Yahoo!ニュース

日本は直近で1.08%…諸外国の軍事費・対GDP動向をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
軍の維持には相応のコストがかかる。経済力との兼ね合わせ、検証は必要(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

各国の軍事勢力・軍装備の状況を比較するのにもっともよく使われるのは、軍事支出の額面。だが各国の経済力や人口など多様な要素により、単純な額面比較だけでは不十分とする意見も多い。そこで使われる指標の一つが、軍事費の対GDP比。要は経済力に対し軍事関連支出をどの程度行っているかを示した値。今回は国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が発表した各種公開データを基に、主要国の軍事費対GDP比の動向を確認する。

直近分の公開値となる2022年分においては、世界最大の軍事支出を行った国はアメリカ合衆国、次いで中国、ロシアの順となる。無論これはSIPRIが把握できる範囲での公開値による値であり、また国内調達分においてはそれぞれの国の相場で調達維持できることもあり、単純に軍事力への注力動向を完全網羅したことにはならない。あくまでも指標の一つに過ぎない。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2022年)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2022年)

そこで各国の軍事費に関して、それぞれの国の該当年のGDPに対する比率を算出し、その動向を示したのが次以降のグラフ。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Product)の略。以前はGNP(Gross National Product、国民総生産)が指標としてよく使われていたが、GDPは国内のみの産出付加価値総額であるのに対し、GNPは海外に住む自国民の生産分も含めた付加価値の総額を意味する点が異なる。

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2022年)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2022年)

サウジアラビアは7.42%。つまり同国では1年間に生み出した付加価値の7.42%もの金額を軍事費としていることになる。アメリカ合衆国は3.45%、ロシアは4.06%、韓国は2.72%、日本は1.08%。

この対GDP比について過去からの推移を見たのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国)
↑ 軍事費の対GDP比(2022年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国)

ある国の軍事費の絶対額が上昇しても同時にその国が経済発展を遂げていれば、今件値は横ばい、さらには減少すら示すこともありうる。つまり今値は軍事力そのものの拡大縮小よりも、その国の軍事への注力度合いを見る指標ととらえた方がよい。上位国ではサウジアラビアが群を抜いて高い状況は以前から変わらない。アメリカ合衆国はいわゆる「9.11」以降、それまで減少傾向にあった値を上乗せする方針へ転じ、それはリーマンショック後まで続いた。その後はオバマ政権に変わったあたりから再び減少へと転じていた。しかしトランプ政権となってからは軍事政策の大きな転換が行われており、横ばい、さらには増加の動き。バイデン政権では再び減少の動きに転じたようだ。

おおよその国で今値は減少傾向にあるが、先進諸国が純粋に軍事費削減の結果として減少しているのに対し、中国やインドはGDPを底上げしており、むしろ軍事費の額面は増強されている。中国がほぼ横ばいなのは、同国の経済成長と同スピードで軍備拡張が行われていると解釈してよいだろう。

■関連記事:

【上位は米中日の順…主要国のGDPの実情を確認する(2021年版)】

【強い懸念を示す周辺国…領土紛争における東南アジア諸国の対中軍事衝突への懸念度】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事