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この遊撃手を獲得したのは、FAとなった大物と再契約できなかった場合の保険!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
カイル・ファーマー May 7, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ミネソタ・ツインズは、マイナーリーガーの投手と交換に、シンシナティ・レッズからカイル・ファーマーを獲得した。

 ファーマーは、32歳の内野手だ。ここ2シーズンは、レッズの試合の約3分の2に、遊撃手として先発出場している。324試合中212試合なので、全体の65.4%だ。

 今シーズン、ツインズで遊撃を守っていたカルロス・コレイアは、3年1億530万ドル(2022~24年)の契約をオプト・アウトし、昨オフに続いてFAとなった。

 この流れからすると、ファーマーはコレイアの後任のようにも見える。

 おそらく、ツインズは、コレイアを呼び戻せないだろう。コレイアが望んでいる契約は、ツインズの予算に収まらないはずだ(「2年7020万ドルが残る契約を打ち切り、今オフにFAとなる遊撃手は、どんな契約を望んでいるのか」)。

 ただ、コレイア→ファーマーでは、ダウングレードとなる。今シーズン、コレイアは、出塁率.366とOPS.834を記録した。ファーマーは、出塁率.315とOPS.701だ。この違いは、今シーズンに限ったことではない。また、守備においても、ファーマーはコレイアに及ばない。

 ツインズには、ロイス・ルイスがいる。

 今年5月にメジャーデビューしたルイスは、そこから1ヵ月経たないうちに、右膝を痛めた。最初の11試合は遊撃を守っていたが、12試合目――2度目に昇格した最初の試合――はセンターとして出場し、フライを好捕した直後、フェンスにぶつかった。当初は打撲と診断されたものの、靱帯の断裂が判明。6月上旬に手術を受け、シーズンを終えた。復帰までは、1年を要する。

 コレイアは2012年のドラフト全体1位、ルイスは2017年のドラフト全体1位だ。ファーマーは、来シーズンの開幕から遊撃を守るにしても、コレイアの後任ではなく、ルイスが戻ってくるまでの「つなぎ」というところだろう。

 あるいは、ファーマーの獲得は、内野手の「補充」という意味合いが大きいのかもしれない。

 ファーマーのトレードに先立ち、ツインズは、三塁を守っていたジオ・アーシェラをロサンゼルス・エンジェルスに放出している(「エンジェルスはトレードで獲得した三塁手に遊撃を守らせる!? ベラスケスやフレッチャーの立場は…」)。

 例えば、ホルヘ・ポランコを二塁から遊撃に戻し、内外野を守るニック・ゴードンを二塁に据え、一塁と三塁はルイス・アライズホゼ・ミランダとすれば、ファーマーは控えだ。仮にそうだとしても、遊撃を守れる点は、ツインズがファーマーを獲得した、十分な理由となる。

 ちなみに、ファーマーは、2013年のドラフト8巡目・全体244位だ。当時のポジションは、捕手だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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