iPhoneも半導体不足に直面、4〜6月大幅増収増益も次は成長鈍化か
先ごろ米アップルが発表した決算について振り返ってみる。
2021年4〜6月期の売上高は前年同期比36%増の814億3400万ドル(約8兆9400億円)、純利益が同93%増の217億4400万ドル(約2兆3900億円)で、いずれも4〜6月期として過去最高を更新した。
iPhone、5G普及で依然好調
主力のスマートフォン「iPhone」の売上高は同約50%増の395億7000万ドル(約4兆3400億円)。20年秋に発売した高速通信規格「5G」対応の「iPhone 12」シリーズがけん引した。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、毎年秋に新機種が投入されるiPhoneは通常4〜6月期に販売が減少するが、今年は5Gサービスの普及に伴って買い替えが進んだ。世界利用台数が10億台近くのiPhoneはその買い替え規模も大きいとアナリストは指摘している。
一方、アプリや音楽、動画配信などサービスの売上高は同33%増の174億8600万ドルとなり、四半期として過去最高を更新した。腕時計型端末「Apple Watch」やワイヤレスヘッドフォン「AirPods」などの「ウエアラブル、ホームおよびアクセサリー」も同36%増の87億7500万ドルと好調に推移した。
アップルは3四半期連続してすべての製品カテゴリーで2桁の増収を達成。世界の全地域の売上高が過去最高を更新し、2桁増収を維持した(図1)。
MacとiPad、売上の伸び10%台に低下
ただ、かねて懸念されていた世界的な半導体品薄の問題がアップルのパソコン製品などに影響を及ぼしている。一部モデルで独自開発プロセッサー「M1」の採用を始めたパソコン「Mac」の売上高は同16%増の82億3500万ドル、タブレット端末「iPad」の売上高は同12%増の73億6800万ドルにとどまった。
これまで、MacとiPadの売上高は新型コロナの影響による在宅の広がりで、大幅増を記録していた。例えば21年1〜3月期の前年同期比伸び率は、それぞれ70%と79%。
ウォール・ストリート・ジャーナルや米CNBCによると、アップルは21年4月、MacとiPadの業績について、半導体不足の影響を受け4〜6月期に30億〜40億ドルの売り減が生じると指摘していた。
アップルの幹部は4〜6月期の決算について、影響を最小限に抑える施策によって逸失売上高が30億ドル弱にとどまったと説明した。
クックCEO「iPhoneとiPadにも影響及ぶ」
だが、今後は問題が主力製品であるiPhoneにも及びそうだ。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は、「需要が我々の予想を非常に大きく超える製品分野では、生産のリードタイム(準備期間)内にすべての部品を用意することが困難になる」と述べた。
CNBCの別の記事によると、クックCEOは半導体不足による部品供給の制約について認識しており、21年7〜9月期のiPhoneとiPadの販売に影響が及ぶとの見通しを示している。
また、アップルのルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は同年7〜9月期の売上高について、4〜6月期の増収率(36%)を下回ると予想している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは先ごろ、世界的な半導体不足の波がついにスマホ業界にも押し寄せたと報じた。スマートフォンメーカーは通常、主要部品を約半年前に調達しており、自動車やパソコン、家電などのメーカーが直面しているような部品不足問題を回避してきた。だが、ここに来てスマホメーカー各社の在庫も減少しており、大手の出荷にも影響が出始めている。
アップルはスマホ部品のサプライチェーン(供給網)に大きな影響力を持っており、これまでこうしたトラブルに巻き込まれていなかった。だが、たとえサプライチェーンの管理に優れた人物がCEOを務めるアップルであっても、今の状況から逃れることは困難だろうとCNBCは報じている。
【関連記事】
半導体不足、ついにスマホメーカーにも 危険水域に(小久保重信)
- (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年7月29日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)