日本人にも難しいと言われてしまう「敬語」
小中高での勉強がすっかり抜け落ちて遥か何億光年…?の人や、なんとなく使っていけど正しく使えているかわからない…という人に、全3回で敬語を1から整理、レクチャーします。留学生へ導入する方法をベースにしているので、日本人にもよりわかりやすいと思います。
今回は第2回「尊敬語」について。
第1回「準備編」 と合わせてぜひお読みください。
尊敬語の分類と敬意の度合い
前回、敬語は大きく以下の5種類に分類されるとお話ししました。
尊敬語:相手の動作を高める
謙譲語:相手に向けた自分の動作を低める(それにより相手に敬意を示す)
(丁重語:相手不問、改まった場面で自分の動作に)
丁寧語:です・ます
美化語:「お」と「ご」で上品に!
意外と簡単…と思えた人もいるかもしれませんね。では、ここからは相手の動作を高める「尊敬語」にフォーカス。
尊敬語はさらに細分化されます。形によって
1.動詞そのものを活用させるタイプ
2.「お/ご」+動詞+「になります」の形で動詞を挟み込む表現
3.元の動詞の形が残らない「特別な尊敬語」
と、3種類に分かれます。では、こちらをひとつずつ確認してみましょう。
尊敬語1.動詞を活用させるタイプ
ひとつめは動詞そのものを活用させた形です。高橋は便宜上、わかりやすく覚えやすいので「尊敬動詞」「尊敬形」と呼んでいます。
「読みます→読まれます」「食べます→食べられます」のように、「れる」「られる」という助動詞をつけて活用させます。(五段活用なら未然形(~ない)+れる、上一段・下一段活用なら+られる、する→される、くる→こられる)
例)社長はもう、帰られました。
こちらは形としてはいわゆる「受身」と同じ形です。そのため受身と尊敬語の区別は文脈で考える必要があります。
1.昔元カノに書いたラブレターを、妻に読まれてしまった。(受身)
2.部長は、A社からのメールを既に読まれました。(尊敬)
この区別はネイティブなら特に問題はないでしょう。
ただし「ある」「いる」などの状態を表す「状態動詞」と、言葉そのものが「可能」の意味を含むもの(わかる、できる、見える、聞こえる…など)には、この活用が使えないというルールがあります。
尊敬語2.「お/ご」+動詞+「になります」
ふたつめは「お/ご~になります」の形で、真ん中に動詞を挟むタイプの尊敬語です。高橋はわかりやすく「サンドイッチ型尊敬語」と呼んでいます。
和語(訓読み)の動詞は「読みます→お読みになります」「食べます→お食べになります」のように「お」と「になります」の間に、動詞の連用形「~ます」を挟み込みます。
例)社長はもう、お帰りになりました。(帰る→和語)
漢語(音読み)の動詞(「名詞+する」のサ変動詞)の場合は、「ご+サ変動詞語幹+になります」という形をとります。
例)部長は来週の関西出張で、大阪支店もご見学になる予定です。(見学する→漢語+する)
また、サンドイッチ型もすべての動詞に万能ではなく、変格活用の「する(語幹なし)・来る」や上一段・下一段の動詞で語幹なしのもの(「ます」の前が1文字の「見ます」「寝ます」など)には使えないというルールがあります。
尊敬語3.「特別な尊敬語」
3つめは、元の動詞の原型が残らずまったく別の言葉に置き換える「特別な尊敬語」です。これに関してはもう覚えるしかないものです…。頻度の高い特別な尊敬語の代表を表にしたので、お役立てください。
尊敬語3種類の敬意の度合い
実は3種類の尊敬語は敬意の度合いにも差があります。
1<2<3の順で敬意が上がっていきます。1から3まで共通して使えるような動詞は「食べられる<お食べになる<召し上がる」のように使い分けができますから、場面に合わせて気を配れるといいですね。
また、これらの3種類は組み合わせて使うことができません。
例)
× 社長、あの話はもうお聞きになられましたか。
(お~になります+られます)
このように重ねてしまうと「二重敬語」になるので気をつけてください。
その他の尊敬表現
「~してください」というお願いの表現もサンドイッチ型と同様に「お/ご~ください」と真ん中に動詞の連用形「~ます」(サ変動詞は語幹のみ)を挟んだ形で尊敬語にできます。やはり動詞が和語の場合は「お」を、動詞がサ変の「漢語+する」の場合は「ご」をつけるのが基本ルールです。
例)
食べます(和語)→お食べください
検討します(漢語+する)→ご検討ください
尊敬語はこれでOK!次は謙譲語へ
尊敬語はここまで覚えられれば概ね問題ありません!次回は謙譲語の整理ですが、謙譲語も尊敬語とある程度同じロジックで整理できるので、尊敬語のルールを覚えられれば問題ありません。
では、次もぜひお読みください!